「競争×個人」の時代から「共創×社会」の時代へ
私は常々、自分よりも若い世代は自分よりも優秀だと思い、尊敬の念と学びの姿勢を忘れずにいようと考えています。
今回、日経電子版で「 #若手から学んだことは? 」というテーマでご意見募集していたので、この機会に考えてみたいと思います。
各世代にはそれぞれの世代の生きている環境だからこそ持てる洞察力や、体験することが出来ることがあり、耳を傾けることで学べることがたくさんあります。急速に変化する世界において、若い世代から学ばないことは、個人的にも仕事上でも、私たちの成長を妨げることになりかねません。私は常に若い世代のパワーと可能性を信じてきました。若い世代がユニークな洞察力と視点をもたらしてくれることを認識し、彼らを尊重し、彼らから学ぼうと努力しています。この記事では、世代による環境の違い、若い世代から学んだこと、若い世代から学ぶことの重要性について書きます。
若い世代から学ぶことのメリットはとても大きく、新しい視点に気付けるきっかけになれば幸いです。
「若い世代」と「自分たち世代」の環境の違い
そもそも、若い世代とそうでない世代で区別することに関しても正しいのかどうかという考えもあると思います。しかし、自分たちと同じ世代ではない若い世代の人たちを、自分たちとは大きく異なる環境で幼少期から育ってきた人たちという風に捉えてみます。
技術環境
私は、幼稚園に通っていた1980年代にちょうどファミリーコンピューターが世に出て、小学校6年でスーパーファミコンが出たというような世代です。当然、インターネットはまだありませんでしたし、まだ携帯電話も無かった時代です。私のように1980年代から1990年頃に小学生だった世代は、インターネットや携帯電話のない世界を経験し、1990年代後半から2012年頃に生まれたZ世代と呼ばれる世代は、スマートフォンやタブレットが身近にあり、常にインターネットに接続された環境で育っています。彼らは生まれながらにしてデジタルネイティブであり、テクノロジーを使いこなすスキルを持っています。このような背景から、若い世代は新しい技術やサービスを迅速に理解し、適応できる力を持っています。
この技術環境の大きな違いは、世代の考え方や社会の捉え方を形成し、学問やビジネスの考え方に関しても大きな影響を及ぼしていると思います。
情報収集
1990年代の世代は、情報収集に関しては本や新聞、図書館といった紙からの情報源に大きく依存していました。それに対して、Z世代は検索エンジンやソーシャルメディアを活用して、どこからでもリアルタイムの情報にアクセスできる環境で育っています。また、1990年代世代は若い時は人との交流手段は対面コミュニケーションと固定電話が主な手段でしたが、Z世代はテキスト、インスタントメッセージ、ソーシャルメディアなどのデジタルコミュニケーションツールを自然と使いながら成長したと言えます。そしてこうしたツールを活用し、自分たちの意見を簡単に発信できるようになりました。彼らは自由に意見を交換し、議論を行うことができるため、柔軟なコミュニケーションスタイルを持ち、対話を通じて新しいアイデアや視点を共有することが得意だと思われます。
学習
学習方法に関しても1990年代世代は、まだインターネットによる検索技術が存在しておらず、暗記が中心であることが多かったように思います。それに対して、Z世代は必要な情報に関しては、検索によっていつでもアクセスすることが出来、テクノロジーを使って問題の解決策を見つけることに長けています。
このように若い世代との育ってきた環境には大きな違いがあり、こうした環境の違いがビジネスへの考え方などに与える影響は、かなり大きいと考えています。
若い世代から学んでいること
上述のとおり、自分たちよりも若い世代は物心つく前から情報感度が高い環境で過ごしており、私たちの世代とは技術環境、学習環境などにおいて大きな違いがあります。こうした違いは学問や、ビジネスのアウトプットの内容、質の差を生み出していると思います。ただ、私はこうした技術、学問以外の部分でも違いがあり、そこから大切な学びを得ていると考えています。
競争の時代 / 共創の時代
私たちの世代はいわば「競争」の時代を生きてきました。競争し、良い(とされる)学校に受験して入り、良い(とされる)会社に就職することに価値がある時代でした。学校や、会社、地位、経済的安定など個人のステータスに価値があった時代だったのです。
一方で、Z世代の方々は、自分の地位などよりも、気候変動、人種や性別の平等、LGBTQ+の権利などの社会問題への取り組み、関わりをまず大切にする傾向があります。Z世代であり環境活動家のグレタ・サンバーグさんは、15歳の時に気候変動に対する政府の無関心に抗議すべく、ストックホルムの国会議事堂前で学校ストライキを始め、多くの若者たちも巻き込み、気候変動に対する世界的な運動に参加する大きな流れをつくりました。彼女の運動は、世界中の学生を動員し、各国政府に気候変動対策を要求するようになったのです。 Z世代は競争ではなく、共創していく世代だともいえます。
こうした若い世代の、個人ではなく社会のあり方に価値を持つ姿勢は私にとっては大きな学びとなっています。自分自身が子どもの頃から競争の中で走り続けてきました。Peatixというサービスを創業し、社会、コミュニティと関わりを持たせてもらえるようになるまで、自分自身も「個人」の時代に生きていたように思います。
しかし、若い世代の社会課題への取り組み、コミュニティの共創の動きと触れる機会が増えるにつれ、私自身の価値観も変化していきました。そして今では、自分自身もコミュニティを運営したり、自分が住む地域のコミュニティの活性化のためのプロジェクトに関わるようになりました。
この社会との関わりは私自身の1つの生きがいとして、生活の軸になっているのです。
まとめ
私たちの世代と若い世代は、育ってきた時代の技術環境の大きな違い、価値観の違いがあります。技術環境の違いから、物事への取り組み方、発想、アウトプットの質も変化してきています。また、「競争」の時代に育った私たちと、「共創」の時代を生きる若い世代では、社会への取り組み方も異なります。しかし、若い世代に対しての尊敬の念を持ち、考えに耳を傾け、理解し、一緒に動いていくことで、次の時代を作っていけるのではないか。そのように考えています。
そして、私たちが若い世代から学ぶことで、新しいアイデアや技術を取り入れる柔軟性も身につけることができます。また、若い世代が持っているチームワークや協力を重視する姿勢も、私たちがより効果的なコミュニケーションや協力を行うための参考になります。異なる世代がお互いの知識や経験を共有し、相互に学び合うことは、持続的な成長やイノベーションを促進するためにも重要です。私たちも若い世代も、互いに学び合い、成長し合うことで、より良い未来を築くことができると信じています。