2018年は米中対立が決定的に。この裏には重点政策「中国製造2025」の衝撃
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。本日が仕事納めという方も多いのではないでしょうか。今年もおつかれさまでした!
■ インターネット的 vs イントラネット的
わたしも本業のほうは無事に納まり、今年の振り返りをしながらこの記事を書いています。IT業界に長く携わるものとして、今年は感慨深い年でした。それは、米中対立という軸が決定的になり、かなり広範囲に渡るイデオロギーの対立になりそうだと感じたからに他なりません。インターネットテクノロジーは、2001年に糸井重里氏が「リンク」「シェア」「フラット」と表現したように(『インターネット的』糸井重里/PHP新書, 2001)、オープンな仕組みによる互助により成立してきました。
しかしながら、中国におけるインターネットは「金盾」(グレートファイアウォール)と呼ばれる監視網に覆われており、完全に政府のコントロール化にあります。これにより、GoogleもAmazonもYouTubeも存在せず、これらを代替する中国専用サービスが国内で繁栄しています。
これらのサービスはもはや「パクリ」と一蹴できるようなものではなく、シリコンバレーと競合する実力を持った企業が続々と出てきています。このあたりをわかりやすく紹介した良書がありますので、興味のある方はぜひ。
■ 米国を本気にさせた「中国製造2025」とはなにか?
関税がアジェンダであった米中貿易摩擦も、特定メーカー(ファーウェイやZTE)の締め出しといった自由経済にあるまじき強権を発動するまでに至っています。米国内のみならず、日本を含む同盟国に対しても排除を求めるといった徹底ぶりです。米国は何を恐れているのでしょうか?
読み解く鍵は、中国指導部が掲げる産業政策にあります。
中国の習近平(シー・ジンピン)指導部が掲げる産業政策で、2015年5月に発表した。次世代情報技術や新エネルギー車など10の重点分野と23の品目を設定し、製造業の高度化を目指す。建国100年を迎える49年に「世界の製造強国の先頭グループ入り」を目指す長期戦略の根幹となる。
ハイテク分野での世界一を目指す、野心的な政策です。発表したのは2015年ですが、着実に実行に移しています。特に最近では宇宙開発分野において大きなマイルストンを達成しています。
カーナビやスマホの地図アプリで利用されているGPS。これは米国により運用されているものを、我々も利用させてもらっています。当初は軍事利用のために民間向けにはわざと精度を落とした情報だけ流していましたが、その後このような運用は行わない決定がされました。しかしながら、究極的に言えば、GPSのオーナーである米国は「いますぐ停止する」ことができるわけです。
航空宇宙分野で重要なテクノロジーであるGPSを自国のコントロール化におくことは、今後の中国にとっては重要であるため、独自システムの構築を勧めていました。これがついに、稼働することになったわけです。
■ 宇宙開発は意外な分野の発展につながる
宇宙開発で恩恵を受けるのは、交通や航空分野だけではありません。将来的にキーテクノロジーとなるのは、量子暗号技術です。
現在の暗号技術は、量子コンピューターの実用化されると解読が容易になると言われています。そのため、量子コンピューターでも解けない強度の暗号の開発は最重要で、特に米国・ロシア・中国といった大国にとっては至上命題と言えるでしょう。衛星を介した大陸間量子鍵配送は量子暗号の要であり、今回の世界初の成功で中国が一歩リードしました。
■ 閉じたインターネットが最先端になる未来がくるのか
欧米を中心とした開かれたインターネットでは、その成果はオープンソースのような形で広く利用と改善がされ、それが急速な発展を支えてきました。ところが、自由な環境で学び自国に持ち帰り、閉じた世界でさらに発展させるようなケースが出てきました。まさに、米中対立の根は深いと言えるでしょう。
社会インフラを支える1つにまで発展したインターネット。今後、世界がどのようにこれを運営していけばよいのか、新たな枠組みが必要な時期にきたのかもしれません。
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タイトル画像提供: ツネオMP / PIXTA(ピクスタ)
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