またもルール作りに先んじる欧州
ESGについては真剣に取り組む人や企業が増えている反面、正直言えば疑念を持っている、という人も決して少なくはないのが実情だ。米ブラックロック、ラリー・フィンクCEOも、反発意見も多くやりづらいことから、ESG投資と言う言葉は使わない、と言う。
しかし記事にも指摘されるように、生物多様性や水や海洋をどう維持するかについては、より具体性を増してくることになる。2022年の水関連のビジネス機会規模は62兆円超と言われれば、企業経営者の食指も伸びても来る。
そんな中、EUはサステナブル・ファイナンス行動計画(SFAP)を進める重要な展開として、サステナブル・ファイナンス・パッケージを公表した。これにはEUタクソノミーの6つの環境目標すべてをカバーする新たな経済活動が含まれる。
SFAPはより持続可能な経済へ資本フローを振り向け直し、リスク管理において持続可能性を中心的要素に組み込み、透明性や長期主義を促進することを目指している。市場参加者に対しEUタクソノミーと共通の定義をもたらすことで、「グリーンウォッシング」を抑制し、サステナブル・ファイナンスの投資の透明性を高め、各種商品を比較し易くし、サステナブル投資の信頼性を向上させることができる。
2020年にタクソノミー規則が発効したが、それはタクソノミーの6つの定義的基準のうち、2つをカバーするにとどまった。「気候変動の緩和」と「気候変動への適応」に関連した活動だけがEUタクソノミーのもとに分類され、昨年には天然ガスと原子力に関連した活動を含める修正が議論を呼んだことは記憶に新しい(その後、さまざまなNGOなどから訴訟されているところでもある)。
今回の発表では、タクソノミーの残る4つの目的である水資源と海洋資源の持続可能な利用と保護、循環型経済への移行、汚染の防止と制御、生物多様性と生態系の保護と回復に関する詳細も公表された。
合わせてESGのレーティングについて、提供者に新たな義務付けも要求する。これらは世界中の投資家が望んでいるものの一つと言える。
タクソノミーの6つの定義的基準のすべてに対して詳細を公表し、ESGレーティングにも物申す。こうした動きを見る限り、欧州の動きは迅速で的確である。後になって「欧州の決めたことに何で従わなければならないんだ」という文句を言う前に、我々は欧州のルール作りから学ぶべきではないか。