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思考はまずA3ノートに鉛筆で

最近は下の記事のように日本全国、大手企業から中小企業までDX(デジタルトランスフォーメーション)に力を入れている企業が多く、デジタル技術を用いて改革をすすめていこうという機運が高まっています。

しかし、僕は仕事において思考をまとめるフェーズにおいてだけは、いきなりデジタルを利用するのではなく、手書きで仕事を進めることを絶対的なポリシーとしています。

20年以上前に上司から教えてもらったとのポリシーについて、思うところを次にまとめていきます。


本部長の指導

あなたは自分の考えをまとめたり整理したりするとき、どのような方法をとっていますか。パソコンですか? それともスマホにメモをしていますか?

僕は、20代半ば頃までは、すぐにパソコンに向かうタイプでした。
上司に「あのプランはどうなってる?」と聞かれたら、「今の考えをパワーポイントにまとめてみたので送ります!」といった感じで、思考の途中経過をパソコンできれいなアウトプットにまとめて見せるのがいい、と信じ切っていたのです。

ところが僕が経営企画本部に配属になり、本部長に同じことを言った際、「思考過程でパソコンを使ってはいけない」と、次のように指導されたのです。

「寺澤くん、あの件って今どんな風に考えてる?」
「あ、僕の考えをパワーポイントにまとめてみたんで送りますね!」

「ええ!今の段階でパワーポイントなんか使っちゃだめだよ。思考がそこで止まっちゃうよ。考える時はまず鉛筆でA3の白紙に手書きでまとめなさい。A4じゃなくてA3だよ。思考の広さ・深さは描いているキャンパスの広さに比例するからね」

本部長はその理由を次のように教えてくれました。

「まずパワーポイントの画面自体が狭すぎるし、白紙への手書きと比べたら圧倒的に自由度が低いじゃない。操作に思考が奪われることがもったいないよ。

あと考えている途中でパワーポイントにしちゃったら、清書というか完成品に見えてしまってその先に思考が広がらなくなっちゃうよ。

あと使うのは鉛筆ね。ボールペンだと消せないじゃない。消せないからといって書き込むのをためらってしまうと本末転倒だからね。思考過程なんて間違っていると感じたらいくら消してもいいんだよ。それを物理的に後押しするのが鉛筆だということだね」

こうして本部長の元で仕事をした十数年間、僕は常にA3用紙に手書きで思考をすることが習慣になったのです。

正直、こう言われた当時は、目からウロコでした。社会人は何にでもパソコンを使うべきだという先入観があり、パソコンは紙よりも優れているという思い込みもあったからです。

もちろんはじめは「パソコンと何が違うんだ?」と感じていましたが、自分自身で実践して「本当に手書きの方がよかった!」と思うことを次からお話していきます。

(1)パワーポイントは思考の広がりを止める

僕自身の経験でも、パワーポイントにまとめようとすると、どうしても「思考→操作→描画」となってしまい、思考が毎回分断されると感じます。

たとえば円をひとつ描くにしても、手書きの場合は好きな場所にサッと描くだけですが、パワーポイントなどで円を描こうとすると「操作」が必要になります。その操作や見栄えに気をとられて手間どっているあいだに、思考そのものが収縮してしまうことがあるのです。

また、そうやって頑張って途中段階できれいなパワーポイントを作り上げてしまうと、新しいアイデアを思い付いたときに、「その案を入れるスペースがない」、「その案を入れて再度パワーポイントをキレイにする時間が無い」などの関係で、そこに案を追加するのが嫌になってしまっていました。

こうして思考途中のものがだんだん最終形として扱われるようになっていくわけです。

でも、それって本末転倒なんですよね。

本来は仕事で物事を1から作り上げるときは、あらゆる観点から物事を俯瞰し、色々なアイデアを出しまくってからそれらを検討する必要があるわけです。

しかし思考途中できれいにまとめた結果、その資料に新しいアイデアを書くスペースがない、だから書きたくないなんていうことになったら、何をやっているのかよく分からなくなってしまいます。

ゴールはキレイなパワーポイントを作ることではなく、きちんとあるべき思考をし、考えうる可能性を全て洗い出した後に選択や判断をしていくことなのです。

(2)書いたものを消せることが大事

あとボールペンを使っていて、消せないから書くのをためらってしまうというの気持ちもよく分かります。

僕はノートをキレイに使いたいタイプですから、どうしても「書き損じたら嫌だな」と思ったり、「まだ完全に練られていない案を書いて消す羽目になったら嫌だな」と思ったりしてしまうわけです、

ですが、ボールペンで書き間違えたくないからといってノートに書き込むのをためらっていたらこちらも本末転倒です。

思考の見える化のためにはとにかく書き出すことが一番ですし、それが間違っていると感じたら何度でも書き直していいわけです。ですから、鉛筆と消しゴムを用意して、思う存分好きなように頭の中で考えていることを紙に書き出してみてください。A3用紙に手書きで「考えること」はきっと、あなたのキャリアでも大きな強みになるはずです。

(3)いきなりパワーポイントを触らない

こう考えると、よく見かける「パワーポイントを開いて白紙に向かって案が出なくてフリーズしてる人」もツールの使い方を間違えていると感じます。

パワーポイントはあくまでも考え切った案を誰かにプレゼンするために要点だけをまとめて伝えやすくするツールです。ですからいきなりパワーポイントを開くのではなく、その前段階で思考を練るフェーズでは、手書きで考えるべきなのです。

そして思考がまとまりきった段階で、次はその思考のどこをどの順番で話したらいいかをまた手書きで考えること。それらが全て終わった段階で、ようやくパワーポイントを開くのが正しい順番なんだなと感じています。

つまり、パソコンはアイデアを生み出すツールではなく、「アイデアをきれいに清書するためのもの」なのです。

まとめ

こうしてA3用紙に手書きをするようになってから、僕の考え方は大きく変わりました。もちろんあれから20年以上たった今でも次の写真のように、僕の思考はまず、A3に鉛筆で手書きからスタートしています。

まわりの人にもA3手書きをすすめていますが、一度手書きで物を考えるようになった人たちはみんな、「もういきなりパソコンに向かうなんて考えられない!」と口を揃えて言うほど、アウトプットの質も量もはっきり大きく変わっています。

ぜひ皆様も一度、騙されたと思ってA3ノートに手書きでアイデアを考えてみてください。もう戻れなくなるかもしれませんよ。

参考

40歳でGAFAの部長に転職した僕が20代で学んだ思考法」では、こうした仕事に関する思考法をまだまだたくさん紹介しています。ぜひお手に取ってみてください!

#仕事のポリシー

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寺澤伸洋@FIREしたビジネス書作家
最後まで読んでくださって、ありがとうございました! これからも楽しみながら書き続けていきます!