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理系研究者だった、私の就職の話を少ししよう。成功だったか、失敗だったかも。

就職戦線に異常あり

 今年は、就職に関する報道が多いです。短期的な理由としては、経団連の「通年採用」に関する決断があります。

 一方、中・長期的なこととして、「人生100年時代」そして「働き方改革」に向き合う中で、就職というものが何かを、再度考える時期になったこともあるでしょう。私も、過去に「就職」なのか「就社」なのかという問題を提起させていただきました。

 それくらい、就職に関して、きちんと考えないといけないのは確かなのですが、概念的な話ばかりしていても、実際の就職活動を行っている学生の方には参考にならないのかもしれません。

 そこで、ここで実際に理系の院生だった私が、どうして就職して、その後どうなったかを、きちんとお伝えしたいと思います。過去のインタビューで少しだけお話はしているのですが、今回は丁寧に書きたいと思います。

理系は、研究すればするほど、就職活動をさぼりたくなる

 私は、北海道大学の理学部の数学の修士課程に1990年の4月から1992年の3月まで在籍していました。大学院には、自分の意志でもちろん入試を受けて入りました。それは、大学の4年生までの活動は、研究というより基礎勉強が中心だったからです。もう少し、研究というものにもっと触れてみたいという考えもありました。また経済状況的にも日本はバブル時代で、雇用機会が多く、いつでも就職できるだろう。だから、いまは大学院に残っても、就職には問題ないだろうという考えもありました。

 しかし、大学院の2年というのはあっという間に終わります。大学院1年の前半で、研究テーマを決めます。大学1年の後半には、研究テーマが徐々に絞り込まれ、具体的になりワクワクしながら進めます。そして私の場合、大学院2年の前半は、ようやく問題の本質的な難しさを理解し、問題が解けない暗い時間が多くなります。そしてその、ようやく研究者として、最初の挫折を味わう頃が、就職活動と重なるのです。

 この記事にもあるように、研究に本当に没頭したいなら、就職活動をさぼりたくなるはずです。しかし、大学院の先のことを考えると就職活動で先に、就職先を見つけて安心したいのも事実です。もちろん、これから始まる通年採用になれば、その問題は解消されるのかもしれませんが、現実的にはやはり一般的な就職活動時期に、研究時間を少し休んで就職活動を行わたないといけなくなります。

 しかし私の場合は、指導教官が私に興味を覚えてくれる企業を探してくださり、私はその1社しか説明会も就職試験も受けませんでした。つまり、就職活動を、少しさぼったのです。正直に言えば、当時の私は就職できれば良いのであり、その就職先の企業名については、考える余裕がありませんでした。むしろ1社就職が決まったので、まぁOK。それよりも修士論文を出せるのか、論文発表会を超えられるのか。そちらの方が大きなテーマでした。こんなこと、当時の採用面談で話していたら、今の自分はないのですが。

 私も企業に入ってから、就職の面接官を行うことがありますが、理系の院生を面談するときには、あまり研究内容を聞きません。だって、就職活動時期に研究内容が完了していて、研究成果を明るく話すのであれば、とても好印象な人に感じますが、逆に研究テーマが簡単だったということになります。通常であれば、少し悩みながら話すはずです。まだ研究テーマと格闘しているはずだからです。そして、その悩んだ印象は人によっては、あまり良い印象に感じなくなることもあるからです。なんか、就職の面接官のマニュアルには、「自分の研究テーマをきちんと論理的に話せるか」などといった項目がありますが、真の研究者なら「苦悩しながら、論理的に話す努力をする」はずなのです。

 理系の院生の正しい姿は、研究に没頭することでしょう。そして、県kひゅうで悩みぬことは研究者として当然の姿です。結果、就職活動をさぼりたくなる理系の院生がいるのも事実なのです。私は、そこまで正しい研究者でもなかったのですが、その私でさえ、就職活動を少しさぼったのです。

 では、その後の私は大丈夫だったのでしょうか?

1社しか就職活動をしなくても、問題なかったのか

 大学院2年の前半で1社の就職活動に通過(失礼な言い方なのですが)した私は、2年生の後半は研究、そして就職後に北海道を離れることにもなり、北海道満喫という生活を行いました。きっと今だと許されないことなのでしょうが、内定式は研究集会の参加を優先し企業の活動を欠席し、そして修士論文発表前には、流氷を見に行って、少し大学もさぼりました。いろいろな方に迷惑をかけながら、修士論文の発表も終えて、1992年4月には、花王の研究員として入社しました。

 他の企業の研究所と比較もせずに、就職して、大丈夫だったのかというと、全く私には問題はありませんでした。問題は、私を採用してくださった花王にはあったのでしょうが。

 花王に就職して、すぐに企業の研究活動につきました。しかし、ここで早くも小さな挫折を味わいます。大学の研究のスタイルと、企業の研究スタイルはの違いです。例えば、大学では、進捗は指導教官にお話をすれば良いのですが、企業では報告書が必要です。最初の頃は、この報告書を書くのに、毎週金曜日は潰れていたのではないでしょうか。つまり、研究者としては失格なのでしょうが、それを許容してくれていました。そして、これは研究の問題ではなく、新入社員の問題だと私は理解し、全く問題を感じず、研究員生活を続けます。ていませんでした。

 問題を感じないもう一つの背景に、企業では研究テーマそのものが、大学のようにずっと同じではなく、状況により変わることがあります。そして、そのテーマも私のテーマではなく、チームのテーマなのです。チームで研究するわけですから、そのテーマで、自分が何かが、できれば良いのです。その研究の中で、自分ができることを探せれば良いのです。

 このようなことから、私の1社しか行わない就職活動は、全く問題がなく過ぎていたのです。つまり、就職活動、少しくらい、手を抜いても大丈夫です。

悩むな!理系学生の就職の強みは、「研究力」そのもの。

 とはいえ、理系、特に院まで進学した学生の方には、就職は大きな問題なことは事実でしょう。でも、私の体験から言えることは、理系の強みの理解が必要だということです。私の理解では、理系学生の強みは「研究力」そのものだということです。なのです。

 おそらく、就職するときに、自分の研究テーマに近い企業を先に考えると思います。つまり自分の「専門性」を有効活用しようという考えです。自分の専門性を研究している企業に就職できたとしても、そのテーマが、就職後のあなたの研究テーマになるかは不明です。

 理系の学生が学んだことはその「専門性」だけでしょうか。もちろん、研究テーマそのものの「専門性」は学びます。そして、その「専門性」を学び、極めるために、その研究を進めるための「研究力」も得て卒業します。「専門性」は自信を持っているでしょうし、自覚もあります。しかし、実は未知・未踏の問題を解決した「研究力」もあなたの強みなのです。

 つまり、理系の学生が、研究者として就職するであれば、「どの領域でも大丈夫、自分には、未知・未踏の問題に向き合える『研究力』がある」と自分に言い聞かせてみてください。そうすることで、就職先の選択肢が広がるでしょう。そして、少しくらい就職活動ををさぼっても良いと、思えるでしょう。

 研究と就職活動の両立は大変なことだと思いますが、ぜひ頑張ってくださいね。何より、企業は皆さんの力を求めているのですから。

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1992年花王入社、デジタル・マーケティングを牽引。以後、コンサルタントとしてマーケティングのデジタル化を支援。ビジネスブレークスルー大学講師、東京大学大学院数理科学研究科客員教授、事業構想大学院大学客員教授 マーケティングサイエンスラボ(mslabo.org)所長