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オンライン学習の新しい潮流としてのコーホート・ベース・モデルのオンライン講座(Cohort-Based Courses:CBCs)

新型コロナウィルスの感染拡大により教育現場、社会人の学びが大きな変化を余儀なくされる中で、よりインタラクティブで学びの成果を得るための取り組みとして、オンライン上で行われる「コーホート・ベースモデル」の講座(Cohort-Based Courses:CBCs)が注目されているようです。

「コーホート」という単語自体馴染みがないかもしれませんが、コホートベースの学習とは、個人が参加するグループが一緒に教育プログラムを通じて進める共同学習スタイルのことです。eラーニング、そしてMOOCs(Massively Open Online Courses)と呼ばれる、動画を通じた学習を中心としたUdemy, Courseraなどの講座との比較される形で最近注目を集めていて、期間が定められていて、人数も限定的で、ワークショップやプロジェクトの共同実践を通じて学習をするしくみです。SlackやZoomなどを活用することでより受講者、インストラクター、受講者同士のコミュニケーションやコミュニティ内での交流が容易になっているからこそ、コースの完了率が高く、学習したことも身につきやすい、と期待が高まっているようです。

特に今はデジタルトランスフォーメーション(DX)機運の高まりもあり、全社的にビデオでの受講を中心としたオンライン研修を取り入れる会社や組織も多いこと思います。が、オンラインの講座を途中でくじけずに実際にスキルを身につけ、講座を終了して当初の目的を達成するにはモチベーションを維持するのが難しく、自分も含め、多くの人が試行錯誤の途中なのではないかと思われます。一部の研究ではMOOCsなどのビデオ講座を自分で視聴するスタイルの講座の終了率が一桁、7%程度と言われる中で、まだサンプル数は少ないとはいえ、コホートベースの講座の場合75%程度が終了するとも言われてます。費用は通常のオンライン講座に比べ高額であることは否めないですが今後益々広がっていく新しいモデルとして要注目です。国内ででの取り組みとしては「NewsPicks NewSchool」などが近い事例と思われます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の担い手を育てるオンライン研修サービスが活況だ。プログラミングなどを学べる米国発の「ユーデミー」は上陸2年足らずで住友商事など国内300社が採用。脱落させない仕組みが売りの「テックアカデミー」など日本発のサービスも伸びる。DX推進には一般社員の学び直しが欠かせない。

ユーデミー創業者らが設立のMavenがa16zらから2,000万ドルを調達
ユーデミー共同創業者らが設立したCBCプラットフォームのスタートアップ、Mavenが米大手ベンチャーキャピタルのa16zらから2,000万ドル(約22億円)を調達したことが5月下旬に報じられてます。

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創業メンバーの一人であるWes Kao氏がa16zの新しく誕生したオウンド・メディア「Future」に寄稿した記事「オンライン学習においての王様(大事なもの)はもはや「コンテンツ」ではなく、コーホートだ(In Online Ed, Content Is No Longer King—Cohorts Are)」では、今までのオンライン学習が抱えていた課題、既に実績を挙げつつあるコーホート学習モデルの可能性が詳細に書かれていて、とても説得力がある内容です。従来の講座に比べ、より実践的で、ビジネスの現場で活躍している講師による、労働市場で現在求められている内容の講座が提供されている点も、価値を高めていると感じます。

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例えばMavenのホームページで掲載されている講座には以下のようなものがあります。いずれもその分野では実績のある著名な専門家、実践者がインストラクターとして名を連ねています。

コミュニティ戦略(Level Up Your Community Strategy)
ビットコインとクリプトの基本(Fundamentals of Bitcoin and Crypto)
プロダクトマネージャーとしてのキャリア構築(Accelerate Your Product Management Career)
クリエーターエコノミーの構築(Building for the Creator Economy)

ユーデミー共同創業者でMavenを立ち上げたGagan Biyani氏はツイッターでの連続投稿において、今後10年の同社のビジョンを掲げています。

https://twitter.com/gaganbiyani/status/1400460955067162627

以下、主要なメッセージの抜粋です。

・Mavenは、誰もがコホートベースのコース(CBC)を構築できるようにすることで、教育の民主化を目指しています。
・CBCには、ライブの講師による説明責任とフィードバック、コーチ、プロジェクト、仲間のコミュニティなど、フルサービスが揃っています。

これらのコースが対面式の教育よりも魅力的な5つの理由
1. 最高の講師陣
2. プロジェクトベースの学習
3. 講師陣のことを中心に考えるアプローチ
4. 仲間とのコミュニティ
5. 議論すること(授業時間の90%はディスカッションベース)

・Mavenは、何万人もの専門家がCBCを教えることを奨励し、地球上で最大の教授陣、そして地球上で最大の大学を目指す。
・まずは消費者への浸透、次に企業への導入、最終的に大学を作ることを目指す

a16zといえば、最近では音声SNSのClubhouse、ニュースレター配信サービスのSubstackなどへの投資を率いてきた実績があり、そしてこれまでも未来を見据える慧眼を持って数多くのスタートアップへの支援をしてきた実績があることでも知られてます。Maven、そしてCBCsがもたらすオンライン学習の未来について、今後も注目したいと思います。

Photo by NeONBRAND on Unsplash


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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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