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上意下達の組織からの脱却。閉塞感を打破するには、「なぜ」を追求できる組織への転換を。

皆さん、こんにちは。今回は「理想の組織」について書かせていただきます。

日本経済は「失われた30年」と言われる低迷を続けています。多くの日本企業には閉塞感が充満し、知らない間に硬直化した組織が出来上がってしまっているのです。その原因は何なのかを特定せずに、組織に何か不具合があったとしても、その不都合な現実から目を背けた結果、会社が大きな危機にさらされることはよくあることです。

先行き不透明な時代において、急激な変化が目の前で起こる中、事業構造や財務体質の改革など、今までとは違う断続的な変革を、社運を賭けてすべきタイミングもあるかもしれません。

そのような変革に耐えられる組織を作っておかないと、閉塞感を抱えた組織の状態はますます悪化する一方でしょう。

今回は、理想の組織をどのように作っていくのか、何を意識的に変えていく必要があるのかについて考えていきます。

日本社会はこれまで強固な組織が自慢だった。野球やサッカー、ラグビーの世界的な大会で成果を出すと、日本的な団結力が称賛される。ビジネスでも1990年代初めの経済成長期まで上意下達の日本型組織は有効だった。だが、人口減や消費志向の多様化が進む21世紀には通用しない

■上意下達の日本型組織の弱点

事業環境が激変する今、社員一人ひとりがやる気に満ちてイキイキと働く企業と、閉塞感に覆われて社員のやる気が低迷している企業とでは、企業の競争力に大きな差が生まれることは間違いありません。

上意下達の組織においては、以下のような状態が発生しやすくなります。

  • 情報の遮断や遅延が生じる

  • 組織内の意思疎通が難しくなり、意思決定速度が落ちる

  • 意思決定権限を持たない社員のモチベーションが低下する

  • 一部のリーダーに過度の権限が集中すると、その他の人材のリーダーシップが欠如する

  • 変化に対応するための、個の対応力や柔軟性が低下する

  • 組織全体の変化適応力も低下する

  • 心理的安全性が担保されず、従業員の満足度が低くなる

  • 上司が社員からの指摘や疑問に耳を傾けず、重要な情報や視点を見落とす

  • 組織の中で自分のアイディアや意見を出すことが難しくなり、組織の創造性やイノベーションが阻害される

  • 組織に対する興味や、自社製品やサービス、自社の経営者、顧客、取引先などあらゆることに対する興味が持てなくなる

  • 個が尊重されず、独自性の乏しい組織となり、結果として業績が悪化する 

社員や組織、会社、または世の中に対して、興味や意欲、目標、目的、存在意義を失っていくことで、帰属意識や当事者意識が確実に薄れ、結果としてどこにも行き場のないモヤモヤとした「閉塞感」を生んでしまうことになります。

たとえば、所属している組織に以下のような傾向がある場合、上述したような組織に一歩足を踏み入れかけているので、注意が必要です。

✓経営陣や上司が自分だけを正当化し、部下や外部の環境、変化を否認する
✓傲慢で自分を過信している人ばかりいる
✓社員の声に一切耳を傾けていない
✓今の自社の強みに依存していて、新しい価値を生み出そうとしない
✓過去の勝ちパターンにしがみついている


通常は、組織の中で、過去の実績や成功を積み上げた人が発言権や決裁権を持ち、時間をかけて自分の島を作るというやり方が定着していることがほとんどです。人材の流動性がない組織では、その上の立場に就いた人が固定化され、残念ながら長い期間留まり、自分とは違う新しい発想や考えが潰されていってしまいがちです。となると、

「社員のアイディアや意見が否定される」→「誰も何も言わなくなる」→「意見を求められなくなる」→「思考停止する」→「組織が停滞する」→「組織全体に閉塞感が漂う」

というような負のループに入ってしまい、組織全体の景色が変わらず硬直化し、やがて停滞し、衰退していってしまうのです。

■「なぜ」を追求できる組織への転換

停滞してしまった組織を変えていくには、まずは正しく声を上げることではないかと思います。共感してくれる人や同じ考えを持つ人を見つけ、部署や組織や会社の垣根を越えて繋がり、気づいたことややるべきことを声を大にして発信していくことが、硬直化した組織を動かす一つの方法です。

時には、これまで交わらなかったような違う考えを持つ人とのコラボレーションにより、なぜそうなのかと「問い」を立て、主体的に答えを出していくことで、新しい発想やアイディアをアウトプットしやすくなることもあります。

記事には、

組織や仕事の問題点を上司に指摘するのはストレスがかかる。哲学的な対話によって企業のチームづくりを助言している東京大学大学院の梶谷真司教授は「人は自分から問うことに慣れておらず、問いとは試験のように与えられるものという感覚が強い」と話す。多くの組織で上司や指導者に向けた答え探しが優秀さの証しで、むやみに問うことは嫌われる行為だ。

とあります。つまり、上司と部下の関係性において、

●「問い」は上司から与えられるものである。
●その問いに答えることが優秀さの証である。

ことが前提となっていて、自分から問題提起をすることや、「それはなぜか」「こうしたらどうか」を追求する習慣や風土がないことが、今の日本型組織の決定的な弱点なのです。

ここに、近年の日本の産業の長い低迷要因があるのかもしれません。正解がどこかにあって、それに従って真面目に目の前の仕事さえやっていれば問題ないという考え方そのものが限界にきているのだと思います。

私たちが今直面しているのは、どこかにある正解を見つけることではなく、自ら考えて正解を作り出すことです。

記事の中に、閉塞感を打破するのに必要なのは、

●組織より個を優先できる風土
●問い続ける習慣
●心理的安全性のある関係

とありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD115NR0R10C24A1000000/

組織全体に閉塞感が蔓延している時ほど、以下のような要素に打開ポイントがないか探ると良いと思います。

① 自分で考え、決断し、行動できる、自律した個の育成
→上司が事細かに指示し過ぎたり、部下の裁量権を極端に狭めることは、部下が自分の頭で考える機会を奪うだけでなく、自発性や積極性、リーダーシップをも奪い、チームメンバーとの連携や協力体制の構築にまで悪影響を及ぼします。意思決定の権限を上位の管理者だけでなく、組織内の異なるレベルに広げることが重要です。上司は、適切な情報開示をした上で意思決定機会を十分に提供し、実行におけるサポート体制を整えることに尽力すべきです。

② 変化を喜んで受け入れるマインドセット
→生成AIの台頭に代表されるように、確実にテクノロジーの進化は今後も進んでいきます。その中で、最初にその情報や技術に触れないと、どんどん出遅れ、当たり前のように使っている人や企業にあっという間に追い越されてしまいます。それを避けるには、身についた昔ながらのやり方から脱却し、新しいことに苦手意識や抵抗感を持たず、まずは前向きに変化を受け入れることから始める必要があります。今までのやり方に固執をする人や組織は、確実に閉塞感を生み、次々と新しい技術や手法を取り入れていく組織や会社に大きく差をつけられてしまうことは明らかです。変化することを面倒くさがらず、変化を受け入れ、ビジネスチャンスにつなげる覚悟や気概を持つことが大事です。

③ 自由闊達でオープンな企業風土の醸成
→上司は、上意下達の指示・命令型のマネジメントから脱却し、部下の考えやアイディア、強みや得意なことを尊重し、自発的に行動に移しながらパフォーマンスを最大化できるように導くことが重要です。そのためには、自由闊達でオープンな企業風土を醸成したり、部下の意見に耳を傾け、活発な議論を促すなど、個々の能力や個性を発揮できる環境を整える必要があることは言うまでもありません。情報伝達の透明性を高め、組織内のコミュニケーションをオープンで効果的なものにしていく必要があります。

④ 個人と組織の “問い続ける”習慣の確立
→「なぜそのような意思決定なのか」「なぜうまくいかないのか」など社員一人ひとりが問題意識を持ち、その問いに挑み続けるような工夫が必要です。同時に、上司は部下からの「なぜ」にとことん向き合う必要があります。同じ視点で考え、共通認識のもと、あらゆる問題解決を行う機会や習慣を持つことで、戦略設計や計画立案の精度が上がり、仮に問題にぶつかったとしても乗り越えるために思考を切り替えることも容易になります。

このような状態を確立した上で、

「問い」は上司から与えられるもの。
「問い」は上司から与えられるものではなく、自分から見つけるもの。
その問いに答えることが優秀さの証。
その問いを解決するために自ら考え、解決策を実行していく過程で最適解を導き出すことが優秀さの証。

という組織に変えていくことが、企業の競争力を高め、価値を向上させるための大きな一歩になるのではないかと思います。

組織の中での上司と部下のコミュニケーションにおいて、部下の声に耳を傾けながら、お互いに「なぜ」を追求し続けることの重要性は述べた通りですが、そのような習慣のない企業は実はあまりにも多いです。「本音を言ったら評価が下がる」「どうせ何を言っても無駄」という組織風土だと、何も改善されることなく企業の成長が止まってしまいます。一方で、「社員が自由に発言できる風土」を作るだけで全てが解決されるわけではありません。

社員の忖度のない率直な意見を聞くだけでなく、それをどのように組織運営に生かしたか、その結果どうなったかを検証することがそれ以上に大事です。さらに忘れてはいけない大事なことは、社員が評論家のように組織の問題点や改善点ばかりを指摘して終わるのではなく、自ら解決に向かうアクションを促すような工夫を講じていくことではないかと思います。

■先の見えない時代にあるべきリーダー像とは

先の見えない時代だからこそ、時には対立してでも自由に意見をぶつけ合い、問題を追求していくことのできる組織を作ることが求められていることはこれまで述べてきた通りです。

ではそのような組織に必要なリーダーとは?と考えると、「普通のサラリーマン思考を持った人」ではなく、「起業家のようにとがった革新的な人」ではないかと思います。年齢や経験、職種などに関わらず、上司の言うことだけに粛々と向き合い、それに何の疑いも持たずに思考停止に陥るのではなく、自由に発想し、自らの意思で目の前の壁や問題に飛び込んでいくような、そんなリーダーが必要です。特に、閉塞感が漂い、硬直化した組織状態がある場合においては、意図的に組織をかき乱していくような、“変革者”が求められます

こちらの記事には、リーダーに必要な条件として、「体力、知力、胆力」の3つが挙げられています。

問題に直面しても逃げずに火中の栗を拾う覚悟で解決に当たるのがリーダーの基本で、それを実践してきました。若い頃から訓練しておかないと胆力はつきません」

こちらには、

先を見通せない時代のリーダーは『気骨ある異端児』であってほしい。困難があっても勇気と迫力をもって突破する能力と、常にものごとを違う角度から見られる能力を兼ね備えた人材です。」

とあり、
●問題から逃げずに向き合う
●勇気と迫力を持って突破する
●物事を別の角度から見る

ことの重要性が示されています。

記事には「異端児」とありましたが、おそらく、閉塞感を打ち破れるのは、「異端」とか「異能」、「異才」と言われる人たちや、「強烈な個性」を持った人ではないでしょうか。

周りを見渡してみても、人数は決して多くはありませんが、必ず凡人とか凡才と言われる人と対局にある人たちがいるはずです。彼らは人とは異なる発想ができたり、好奇心旺盛で、リスクがあってもチャレンジするタフさも持ち合わせています。同質性が高く、和を重んじて異質なものを排斥してしまおうとする日本社会では、このような人材の能力を生かすことが難しかったのですが、リスクをとってでも新しいこと、難しいこと、大きなことを成し遂げようとする、起業家マインドを持った“異端児”を意識的に引き上げていくことの重要さに気が付いている企業もたくさんあります。常識を打ち破るような経験・成果を出した人や突出した個性を持っている人は、社内の中でイノベーターになれる可能性が十分あるからです。

もちろんリーダーの形には、一つの正解があるわけではありません。サラリーマン思考のある人が変革を起こせないわけでもありません。考え方も、価値観も人それぞれです。だからこそ、自分の強みや資質に適したリーダー像を、無理せず模索していくことが重要なのです。

今の時代は、予測不可能なことや予期せぬ出来事がある日突然起こっても不思議ではないほど、不確実性や複雑性が高まっています。いつ何が起ころうとも現実を直視し、困難な状況を悲観することなく、大きく前進するための活路を見出せる組織にしていくためには、社員一人ひとりが主体的に自らの規範を作り、それに従って行動することが不可欠です。
そして、あらゆることに責任やリスクを負う覚悟を持ち、課題解決の突破口を見出し、変化に適応しながら常に最適解を自ら考え、実行し、新しい価値を生み出せるような、企業の成長の原動力となり得る人材がリーダーとしても確実に必要です。

自律した人材、自律した組織が、経営課題の本質を見極め、自信をもって解決策を見出し、解決に向けて改善を繰り返し追求していくことによって、イノベーションを持続的に創出していけるはずです。


#日経COMEMO #NIKKEI


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