週休3日制のムーブメントはホンモノか〜一緒に試してみませんか?
週休3日。なんて素敵な響きなのでしょうか。水曜日を休みにすれば、月曜火曜と働くと休みがあって、また木曜金曜ともう二日働くと、土日がきます。月曜から金曜まで毎日残業して、それでも仕事が終わらずに土日にもはみだすような働き方をしてきた人にとって、週4日しか働かないというのは「成長の放棄」に見えるかもしれません。この週休3日の波に、企業の経営者はどう対処したらよいのでしょうか。
日本でも広がる週休3日制
次の記事では、「給料が減らない週休3日制を取り入れる動きが広がりつつあります」と伝えています。週休3日には、就業時間と連動して給与も減らす方式と、出勤日の勤務時間を延ばして合計の所定労働時間と給与を変えない方式があると言います。
これらの方式は、時間のフレキシビリティを高めるものなので、経営者にとって受け入れやすいものになっています。
イタリアでは週休3日制かつ賃上げ
次の記事は、ランボルギーニの工場で働く従業員の週休3日制を報じています。「ランボルギーニが工場で働く従業員に週休3日制を導入する。労働時間が減るが賃金水準は逆に引き上げる。オフィスワーカー以外での適用は世界的に珍しい。ドイツの鉄鋼業界でも工場で賃上げと週休3日を可能にするなど、働き方の新常態が欧州の製造業でも広がりつつある」と記しています。
特筆すべきは、工場労働者に適用している点、そして週休3日にしつつも賃上げしている点です。
週休3日でも管理職登用
日本でも、週休3日制を定着させ、生産性を高めるモデルが出始めたようです。次の記事の中で、アクセンチュアの嶋村さんは、「以前は人材業界で働き、週休2日で深夜残業もあり『子供と十分に時間を過ごせないかも』と不安に。アクセンチュアでは週休3日が可能になり、制度開始時から使う。時間あたりの生産性の向上が評価され、20年にチームの統括に登用された」と語っています。
これまで日本の企業では、仕事の総量で評価を行ってきたといえるでしょう。たとえば、売上目標達成であるとか。そうなると、週休3日や時短勤務は不利になってしまいます。そこで現れたこの「時間当たり生産性の向上での評価」は、たいへん先進的な取り組みと言えるでしょう。とくに、管理職への登用という意味では、短い時間で成果を出せる人材こそ、求められているからです。
スローカンパニーとしての挑戦
私の会社は、「スローイノベーション」を標榜し、短期的成果しか追えない「ファストの制約」から脱出することで、社会的な共創によるイノベーションをめざしています。
このスローという概念はきわめてパワフルで、たとえば目的地に行くときに最短コース(つまりファスト)で行こうとすると選択肢は1つしかありません。しかし寄り道コース(つまりスロー)であれば、無限の選択肢があるわけで、これがイノベーションの文脈で有利に働きます。ファストに取り組むということは、他の会社も同じ道をめざしている可能性が高いからです。
スローを「個人の働き方」にあてはめると、「成果よりも関係性」を第一に考える「スローリーダーシップ」が、「答えのないプロジェクト」に取り組む上で必要になります。
さらにスローを「会社」に当てはめると、「会社都合に社員を当てはめる」のではなく、「社員都合にあわせて会社が進化する」のが「スローカンパニー」になります。
スローカンパニーは、その定義からすると当然、週休3日制に真っ先に取り組むべきでしょう。
スローのジレンマを超えるには
ここに、スローであることのジレンマがあります。
ファストな経営は、突き詰めると「成果があがればプロセスは問わない」アプローチなので、実は成果給向きです。週休3日にしつつ、成果だけで評価するというのは、ファストに合ったやり方です。だから、労働時間で人を評価する必要がそもそもないコンサルティング会社は、フェアな評価に移行しやすいのです。
一方、スローな経営は、売上利益の成果よりも、「一人ひとりにとっての仕事の意義や、社会に与えるインパクト、つながりや協働の質など」のプロセス重視です。社員のやりがい、社会への価値、ステークホルダーとの共創的関係がそろえば、売上利益は副産物として必ず生まれてくると信じる経営です。プロセス重視のため、結果につながらないていねいな仕事が求められ、短期成果が出にくい傾向があります。
ここでスローな経営に求められることは、週休3日の引き換えに「短期間で成果を出す」ということを期待するのではなく、「長期的な成果をめざしてコストを抑え、利益率を高める」ことでしょう。
週休3日にするということは、年間50日くらいの休暇と同じなるので、それはつまり、年間で2ヶ月間はまるっとお休みするのと等しいことになります。それで利益率を高めるためには、相当の決意がいるでしょう。
週休3日制を試してみませんか
でも、やってみるしかないですよね。やってみながら、仕事のプライオリティをいままで以上に厳しく見ていく、それも、長期的に重要な仕事を守りながら、短期的に効率のよい経営をする。社員と、この意識を共有しながら、新しいワークスタイルを楽しむ。それができたら最高ですね。
週休3日制に取り組んでいる方、これから試してみようという方、ぜひ情報共有しながら進めて行きましょう。