
ロゴデザインの意味を考え直してみての気づき
ブランディングの仕事に「ロゴを作成する」という行為があります。
時々、ロゴなんてこだわり過ぎても意味がない
と言われたりもします。
最近では、TwitterがXとなり、ロゴ変更に関して様々な意見がSNS上にも飛び交いました。
X(ロゴや名前)が良い悪いなんて、みんなが慣れてしまえば関係ないとの意見も出ていました。
自分も、ロゴのデザインは最低限が整っていればOK
誰に何を届けるかの具体を設計するマーケティング戦略・戦術が大切でしょと考えていた時期もありました。
ロゴにお金や時間はかけるべき?
最近、
ロゴ制作にどれくらいのお金や時間をかけるべきでしょうか?
と質問をいただくことがあったこともあり、
改めて「ロゴデザインの意味や価値」を整理していきたいと思い記事を書いています。
ロゴ制作の意味を再確認させてくれたnote記事
自分にとって「ロゴデザインの意味」を再確認させてもらえた記事があります。
note社のロゴデザインリニューアルに関する、noteの加藤社長とデザイナーの原 研哉さんの対談記事です。
noteは上場のタイミングでロゴをリニューアルしています。
そのリニューアルを手掛けられたのが原 研哉さんです。
原 研哉さんが、対談の中でこんな言葉を語られていました。
今回のロゴは、そのためにも、随分と大きな容量のある器を作りました。できるだけたくさんのものが入ってくれるといいな、というふうに思います。
文脈を補足すると、noteが上場という節目を迎えるにあたり、今後は社会にとって「創作のインフラとなる役割を担う」ことが重要だと原 研哉さんは考えてロゴデザインをされたそうです。
この対談から、「そうか、ロゴデザインは、ブランドの器を作る行為だと捉えるとわかりやすいな」
と腹に落ちました。
ロゴは識別記号の役割だけではない
料理でも、器が変わることで、人の食事に対する向き合い方が変わります。
ロゴも料理の器と同じで、
器が変わることによって、ユーザーのブランドへの向き合い方が変わり、連動してブランドの振る舞い方が変わるのだと思います。
ロゴの役割は、単に違いを識別してもらえればOKというものではないということです。
日本酒・八海山のロゴリニューアルからの学び
noteのロゴデザインリニューアルのプロセスが面白かったので、関連した情報を調べていました。
その中で、日本酒の有名銘柄である八海山の100周年を記念としたロゴリニューアルも、原 研哉さんが関わられていることを知りました。
そして、このロゴのデザインにもブランドに適した器を作る要素が垣間見ることができました。
八海山の100周年記念サイトは、デザイン視点でもマーケティング視点どちらで見ても学びが多いです。
下記は原 研哉さんが八海山のロゴリニューアルに関して言及されていた内容です。
「酒は、どんな種類の酒でも何かしらの癖があり、そこに愛着や親しみを覚えるものです。そういう個性の肌触りを、文字のかたちに込めました。同時に、Hakkaisanというブランドは、日本を代表する南魚沼の日本酒から始まったものですが、焼酎、ビール、ウイスキー、ジンなど、多様な酒を製造するブランドへと成長しています。そのいずれのラベルやパッケージに用いられても違和感なく機能するロゴでなくてはなりません。その点も考えてデザインしたものですから、未来に広がっていく酒のバリエーションを統合できる、スケールの大きなロゴに育っていくことを楽しみにしています」
次の100年に向けて、八海山が原研哉氏デザインによるコーポレートロゴを制定
世界進出にあたって大きな器を用意した八海山
また、八海山の公式サイトには、
世界を目指す決意の象徴としてコーポレートロゴを制作したとあります。
SAKEを世界飲料にをコピーに、新生ブルックリンクラをオープンするリリースもロゴリニューアルに併せて出されています。
八海山にとって、次の100年に向けてブランドの器を大きくするプロジェクトとしての「ロゴ制作」だったのだと理解できました。
新ロゴにより、
・世界の人がSAKEを日常で楽しむ
・SAKE=日本酒だけではなく、甘酒やビールなど複数のSAKEを楽しむ
といった新たな振る舞いが生まれるイメージをもつことができます。

ロゴデザインは、ブランドの器を作るプロジェクト
ロゴは違いを認識してもらうためのビジュアルサイン
と捉えるのではなく、
ブランドの器を作るプロジェクト
と捉えることで、ロゴと向き合う視点が変わってくるのではないでしょうか。
ロゴデザインを見直す際には、
・ビジョンや戦略方針に適したロゴデザインとは?
・ロゴデザインを通じて生み出していきたい関係者の振る舞いは?
といった問いと向き合いながら、
そのブランドに適した器(大きさや醸し出す雰囲気)をデザインしていきたいと考えています。
逆に、何となく整える、とりあえず識別ができる程度のロゴ制作なら、予算はかけずに(何ならAIで)作成でも良いかもしれません。
最後にXのロゴ変更について
最後にX(旧Twitter)のロゴ変更の解釈をして終わりたいと思います。
Xへのブランド名+ロゴ変更は、イーロンマスクが「巨大な器を用意した」と自分は捉えています。
「名前に違和感ある」「青い鳥がなくなって悲しい」気持ちはありますが、器を大きくしたTwitterがどんな変化をつくっていくのかが楽しみにでもあります。