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「問題」が解けなければ、解ける「問い」に置換すれば良い

STEM教育が目指す課題発見や問題解決、的確な判断の能力はますます求められるスキルだ。科学技術が急速に進み、地球環境や国際紛争などグローバルな課題が山積する。予測も解決も難しい世界に、効率よく正解を探す能力では太刀打ちできない。
日本は知識偏重から脱却するため、2002年度に総合学習を導入したが、学校や教師によって大きな差が生じ、主体的な課題解決学習という狙いは達成できなかった。教師のノウハウや技量の不足が原因だが、大学入試が探究的な能力を評価する仕組みになっていないことも大きい。

過去、様々な(データ)分析業務に正業・副業問わず携わってきました。どの現場も1つとして同じ悩みは無かったけれど、どの現場も総じて同じポイントで躓いていました。それは「"問題"と"問い"の定義がヘタ」なのです。

「商品Aが売れない理由は何で、どうしたら良いですか?」「ECサイトの売上が下がってきたのでネット広告をやるべきですか?」「リアル店舗の売上が下がってきた、どうしよう!」「色の種類は増やすべき?」「流行りのクーポンを配布すべき?」「自社サイトは持つべき?」…他さまざま。

「答えの無い問題に迷って悩んで苦しんで、時間を浪費してませんか?」

私がそのように声をかけると、我が意を得たと言わんばかりに「そうなんです、ビジネスって答えが無いですよね」と返されます。違うんです。ビジネスに答えは無くても、(データ)分析に答えは必ずあります。

ちなみに「答えの無い問題」≠「答えの浮かばない問題」です。後者は、能力不足でありスキル不足であり、つまりは教育の問題です。解答者が変われば解ける問題が「答えの浮かばない問題」です。

「答えの無い問題」とは、「その問題に定まった答えが無い」ことを意味しています。出口の無い迷宮です。(データ)分析で、この迷宮にはまったら終わりです。

どうやって抜け出せば良いのか。私の経験談から、解決策をお話します。


「Problem」と「Question」

①「1+1」は? 解答は「2」です。

②「お茶碗を持つ手」は? 解答は「右利きの人は右手で箸を持ち左手でお茶碗を持つが、左利きの人は左手で箸を持ち右手でお茶碗を持つ、たまに両方使いこなす人がいる」でしょうか。

③「商品Aが売れない理由は何で、どうしたら良いですか?」は? 解答は「状況に依るからまずはデータ見せて、ただし望むような結果が出るかは分からんで?」でしょうか。知らんけど。

①②は聞かれたことに答えた感覚がありますが、③は真正面から答えていません。それはそうで、「商品Aが売れない」は「問題」で、「問い」では無いからです。

自著「データ分析力を育てる教室」では、データ分析のプロセスを以下のように定義し、「問題」と「問い」は違うと説明しました。

図「データ分析プロセス」

「問題」と「問い」、似た言葉ですが意味合いは全然違います。「問題」はProblem、「問い」はQuestionです。

英英辞書によれば、Problemとは「a situation that causes difficulties(困難を引き起こしている状況)」を意味しており、Questionとは「a sentence or phrase that is used to ask for information or to test someone’s knowledge(情報を求めたり、誰かの知識をテストしたりするために使用される文またはフレーズ)」を意味しています。

つまり、問題(Problem)とは「状況、現状に対する提起」であり、問い(Question)とは「情報・知識を引き出す呼びかけ」です。

問題が提起なら、大半の場合は定まった答えはありません。ただし、問いは情報・知識ありきですから、定まった答えはあります。

例えば「地球温暖化を止めるためにどうすれば良いか?」は問題で、「地球温暖化の原因である二酸化炭素の排出量をどの程度まで制限するべきか?」は問いです。「問い」は、「問題」に比べて曖昧性が排除され、かつ具体的になりましたね。


「問題」を「問い」に分ける

(データ)分析における躓きポイントは「"問題"と"問い"の定義がヘタ」だと指摘しました。言っていることいずれも「提起(問題)」なのです。「問い(呼びかけ)」では無いのです。だから解答に詰まる場合が多い。

一方で、(データ)分析が力を発揮するのは「問い」に対する「仮説」の発見および証明です。特に定量・定性データを使う場合は。

言うならば、鉛筆を削るのに出刃包丁を使うようなもので「他に便利な道具あるよ!」状態なのです。それなのに無理して作り笑顔で「大丈夫」と言っている。そんなわけ、あるいかい。

したがって、(データ)分析で最初にやることは、「問題」から「問い」への変換です。なるべく「解答」あるいは「仮説」がすぐに浮かぶような「問い」が良いでしょう。

例えば、朝起きたら8時30分で遅刻ほぼ確定だった、という状況に陥ったとしましょう。「どうしよう?」が問題です。

何をすれば良いのか、無数の選択肢が浮かびます。遅刻しない、もう諦めて遅刻する、いっそ休んでしまう…「問題」を、答えのある「問い」に置換すると、自然と「どんな意思決定を下すべきか」が分かります。

「問題」を「問い」に分ける

では、「商品Aが売れない」はどのように問いへと変換できるでしょう。

「売れない」を「消費者が買わない」に変換してみます。さらに「消費者から選ばれない」に変換してみます。

商品Aが消費者から選ばれない。

もう一押しでしょうか。「選ぶ」「選ばれない」は、選択の問題であり、ニーズの問題であり、欲望の問題でもあります。

商品Aにニーズや欲望を抱く消費者が少ない。

ここまで変換すると「商品Aが解消しようとしているニーズは何か?」「そのニーズを潜在的に抱いている消費者は何万人か?」「消費者のうち何割にが認知して、リーチできているか?」「現状の売上はリーチできている層のうち何割が購入していると考えるべきか?」「その数は高いか低いか?」という問いに分解できます。

※語る人によっては、この分析プロセスを「目的思考」と表現するかもしれません。知らんけど。


「巨象」も千切れば食べられる

厄介で大きな問題を、私の周りでは「巨象」と表現します。とても倒せそうにないことに由来します。

しかし、どんな「巨象」も細かく細かく千切っていけば、やがて食べられるサイズになります。「巨象」そのものを倒すのではなく、なるべく要素単位に細かく分解し、倒せるサイズになったら立ち向かう。

これこそが「巨象」に立ち向かう唯一の方法です。

(データ)分析も同じだと私は考えます。どう対応すればいいか分からない問題を前にうんうん唸るより、まずは問題自体を分ける。分けて仮説を立てて検証する。違う時もあれば、正しい時もある。

それが分析の「最初の一歩」だと思います。

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松本健太郎
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