ヤフーの「国内なら居住地自由」について
先日、ヤフーがこんなことを発表した。
社員は国内ならどこに居住してもいい、ということに関する発表だ。
交通費は月15万円まで支給&1日あたり6,000円としていた制限撤廃。つまり月1回の出社だったら、飛行機往復でもOK、ということになる。そこで「飛行機通勤OK」と相当話題になっていた。テレビのニュースにもたくさん出ていた。
これは結局、ヤフーは今後、毎日出勤というスタイルをとらない、と宣言した(ただしセキュアルーム等、出勤やむなしの業務は除く)ということだ。
世間では、対面の方が望ましいという会社も多く、
「コロナだからテレワークにしていたが、落ち着いたら対面に戻す」
と変えるケースも多数ある。
そんな中でヤフーは、
「全体としてはテレワーク主体で、時々出社もある」
というスタイルに変えた。これは発表にある通り、コロナ以降、ほぼ全面テレワークに移行したが、
「それ以前より効率が上がった、または変わらないとする社員が9割に達した」
ということで踏み切ったとのこと。効率が上がるのであれば、そうした方がいいに決まっている、というシンプルな理由だ。
対面か、テレワークか、ハイブリッドか、という問いは、「どのスタイルが一番業務効率が上がるか」ということで各社が決めればよいことだ。正解はない。ヤフーはこのスタイルがベスト、と判断したというだけだ。
で、このニュースを読んで、
「これはインターネットのヤフーだからできた話で、自分たちは違う」
と思われた方も大勢いるだろう。でも「インターネットの会社だから」できたのではない。そうではなくて、ヤフーはここに向けて10年近く準備してきたからできた、ということだと私は考えている。
具体的には、2点ある。
ひとつめは、ヤフーは「いつでもどこでも働ける」世界を、2012年くらいから少しづつ目指し、このような施策を積み重ねてきた。
・タブレット端末の支給(どこでも働ける環境つくり)
・フレックスタイムの導入(その後、コアタイムの短縮→廃止)
・どこでもオフィス(テレワーク)導入(月2回→月5回→制限撤廃)
・新幹線通勤可能に(どの社員でも)
・自転車通勤可能に(距離制限はあり)
・フリーアドレスの導入(オフィス内の働く場所の自由)
そして、コロナを機に、「オンラインに引っ越します」と大々的に宣言し、2020年10月より全面テレワークに移行し、居住地制限を「朝11時までに出勤できる場所ならOK」としてからの今回の決定となった。
つまり、インターネットの会社だから、ではなくて、社員は「働く時間、場所の自由」に少しづつ慣れていって、全面テレワークで成果が出せるようになっていた、ということだと思う。
もう一点、ヤフーでは2012年から「1on1ミーティング」を全社で導入し、全マネージャーはマネジメント対象の全メンバーに、週1回30分を目処に1対1で対話をする時間をとって、実行している。
以前は、一部1on1ミーティングの効果に疑問を持つマネージャーもいたが、現在では、1on1をやることに疑問を持つマネージャーは、私の体感では全くいなくなっているように感じる。10年くらいかけて、全社として1on1を行う体制が確立したとともに、有効に機能しているということだ。
これがテレワーク下のマネジメントに、多大な好影響を与えていると感じる。現在、オンラインにシフトしても、みな当たり前のように1on1を継続しているので、メンバーとマネージャーのコミュニケーションは対面の時と比べ変わらない。マネージャーの1on1力も長年の経験で鍛えられているので、メンバーたちも1on1でマネージャーとのコミュニケーションを確保し、オンラインでも不安なく仕事ができている印象だ。
おそらく1on1をやっていなかったら、テレワークで対面と同じ、または優れた効率で仕事できる、という結果にはならなかったのではないかと思う。1on1の確立、浸透、クオリティアップが、本件の必要条件であったことは間違いない。
こう振り返ってみると、テレワーク中心の働き方となっていったこと、そしてそれが居住地自由、という形に進化していったのは、自然な流れだし、効率をあげるという観点では、十分に勝算があっての施策だ。
自由な働き方を推進するのは、勝手気ままを許容する、ということではない。
「自(分の理)由」に基づく、つまり自分の意思で働き方を選べる、ということだ。そして1on1は、「働く人の意思」を明確にする機会だ。
つまり一人ひとりが、自分の意思に基づき、自分で働き方も選んで、最高の成果を出す。そういう、チャレンジなのだ。それは、これからのFree Flat Funな社会において、ますます大事になっていくことだろう。
そう、社員の一人として感じている。
(Photo by Aflo)