フォワードルッキングという幻想

最近の欧米中銀の金融政策運営を見ていて感じることを寄稿させて頂きました。ポイントは色々ありますが、煎じ詰めれば「フォワードルッキングという言葉が信用できない」という素朴な疑問に尽きます。

 そもそも今次正常化ブームの震源地となったECBも、過去4年間正常化プロセスを進めているFRBも、スタッフによる物価見通しはほぼ確実に楽観方向に外してきました(つまり必ず下方修正してきた)。にもかかわらず、「今回は正しい」と信じるに足る材料があるとは思えず、「(物価は)いずれ上がってくる」という政策運営はいずれオーバーキルであったことが分かるのではないか・・・と懸念しています。

もちろん、「フォワードルッキングにやらなければどうすればいいんだ」という議論は当然あるかと思います。しかし、今私が素朴に疑問だと思うことは、見通せる将来において2%にヒットする可能性が殆ど見えていないのに何故ここまでムキになって正常化を試みるのかという点です。少なくとも2%を「天井」ではなく「目標」としているFRBの場合、物価が上がり、銀行間金利が上がり、市場が出口を求めるようになってからでも遅くはないはずです。カシュカリ総裁が常々言っているように、2%の「目標」はシンメトリックなものですから、1.5%も2.5%もリスクとしては等しく評価されるべきものです。今はまず2.5%を見るような努力をするのがリスクマネジメント上、望ましい、という考え方に私も賛成です。一方、ECBにとって2%は「天井」ですから、FRBよりも初動が早くて然るべきですが、それでも現在の「+1.3%」は幾ら何でも低すぎやしないでしょうか、と思います。

もっとも、今利上げしなければ将来不況になった時に中央銀行が空手になってしまう。それは非常に懸念すべき事態であり、だからこそ今カードを溜めるべきだ・・・という考え方については私もそうだろうな、と実のところ思います・・・。ただ、それが景気の寿命を縮めることもまた、事実であろうかと思います。相場を見通すという観点からはやはり後者の影響を気にしたい、という基本認識です。

http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKBN1AP0RO

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