グローバルでのブランド成長のためのヒント
先日ミラノと東京を拠点としたビジネス+文化のデザイナーとしてご活躍されている安西洋之さんとお話をする機会を得ました。イタリアと日本に拠点をもたれ、グローバルでのご活躍されている安西さんにグローバルでブランドビジネスを展開する上で、知っておいたり、考えておくべき様々な学びを得ることができる貴重な時間でありました。グローバルでのブランド成長を考えるためのヒントをたくさんいただきましたので、紹介します。
論点①文化アイデンティティという言葉の危うさ
僕が経営しているMinimal -Bean to Bar Chocolate - というチョコレートブランドのテーマとして、「西洋発のチョコレートを日本人である私達のフィルターで再構築して世界に発信する」という点を進めていくために何が重要かという大きな問いを投げかけさせてもらった時のお話で、安西さんが「文化アイデンティティはとてもリスクのある言葉であると思う」とおっしゃいました。
例えば、日本の文化アイデンティティというと、安易に“着物”となるのは、危険で、同じ日本人でも、それぞれの人の中には複数の文化アデンティティがあり、それが常に揺れ動いているという事を忘れていけないと言う意味でした。
確かにその通りであると納得感が高く、これを前提に上記のMinimalのブランドテーマについて考えると、「日本人である」という部分よりも「私達」がとても重要であると解釈をしました。
常に人によってアイデンティティは異なるという大前提をもつことを忘れていけないと再確認できました。
そして、その「私達」の文化アイデンティティと言う部分を発信する上で大事な点が「審美眼」です。
論点②審美眼をもつ
安西さんのお話の中で例として印象的であったのは、欧州のラグジュアリーブランドに対して、イタリアの繊維工場の社長はきちんと交渉ができるといお話です。
同じ立場の日本の繊維工場の社長はどうだろうか?もしかしたらラグジュアリーブランドのいいなりで、交渉ができないかもしれない。
ではそうだと仮定すると、何が違うのだろうか。
それは、自分たちのライフスタイルに対しての審美眼を持っている事。
自分達の審美眼をきちんと養っており、何が良い悪いを判断する事ができるからこそ、相対的に自分達の良い点を理解出来ており、きちんとそれを主張することができると言うことです。
グローバルできちんとブランドを成長させていく際にこの点はとても重要であると思いました。
前述の「文化アイデンティティ」も自らの審美眼をもって、何を拠り所としているかということに磨きをかけていくことの重要性を認識しました。
少し話はそれますが、審美眼の養い方を考えるなかで印象的な記事として以下を思い出しました。
風土やそれ伴う風習を理解し、生活することは、自らの文化アイデンティティの根幹の審美眼を養うことにとても大きな役割を果たすと思いました。
論点③文化の条件設定
ラグジュアリーとはアバンギャルドであるというお話も興味深く聞かせてもらった点です。
アバンギャルドであるからこそ、新しいラグジュアリーは新しい文化をつくりだします。
しかし、あくまで文化とは結果でしかない事を強調されていたのが面白かったです。文化が結果だとすると、ブランドやビジネスの主体者ができる事は条件設定です。
その条件設定をどうするかが、ブランドやビジネスが新しい文化を創造していく上で考えるべき点という考え方は面白いと思いました。
論点④経営者に求められるのは「無知の知」
グローバルでブランドやビジネスを展開する際に経営者として大事な事として上げられたことに、「知らない事がたくさんあると自分で知っている事」とおっしゃっていたことはとても深く心に残りました。
その上で、全部経営者自身がやるべきでないと判断できる冷静さを持つ事は経営者として多くの失敗を重ねる中で僕自身が感じている事でもあり、腑に落ちました。
考え動く実践者であり続ける事
限られた時間でしたが、今回の対談は、グローバルでブランドやビジネスをしていく上でたくさんのヒントや考えるテーマを頂ける貴重な時間でした。
Minimalというブランドは自分の内発的動機から出発したブランドです。このブランドを今後も面白く成長させ、結果として新しい文化をつくっていくためには、自らの審美眼を磨き、条件設定をしていくために考えて、動いて実戦経験を積み続ける事が必要であると考えました。
今回お話の中ででた様々な事例や知見においても僕が知らない事がたくさん含まれていました。
そういったことを貪欲に学び、知り、考えて、議論して、実践して自分のブランドとビジネスに還元し続ける姿勢が大切であると決意を新たにしました。
最後に安西さんもこのお話を通して考えた事を書いて頂いておりますので、ぜひそちらもごご覧ください。
安西さんありがとうございました。
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