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Withコロナ時代に、金融機関と企業の間で起こりうること ~「コベナンツ条項」を巡る動き~

 世界中で、新型コロナウイルスによる経済への影響が懸念されています。特に懸念されるのが、下記の記事にもある、企業の借金依存の深まり、資金回収の不確実性が増すことによる銀行資産の劣化です。今回は、資金の貸し手である銀行と、借り手である事業会社との関係性がどのように変化しうる可能性があり、それが企業、株主に何をもたらすのかを考えていきます。ビジネスパーソンや個人投資家の方が、前向き意思決定をするための材料になればと思います。

*銀行と企業の間で何が起ころうとしているのか?

 新型コロナウイルスにより4-6月GDPのマイナス幅は、戦後最悪を更新との予想も出ています。このような環境では、銀行による企業への意思決定が注目されます。具体的には、下記記事にある、融資の際に結ばれる「コベナンツ条項(融資先の企業が最終赤字や債務超過などに陥った際に借入金の一括返済などを求める契約)」に対して、銀行の対応です。

 新型コロナの影響で、借り手企業に何かしらの異変が起きたことで「コベナンツ条項」に抵触した場合、銀行は資金の一括返済を踏み留まるかもしれません。しかし、これは、企業に良いことばかりでは無さそうです。一括返済を踏み留まる見返りに、別の制約が企業に課され、企業の長期利益にはネガティブな影響が起こるかもしれません。その他には、銀行と株主間で新たな火種が起こる可能性も否めません。それを考えるためには、そもそも、なぜ「コベナンツ条項」が存在するかを整理する必要があります。

銀行と企業の融資契約の条件も和らげる。融資契約では、融資先の企業が最終赤字や債務超過などに陥った際に借入金の一括返済などを求める「コベナンツ条項」と呼ばれる特約を結ぶことがある。金融庁はコロナの影響で赤字などになっても、この条項をすぐに発動しないように金融機関に要請する方向だ。


*「コベナンツ条項」は何のために存在するのか?

 コーポレート・ファイナンスの学術研究では、このように整理されています。例えば、Jensen and Meckling (1976)では、「コベナンツ条項」は株主と債権者である銀行間の利害対立であるを緩和し、企業価値にプラスの影響をすると指摘しています。

 具体的には、投資資金が無限大になる可能性を持つ株主と、投資先企業が成功しても投資資金の元本と利息しか回収できない債権者では、投資先に要求する経営方針に違いが生じ、それが対立を生むことがあります。株主は、経営者に過剰にリスクとをとる経営を要求したり、債権者は、確実に資金が回収できるように投資機会を見過ごすような過少投資経営を促すなどです。この対立があるために、銀行は株主行動を見越して、貸出金利を引き上げたり、貸付を渋ることが考えられ、そのコストが企業価値にマイナスに影響しうるのです。

 しかし、「コベナンツ条項」で、経営者に投資や資産処分の制限、過剰にリスクの高い投資の抑制、株主への過剰配当…等々、株主に過剰にリターンになりうる企業行動を制限することで、銀行は貸付を行いやすい環境を作り出せます。前述した対立コストを、金利等に反映しなくてもよいのです。

*「コベナンツ条項」猶予の、企業への影響は?

 では、銀行が新型コロナの影響を考慮して、「コベナンツ条項」に抵触しても、借り手企業の返済条件を猶予した場合、当該企業には何が起こりうるのでしょうか? Christensen et al. (2016)は、「コベナンツ条項」に抵触しても、銀行が一括返済を要求するでなく、企業との再交渉権を得ることで、契約上の企業への制限を強めること事象を報告しています。具体的には、契約修正の手数料、利子率の増加、借り手企業の投資を制限する等です。仮に、これらが日本で起きた場合、生かされる企業は借金依存度が強まり、長期的な企業価値にはマイナスの影響や弊害も考えられます。また、過去に実施された金融円滑化法案による影響と同様の現象が考えられるでしょう。

*「コベナンツ条項」猶予は、債権者と株主の関係性に影響するのか?

 そして、更に気になるのは、「コベナンツ条項」猶予は、債権者と株主の対立構造に影響するかです。先日、ファンドの方々とZOOM MTGを行った際に、ファンド業界の状況を伺いました。M&Aや、出資、売却…etcの多くが流れてしまったや、世界では中国系ファンドが一番元気だ…など。その話の中で、ファンドが株主として出資している企業が、新型コロナの影響で「コベナンツ条項」に抵触した噂話を耳にしました。銀行側は猶予する代わりに、ファンド側に追加出資を要求するケースがあるようです。この場合、銀行側は猶予の代わりに当該企業が守りの経営を求めるでしょうが、株主としては、そのような守り経営の企業に出資しても旨味はあまりありません。

 「コベナンツ条項」猶予は、債権者と株主の対立コストや、株主の追加出資に、どのような影響をもたらすのか…。

もしも、勤務先、取引先や投資先などが、銀行と再交渉をする場面や兆候が見られたら、上記のようなことも想定すべきかもしれません。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます!

応援いつもありがとうございます!

崔真淑(さいますみ)

*イラストは、崔真淑著「30年分の経済ニュースが1時間で学べる」(大和書房)より引用。無断転載はご遠慮くださいませ♪


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MBA in Finance。一橋大学院博士在籍。専門はコーポレート・ファイナンス。GNC代表。昭和女子大研究員。フジテレビ『Live News α』、テレビ東京『昼サテ』、NHK、日経CNBC等で経済解説。公式サイトhttp://www.goodnews.jp.net/

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