エネルギー負担軽減策に過度の期待は禁物
政府予算の2割過大 対コロナで急増、規模ありきに疑問: 日本経済新聞 (nikkei.com)
物価高や円安に対応するため、政府は先月28日、財政支出の総額が39兆円程度となる新たな総合経済対策を決定しました。
物価高対策のほか、「新しい資本主義」への加速として「人への投資の強化」、「成長分野への労働移動」などが盛り込まれたことで、その規模が大きく膨らむことになっています。
岸田総理は「財政支出が39兆円。これによりGDPを4.6%押し上げる」や、「電気代の引き下げやガソリン価格の抑制などで、来年にかけて消費者物価を1.2%以上引き下げていく」とその意義を強調しました。
しかし、電気ガス補助金は原油などの値上がりを十分には補えず、賃上げ促進効果も未知数であり、GDP押し上げ効果も限定的と私は見ています。
経済対策の規模を評価する際に一般的に参考にされるのが、経済全体で見た需要と供給のバランスです
内閣府の推計による直近の需要と供給のバランスは、今年4―6月期の▲2.7%となっています。つまり、マイナス幅を縮小してきているとはいえ、年換算で▲15兆円程度の需要不足が存在していることになります。
一方、内閣府のこうしたデータと消費者物価の過去の関係を鑑みると、政府の2%インフレ目標を達成するためには、さらにプラス15兆円の需要超過になることが必要となります。このため、政府がめざす安定成長のために必要な需要額は合わせて30兆円以上となります。
このため、規模だけを見れば合格点かもしれません。しかし、大事なのはその中身であり、いかに実効性のある政策を打ち出すことができるかどうかでしょう。
こうした中、今回の目玉であるエネルギー負担軽減策の効果は限定的でしょう。というのも、エネルギーなどの原燃料価格の上昇に対して、電気・ガス料金の値上がりを一定程度に抑えるために、電力やガス会社に補助金を出しますが、これにガソリンの負担軽減も含めれば、一般世帯の負担は来年度前半までで4.5万円以上軽減されることになっています。
しかし、今回の措置だけでは、エネルギー価格などのこれからの上昇分の負担を埋めるだけで、これまでより負担が軽減することにはなりそうにありません。
現行の電気・ガス料金は、貿易統計に計上された3~5カ月前の原油や石炭、天然ガスなどの等の価格を基に変動します。つまり、火力燃料や都市ガスの原料価格の変動が遅れて料金に反映されるなるわけです。
このため、来年にかけてさらに電気ガス料金に押上げ圧力がかかり、今回の制度導入で電気・ガス料金が2~3割抑制されたところで、実際の負担が大きく軽減されるわけではありません。
このため、本当の意味で電気・ガス料金の負担軽減の効果を期待するのであれば、それは省エネ関連の投資の促進などによって、どの程度エネルギー効率が高まるかにかかっているといえるでしょう。