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女性の活躍を推進できる組織カルチャーのつくり方

3/8は国際女性デーでしたね!女性の活躍についての議論が様々なところで展開され、議論としては日本でも少しずつ進んできている印象です。
ただ、議論はすれど、組織の中での現実はまだまだ遠いというのも実態なのではないかなと思います。

僕の所属するデジタル庁でも、デジタル監の石倉洋子さんは女性ですが、石倉さん以外のCxOや統括官といった幹部クラスは全員男性です。
また、民間企業にコンサルティングをさせていただく際にも、経営幹部は男性ばかりという会社の方が正直ほとんどです。

そうした企業の経営者や人事に理由を伺うと、「女性の活躍を後押しするのが大事なのはわかってるんですが、正当に評価してきた結果こうなってます」といった話をしていただくことが多いです。

確かに、意図的に男性だけを選んで登用しているわけではないし、最大限正当に評価もしているのだと思います。そう考える気持ちはよく分かります。
D&Iに力を入れているメルカリでも、僕の所属していた上場前のフェーズでは経営陣は男性がほとんどで、実際に「正当に評価してきた結果だ」という説明を経営陣はしていました。そして、僕自身もそう思ってました。

その後、D&Iの議論を進め、女性登用の議論を加速するに連れて、「なぜ女性の幹部が増やせないのだろう?」ということを真剣に考えました。

考えてみると、幹部候補の中の女性の割合がそもそも少ないんですよね。その手前には、管理職に登用されている女性が少なくて、もっと遡るとそもそも採用の時点で女性が少ない(特にリーダークラスの女性が少ない)。なんてことが見えてきたりしました。

これってつまり、採用や育成・評価といった日々の営みにおいて、個々の意思決定を積み重ねていく中で、無意識のうちに男性を優先するという組織文化がいつの間にか構築されていたのかもしれないということなんです。

そして、これが組織のカルチャーとして浸透してしまっているので、これを変えるのは一朝一夕にはいかないんですよね。これは、逆にいえば女性の登用が組織カルチャーとして浸透すれば、女性の活躍を推進していけるということでもあるので、僕はこの推進は可能だと思っています。

そこで、今日のnoteでは、女性の活躍を推進していける組織カルチャーをどのように構築していくかについて、検討していきたいと思います。


男女の賃金格差の大きさと生産性の関係

女性の活躍を考えていくにあたり、ちょっと衝撃的だったこのグラフから考えていきたいと思います。

まず、男女の賃金の平均を比較すると、日本の女性は男性よりも年間で112日多く働かないと同じ給与にならないのです。他国でも差はありますが、日本は韓国に次いで非常に格差が大きいことがわかります。

そして、この図が訴えていることのもう一つに、賃金格差と労働生産性の関係があります。男女の賃金格差が大きいほど、労働生産性が低いという負の相関が明確に見て取れます。

そして、女性の賃金が低い要因として日経記事で触れられていることは、
(1)管理職の少なさ
(2)医師や弁護士など高収入の専門家の少なさ
(3)非正規雇用の多さ(男性22%に対して女性54%)
の3点です。

確かにこの原因を見ると、体感とも合うなという方も多いかなと思います。

こうした要因から賃金格差が生まれているのであれば、各社アクションを起こして改善すれば、労働生産性は上がっていくはずです。

なぜ女性の活躍推進が進まないのか?

「労働生産性が経営指標として重要」ということは言うまでもありません。
そして、「男女の賃金格差が小さい方が労働生産性が高い」と証明もされています。それなのに、なぜ女性の活躍のためのアクションが強力に推進されないのでしょうか?

そもそも、労働生産性とは、労働投入量(従業員数や労働時間)に対して、どれだけの付加価値額を生み出したかということで決まります。
わかりやすく端折っていうと、「社員一人が時間あたりにどれくらい利益を生み出しているか」と捉えるとイメージしやすいと思います。

より少ないインプット(分母)で、より大きなアウトプット(分子)を出せれば、労働生産性は高められるということです。

生産性を追求すると逆に女性活躍の議論が遅れる現状

つまり、労働生産性を上げるには、職員の作業をデジタル化などによって効率化してインプットを下げたり、製品・サービスの提供価値を高めて売上を向上させてアウトプットを上げればいいわけです。

そうすると、経営陣としてはどう考えるかというと、「女性の登用も大事だが、それより今はまず業務効率化を進めた方が利益を生むだろう」といった考えが生まれます。
こうやって、経営陣が短期的な生産性向上策を優先した結果、女性の活躍に関するアクションは後回しになりがちで、そのため強いリーダーシップを発揮しきれなかったと僕は考えています。

「労働生産性を向上するべき」ということはどの組織においてもコンセンサスを得ることができると思います。
だとしたら、「労働生産性の向上には女性活躍を推進することが有効だ」ということまで組織内でコンセンサスが取れれば、女性活躍のアクションを推進できるといえそうです。

そして、経営が強いリーダーシップを発揮しながらメッセージを発信し、人事や現場の各マネージャーが日々の行動・言動の中で意識することで、組織カルチャーとして定着させていくことができるというわけです。


男女の賃金格差を埋め、労働生産性を上げる

企業は、女性の幹部や管理職への登用や、正規雇用化などを通じ、男女の賃金格差を埋めていくことができます。
「賃金格差を埋めることが労働生産性を向上させる」ということを、組織内で腹落ちできるよう、女性の活躍が生産性に与える効果についてここから3点に分けて検討していきたいと思います。

(1) ポテンシャルのある人材を最大限活用できる

そもそも、人口の半分は女性です。それなのに、幹部や管理職が男性だらけだっていうのは、おかしくないでしょうか?
女性より男性の方がビジネスにおいて優秀だという研究結果なんて見たことがないし、入社したてのスタッフを見ても男女変わらずに成果を上げているはずです。元来、学校のテストの点数だって男女差なんてありません。

だとしたら、ポテンシャルの高い人材は男女関係なく登用すべきです。
そもそも、採用から男性に偏りがあり、登用・抜擢まで男性に偏っていれば、当然幹部はほとんど男性になってしまいます

これは、ポテンシャルの高い人材のうち半分を見逃してるってことなので、経営としては大きな損失です。
しかも、これから人口が減少して人材はまさに取り合いです。そんな中で人材市場の半分を捨てるという意思決定が正しいとはいえませんよね。
そしてしれが、無自覚・無意識のうちの組織文化として定着してしまているかもしれないとしたら、とても怖いことです。

ポテンシャルのある人材を最大限活用できれば、組織力が高まり生産性が向上することは言うまでもありません。これだけで、女性を採用・登用すべき十分な理由となり得ますね。

(2) 意思決定に女性の意見を反映する

これも上記と同じ話なのですが、人口の半分が女性だということは、お客様の半数が女性だということです。

「うちはBtoBで相手先は男性が多いだろう」というケースもあるかもしれませんが、相手先のさらに先には消費者がいて、相手先の意思決定には女性顧客の感覚が色濃く反映されてる可能性もあります。

分かりやすい例を挙げると、新製品候補がAとBの2つあったとして、男性だけの経営陣が意思決定したら「Aだな」となっても、女性が見たら「あー、Aはネイルしてたら使いづらいから絶対ないわ」なんてことになって、Bで意思決定するということがあるわけです。
この事例は、ある企業で実際にあった話で、Aで決定して、生産して、販売してからでは遅いってことなんです。

この課題は、開発メンバーに女性がいても解消できる可能性もありますが、A or Bという議論になったりすると、結局のところ最後の意思決定が大事なんです。

なので、意思決定の場にこそ女性が必要だ、ということです。
意思決定をより消費者感覚に近づけることで、売上を上げれば、自ずと労働生産性は向上していきます。


(3) イノベーションの可能性を広げる

ダイバーシティを高めることの最大の価値はイノベーションにあります。
似た背景・考えの人が寄せ集まったところで、同じ思考しか生まれません。

こちらのハーバード・ビジネス・レビューの記事によると、「認知的多様性」と「心理的安全性」の両方の高い組織がチームとしてのパフォーマンスが最も高いという研究結果が出ています。

心理的安全性の高さがあれば、多様なメンバーが集まることによって、個人では辿り着けない新たな策に辿り着くことができるということですね。

伝統的な日本組織においては、価値観の近い人材を新卒採用し、新卒から一貫して一社で育てていくことで、凝集性の高い組織を作ってきました。
そうすることで、阿吽の呼吸で組織がスピーディーに進み、改善を繰り返すことで日本の企業は成長を続けてきました。

市場が成長しているうちはこれでよかったのですが、市場が縮小する中においては、新たなイノベーションを起こさないとジリ貧になっていきます。そして、新しい試みを加速するため、昨今では、中途で専門性の高い人材を採用したり、外国籍の人材も増えていきます。
そうした環境下では、同じ環境で育った同じ日本人である男性と女性という違いくらいは早く乗り越えて当然のように協働できないと、いつまで経っても世界から置いてかれたままではないかと思うのです。

デジタルテクノロジーを中心としたイノベーションは、生産性を圧倒的に向上させます。イノベーションには、ダイバーシティの高い組織が望ましいですし、その第一歩が日本の女性の活躍だということですね。

これら、(1)(2)(3)の点を踏まえて、女性の活躍推進が労働生産性を高めていくということについて、経営層や管理職層が腹落ちしていくよう、各組織に対してファシリテーションしていくことが必要だなと思っています。


(補足)女性登用を推進した日本マクドナルドの例

実際、僕が所属していた日本マクドナルドは、上記の点を強調して人材確保と組織力強化につなげていました。

僕が入社した2005年ごろの女性店長比率は日本では一桁%でした。
ただ、海外では女性店長の比率が50%超とかっていう国もあって、2010年くらいには「女性店長を増やそう」とトップから号令がかかり、女性の登用を積極的に進めました。
(前提として、マクドナルドでは組織において最も重要なポストを店長としているので、女性店長の登用が重要でした)

その理由はシンプルで、だってお客さんの半分は女性なんだから、提供する僕らも同じように男女両方の感覚がバランスよくあった方がいいでしょっていう感じでした。

しかも、当時のマクドナルドは就職したい会社ランキングで上位に入ることもない企業でした。大学生にとっては、就職先というよりバイト先というイメージが強いせいもあると思いますが、新卒採用においてはハンディを背負っていたわけなので、男女限らずフラットに採用できるということはそれだけ候補者を広げることにもつながっていました

意思決定できる管理職レイヤーへの登用も積極的に行っていましたが、当時経営トップだった原田さんは、「女性が下駄を履いてるっていうけど、これまで散々男性が下駄履いてきたんだからそれでイーブンだ」とすら言ってました。
もちろん、それで女性だけを優先して登用していたということはないと思いますが、トップがこれくらい強いメッセージを発信してくれると、現場も積極的に登用しやすくなるなと感じました。

実際僕も、マクドナルドのマーケティング部門で部長職を務めていた頃、20代後半の女性をマネージャーに推薦し登用したこともあります。いわゆる抜擢での登用で、一つの象徴的な人事だったなと振り返って思います。

これはもちろん、本人に実力とポテンシャルがあることが大前提で、女性だからという理由だけでの無理な登用は僕自身は賛同しません
登用する際には、チームとしての組み合わせがむしろ大事だと思っていて、僕が部長で男性だったから、その下のマネージャーの中には女性が多くいた方がバランスが良いと考えていました。(もし部長が女性だとしたら、その下のマネージャーは男性が多いくらいの方がチームとしてのバランスは良いのだと思います。)

これは男女に限ったことではなくて、僕が店舗での現場経験が足りないから、チームメンバーには店長経験者に必ず入ってもらうなど、足りない部分を補い合うミックスで組織を作るのが最も成果につながっていたなという実感があります。

僕はマクドナルドから離れてもうすぐ5年経ちますが、この記事によると今でも同様の方針で女性の活躍を推進しているようです。

引き続きぜひこの切り口において外食産業をリードしていって欲しいなと勝手ながら思っています。


人事や現場のマネージャーができること

女性活躍を社会として加速させていくには、当然、親や教師による価値観形成の問題であったり、学生時代の教育環境の問題、企業の採用や人材流動性の問題など、国として取り組むべき論点はあげればキリがありません。

これらの動きを待っていては遅いので、僕たち一人ひとりが動かしていかなければならないと思うのです。
ここで最後に、人事や現場のマネージャーができることを僕なりの視点から一つだけ書いておこうと思います。

アクションにコミットする

よくある「女性の管理職比率XX%を目指しましょう」といったKPIの設定は、不要だとは言いませんが、それだけでは効果を発揮しません。コミットメントを数字にしても、アクションしないと何も変わらないからです。
「2025年の目標だった女性管理職比率が、いつの間にか2030年の目標にすり替わっていた」なんて話をよく耳にしますが、数字だけ掲げても成果にならないということです。

やるべきことは、アクションにコミットすることです。
具体的には「男女フラットに抜擢する」ことです。

抜擢人事が一人行われれば「変わった」という印象を組織内に与えることができます。いわゆる象徴人事というやつです。
「若い奴が抜擢された」「女性が抜擢された」「外国籍が抜擢された」こういう事例を組織内に複数生み出していくことで、ポテンシャルの高い人材を登用しやすい組織カルチャーを作っていくのです。

抜擢はあくまでチームの成果のため

その際に注意したい僕が思うことは、抜擢はするが過剰に下駄は履かせないということです。
大切なことはチームとしてのパフォーマンスを最大化して生産性を向上させることです。だとしたら、上述のマクドナルドの例でも触れたように、組織・チームのバランスとして最適なミックスであることの方が重要です。
短期にせよ中長期にせよ、チームのパフォーマンスのための抜擢であれば、男性・女性問わず積極的に登用していくべきだと思います。

仮に、他の人材の方が実績もポテンシャルも高いことが明らかなのに、無理な登用をしてしまうと、周りの納得を得られず、抜擢された本人もパフォーマンスしづらくなりますので、この点は留意が必要です。

抜擢したらそこで終わりではない

そう考えると、どんどん抜擢がしづらくなりますが・・・

他の人材より明らかに逆転するような抜擢でなければ、ポテンシャルのある人材は登用していって良いと思います。確かに本人は苦労しますが、周りに一定の納得感があれば、サポートも得られます。

そして、抜擢を成功させるには、抜擢したらそれで終わりではないということが大切です。
本人に類似した背景・キャリアの先輩メンターをつけたり、成果が出るように上長がサポートするなどして、パフォームするように周囲から支えてあげることが欠かせません。

このようにして「成功事例」が作れれば、社内の抵抗は小さくなっていき、その後の抜擢も成功しやすくなります。

抜擢を仕組み化しカルチャーに育てよう

抜擢が進んできたら、人事に関する意思決定の仕組み・プロセスに組み込んでゆきます。仕組みとは、例えばこういうことです。

  • チームを構成する際に、男性や女性に偏った構成になってないか?バランスの良いミックスになっているか?を検討する。

  • 管理職登用時に候補者を検討する際に、性別に偏りはないか?という視点を組み込む。

  • 採用時に男女の比率を可視化して最適な比率を検討する。

  • 異動を調整する際に、性別を理由に対象から外れていたり、逆に対象になっていたり、しないか?というチェックをかける。 

・・・などです。

こうした仕組みを入れることで、組織の日々の行動や言動に落とし込むことで、少しずつ組織カルチャーが変わっていきます

そうやって、組織カルチャーとして浸透・定着していくことができれば、自律的に女性登用が進みます。そしていずれは、「女性か男性か?」ということをそもそも意識しない、フラットな強い組織が構築できると思います。

そういう日本になっていくことを信じて、一人ひとりにできることからやっていきましょう!!


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