AI面接ツールで採用の生産性を上げよう:業務過多でパンクする採用担当
採用活動の選考場面にて、AIを活用しようという動きが増えている。HireVueやSHaiNのように、AIで面接評価をしようというサービスが代表的だ。そのほかにも、AIによる自動採点が広まる中で、ウェブテストの種類も増えた。VISITS Technologies が開発する「デザイン思考テスト」のように、従来のアナログな方法だと測定に多大なコストが求められていた創造的な能力をAIで診断しようというサービスも出ている。
しかし、その運用はまだまだ試行錯誤の段階にあると言える。例えば、「AI面接では合否の判断を下さず、選考時の判断材料の1つにとどめよう」といった倫理的な問題がある。反対に、結果を知らされた求職者に調査をしてみると「人に判断されるより、AIに不採用と言われたほうが気が楽で良い」という声も聞こえる。今の就職活動のシステムは「大量の求人に応募をして、大量の不採用通知をもらいながら1つの内定を勝ち取る」というゲームなため、受け取る側からすると不採用通知にいちいち一喜一憂していたら割に合わない。
採用活動でAIの活用を歓迎しようという流れは、日本だけではなく世界的な潮流だ。そして、海外の人事系展示会や学会に参加すると、AIの導入を急ぐ背景として、切実な採用担当者の事情がある。
その事情は、「採用業務の負担が激増」していることだ。採用担当者の負担を増やすようになった切っ掛けは、ほぼ世界同時的に大きな波が3つあった。
1つ目の波は、求人広告のオンライン化だ。これによって、求人活動に地理的な制約が激減したほか、応募者が求人を探してエントリーすることが容易になった。このため、1つの求人に対する平均応募者数が激増した。
2つ目の波は、採用手段の多様化だ。例えば、日本だと、新卒理系の研究室採用、新卒のWEB求人による一括大量採用、欠員補充が主目的な中途採用という3つが長らく主要な採用手段だった。しかし、リファーラル採用やダイレクトリクルーティング、インターンシップ採用など、ここ数年で様々な採用手段が生まれている。新卒採用も、中途採用のようにエージェントを活用する企業も増えている。採用手段が増えるということは、単純に採用にかかる工数が増え、それぞれの手法に応じて熟練が求められる。そのため、採用担当の負担が益々大きなものとなった。最近だと、採用担当者によるSNSマーケティングも求められ、まるで芸能人になったかのようにYoutubeやTwitter、tiktokの毎日更新が求められたりもする。なぜか採用担当がtiktokで毎日踊っている会社もある。
3つ目の波は、採用のグローバル化だ。特に、深刻なエンジニア不足のため、インドやロシアをはじめとして、世界中の大学から情報系の学生を採用しようと精力的に動いている企業は多い。海外からの直接採用自体は、30年以上前からグローバル展開している製造業を中心にみられてきた。当時は日系企業に興味のある学生が対象の中心で、現地の日本語学科の学生が対象として多かった。しかし、現在のグローバル採用はエンジニアなどの専門性の高い人材が対象となることが多い。そうすると必然的に、欧米や中韓をはじめとした先進国のグローバル企業や現地の優良企業と競合することになる。そうすると採用の難易度が跳ね上がるだけではなく、給与や処遇などの人事制度全体の見直しをする必要に迫られることも少なくない。
2010年代以前の採用は、定期性があって忙しい時と暇な時の波があると言われていた。やるべき業務内容もルーチン化されて、定石があった。そのため、入社間もない若い従業員や人事経験の浅い人事スタッフの仕事として入門的な職務として扱われてきた。しかし、近年の採用は定石がなく、常に忙しい状態に変わっている。それにも関わらず、採用の成果は「今期は〇〇人を採用できて、充足率〇〇パーセントだった」と変化していない。つまり、業務の難易度が上がったために生産性が低下している。
採用業務にテクノロジーを導入することで、生産性を高めることは世界的な関心事だ。そして、生産性向上のテクノロジーは導入を躊躇して遅くなるほど競争力を失う傾向にある。もちろん、AI面接の良し悪しには議論の余地がある。しかし、だからといって様子見を決め込んで、気が付いた時には採用の競争力が無くなっていたという事態に陥らないように注意すべきだ。
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