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「結婚している」からと言って「1対1の恋愛を望んでいる」とは限らない。パワポで考える関係様式と、関係指向の話。

「性的指向」という言葉を耳にすることが増えた。

これまでは男性は女性が好きなもので、女性は男性が好きなもので、それがスタンダードで、それが当たり前とされていた。

しかし「ダイバーシティ」という言葉が世間に定着して以来、それは当たり前ではなく、人それぞれ違うことが当たり前になった。

性的指向(Sexual Orientation)とは、どの性別の人に性的に惹かれるか(または惹かれないか)という指向のことを表す。

ちなみに「指向」とはその人が持つ「考え方の方向性」のことで、「嗜好」や「志向」とは少し違う。パワポで整理するとこんな感じ。

嗜好と言われると「(単なる)好み」という印象が強まり、志向と言われると「(熱い)思い」という印象が強まるが、指向はその中でもっともフラットな印象だ。

男性→女性
女性→男性

じゃない。

人の数だけ方向性(指向性)がある。

これが性的指向という言葉の本質だ。

そんな「○○指向」について、先日新しい概念を覚えた。

関係指向


という言葉。
あなたは聞いたことがあるだろうか。

おそらく、これからのパートナーシップで重要になってくる概念だ。

今日はそんな話。

■関係指向と関係様式

「関係指向」という言葉が登場したのは、評論家・ラジオパーソナリティである荻上チキさんの本。

帯には、こんなことが書いてあった。

そこには、ポリアモリーと呼ばれる「複数愛(お互い合意の上で、複数と同時にお付き合いすること)」を実践する人たちの「関係性の築き方」についてが、苦悩や葛藤と共に記されていた。

この本に頻繁に登場するのが関係指向という言葉だ。

関係指向(relationship Orientation)とは、その人がパートナーとどのような関係性を指向するかという概念で、ポリアモリーの実践者を理解する上で重要とされている。

この関係指向は「関係様式」という言葉とセットで使われることが多い。

関係様式(relationship type)とは、その人が置かれている関係性の状態のことを示す。

つまり「関係指向」が本来の考え方で、「関係様式」は表面化している実際の状態ということになる。

本の中ではたびたび、ポリアモリー的な関係性を指向しているが、パートナーとは1対1を前提としたお付き合いをしている(していた)という人物が登場する。

つまり関係指向と関係様式はイコールになるとは限らない、ということだ。

■関係指向と関係様式を隔てる線引き

ここまで読んで

「本来はみんな、ポリアモリーみたいなことやりたいよ!でも世間と折り合いをつけて、我慢しているだけだ!」

と思った人をパワポにするとこんな感じ。

先ほどの人は、ポリアモリーの実践こそしていないが、本来の関係指向ではポリアモリー的な考えを持っているポリアモラスな人ということになる。

もちろん「本来はみんなポリアモリー」なんて決めつけることはできない。

本来はモノガマス(1対1の関係性を指向している)だが、現在の状態は複数と同時に性愛関係を持っている、というパターンもあるだろう。

ではここからは、関係指向と関係様式を隔てる線引きについて考えてみたい。

なぜ本来の関係指向と、実際の関係様式が一致しないのか。

それは「社会」が存在するからだ。

社会の最小単位は3人とされている。

つまり、

・AさんがBさんとポリアモラスな関係を指向して
・Bさんも本来の関係指向は同じだったとしても
「Cさんの目」によって

それが実践されない(表面化しない)。

こうした社会や世間の存在によって、関係指向と関係様式は分断されてきた。

と言うか、これまで世間は「関係様式」だけを見ていた。

「関係指向」という概念がなかったことより「選択している=指向している」という先入観が生まれていたのだ。

「男の格好をしているから女が好きなはずだ」

表面化している部分だけで、その人の指向を判断しているのと同じ構造だ。

関係指向にも同じことが言える。

つまり「付き合っている」状態なのか、「結婚している」状態なのか、現在の状態だけで、その人の指向が判断される

だから結婚している人の不倫が発覚すると「1対1の指向で結婚したはずなのに裏切った」と(勝手に)糾弾される。

(千鳥の大吾さんとかは、この図の逆で、関係指向を先にオープンにしているから不倫をしても糾弾されない)

このように関係様式と関係指向を分けて考えると「結婚している状態」だからと言って、その人が「1対1の関係を指向している」とは言い切れないことになる。

構造にするとこういうことだ。

Cだけが正しいわけでなく、A、B、Cすべての状態(その他も含めて)を「あり得る状態」として捉える視点が関係指向によって誕生する。

ポリアモリー的な状態を実践しているからと言って、その関係指向がポリー(複数恋愛の指向)とは限らない、ということだって普通にあり得るのだ。

■関係指向のカミングアウトで拡がる可能性

いかがだっただろうか。

こうして考えてみると、いかに自分たちが「関係様式」だけに捉われていたかがわかる。

性的指向と同じように、見た目や結果の状態だけで判断せず、相手の「関係指向」について関心を寄せる必要がこれからのパートナーシップでは必要ではないだろうか。

もちろん、それによって関係様式が変わることもあるだろう。

「自分のポリアモラスな指向を話したら、別れられてしまうかもしれない」

そんな不安は当然のように存在する。

ただそれは同時に「相手はモノガマス(1対1の性愛関係を臨む)なはずだ」と決めつけていることにもなる。

「蓋を開けてみたら同じ指向でだった」そんなことも可能性としてはあり得るだろう。

大切なことは、

・まず「関係指向」という視点を持つこと
・(関係様式が決まる前≒関係性に蓋をする前、なら)先に関係指向について相手と話してみること
・(関係様式が決まった後でも)お互いの関係指向を尊重する前提で自己開示を行って、その都度「関係様式」をアップデートすること

ではないだろうか。

関係指向のカミングアウトで狭まる可能性と同じくらい、お互いの関係性が拡がる可能性だってあるはずだ。


少なくとも、私はそう信じたい。


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小島 雄一郎
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