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スピード偏重の時代だからこそ、「ガマン」できる人が強い

仕事においては、「スピード」はいうまでもなく重要です。そして特に近年、変化が早くなった社会のトレンドに対応するため、「スピード至上主義」はますます苛烈になっているようにも見えます。

しかし、ここで大きな問題が発生します。あまりにもこのスピード至上主義が行きすぎた結果、「忍耐力」が低下してしまった人、そしてそのような組織が増えてしまったということです。これは、社会全体にもいえることだと思います。

とにかくみんな、「じっくりガマン」することができなくなってしまった。これが今の時代です。


あまりにスピードという価値ばかりが偏重されてしまうと、ときには「ガマンすること」自体が悪だと見なされてしまうようなケースもあります。じっと耐えることはある種の美徳だったはずですが、スピード社会においては「動きが鈍い」「判断が遅い」と、負のレッテルを貼られてしまいがちです。

しかし、「早さ」という価値だけに極端に振れてしまうと、仕事や個人の成長についてマイナスの影響を及ぼすこともあります。スピードをあまりにも重視しすぎる姿勢は、変化が早く不確実性の高い環境では、良い結果につながらないこともあるのです。

パンデミックによるロックダウン期間中に行なわれた米国の調査では、リーダーがもっと「忍耐強く」仕事やマネジメントに取り組めば、メンバーの創造力、生産性、そしてチームワークが高まることが明らかになりました。これは、とても興味深い調査結果です。


そもそも、優れたリーダーシップを発揮するには、忍耐力は必須といえるスキルのはずです。不確実性の高い「危機の時代」においては、特にそうだといえるでしょう。

プロジェクトが壁にぶつかったときにリーダーが冷静さを保てなければ、チームメンバーは安心して仕事をすることができません。リーダーとして「早さ」だけを意識して焦り、右往左往したり方針変更を繰り返したりすると、いずれチームは崩壊してしまうでしょう。

リーダーは、チームメンバーがストレスにさらされていると感じた場合、一緒になって苛立ち焦るのではなく、 冷静な観点でメンバーの精神的なサポートをしなければならないはずです。この場合、さらなるスピードを求めるよりも、じっと耐える力、ガマンできる力こそが重要です。


ある課題が発生したとして、それに対して何か新しい策を講じたとき、十分な結果が出るまでに長い時間がかかることがあります。しかし、一定の結果を待つための忍耐力がない、あるいはガマンの仕方がわからないという人が増えてきています。

いつも「すぐに効果の見える」解決策ばかりを求めてしまうため、本格的な施策を講じて抜本的に改善するという基本的なプロセスを待てなくなってしまっているのです。

そして、とにかく何でも「早ければ早いほど良い」と評価されるようなITやスタートアップの一部の企業では、この傾向にますます拍車がかかっているようです。早さだけを求めるあまり、組織全体にムダが生じ、メンバーも疲弊し、事業が足元から崩壊してしまう例も少なくありません。


では、忍耐力を備えるにはいったいどうしたらいいのでしょうか?

まずは、「忍耐力が最も必要な状況」をあらかじめ把握しておくことが大切です。そうすることにより、なにか問題が起きそうだとわかれば、 いつもよりも、意識して冷静さを保つ努力ができるはずです。

スピードに対する姿勢を変えてみる

まずは、「じっくりと取り組めば仕事は順調に進む。順調に進めば、仕事は早く終わる」 という基本的で大切な考え方を、あらためて意識してみることが大切でしょう。

特に迅速さを求められるミッションにおいては、逆説的にみえますが、準備や段取りをきっちりとこなし、手順を守り、確実に進めていくことが全体を早く終わらせることにつながることが往々にしてあります。

慌てずに確実に個々のタスクを進めれば、ミスや手戻りが減り、結果的に仕事は早く終わるということです。これは、多くの人に経験があるのではないでしょうか。急がば回れ、というのは本当に貴重な昔からの教訓だと思います。

いくら「見た目のスピード」だけを上げてもダメで、「実質的な成果の達成」を早める意識が重要だといつも考えています。

短期的な成果にしか注意が向けられない組織では、往々にして「いかに打ち手の数とスピードを追っているか」だけを評価されてしまいます。そのようなKPI設定がされ、現場のメンバーやマネージャーもそういう数字のみを追うようになってしまいます。

そうなると、いきおい1つ1つの仕事は粗くなってしまうでしょう。最終的な成果のクオリティも低くなりますし、手戻りややり直しが増えるために、かえって余計な時間もかかってしまうことになります。


今やっていることのゴールを明確にイメージした上で、「作業」だけを早めるのではなく、「全体の達成」を早めることに注力する。そのような意識を持つことがとても重要なのだと思います。

そしてこれを徹底するには、チームメンバーにも、リーダーにも、大きな忍耐力が必要です。そして経営者こそ、最も強い「忍耐力」を持つことが大切なのではないでしょうか。それが、組織としての信頼醸成、そしてチームワークの要なのですから。


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