スタートアップはなぜ採用基準を下げてしまうのか?
こんにちは、ログラスの布川です。
メディアにもスタートアップ関連の記事が最近増えていますね。良くも悪くも、スタートアップという存在が大きくなってきており、世間から注目を集める存在になりつつあることを感じます。
今回は、マネーフォワードCEO・辻さんの記事を引用して、スタートアップが採用基準を下げるとはどういうことか?について記述します。
想定読者
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スタートアップマネージャー・人事
スタートアップの採用基準はどのように決まるか?
大企業と比較すると、スタートアップの採用基準は独特になることが多いです。人数が少ないことから、特定のミッションに向けて阿吽の呼吸でも理解しあえる状態を作ることがマネジメントコストを引き下げ、本質的な課題解決に向かう土壌を作ることができます。
採用基準の設定には明らかな答えがある訳ではありませんが、私が複数のスタートアップとディスカッションし、様々な組織系の書籍を読む中で整理したことを簡単に記述します。
まずは兎にも角にもミッションの設定が全て
スタートアップの採用基準を作るにあたって、必ずなければならないのがミッションおよびバリューの設定です。
辻さんの記事にも以下のような記述があります。
ミッションとビジネスモデルが採用基準に影響する
非常に極端な例を出してみましょう。例えば、以下のようなミッションを掲げている会社の採用基準をChatGPTと考えてみます。
まずは採用基準を作ってもらえるようにプロンプトを投げてみます。
A社の採用基準が生成されました。「お金をたくさんもうけよう」というミッションを掲げるA社においては、競争心や業績責任意識が強い人材を採用するべきと出てきます。ネゴシエーションが得意で、自己の目標達成を具体的に示すことができる方を採用するべきと出てきています。納得感はありますね。
続いてB社の採用基準が生成されました。「誰もが幸せで、明るい社会を作ろう」という壮大なミッションを掲げる社会貢献意識の高いスタートアップを想定しています。ビジネスモデルがフィンテック系ですので、当然金融知識は求められつつ、倫理的観点や共感性を持つ人材の採用が求められています。社会貢献が前提ですので、利己的ではなく利他的な意識を持っている方を採用するべきという主張になっています。これもいいアウトプットですね。
そして最後にC社の採用基準が生成されました。「月に移住できる人類を生み出す」というイノベーティブなミッションを掲げているスタートアップです。R&Dがメインの企業ですので、高度技術知識は当然のことながら、アカデミックな経験を持つ人間を採用すべきとあります。また、現在の世の中では達成されたことがないような課題を解く必要があるため、革新的なアイディアを創造し、実装できる経験があることや、大規模PJにおけるリーダーシップ経験などが求められています。うーんChatGPT凄いですね笑。
このように、A,B,Cの各社の採用基準は全く違うことが理解いただけると思います。絶対的に正しい採用基準などありません。企業の採用基準はミッションの在り方とビジネスモデルに大きく依存します。スタートアップを運営する方々は、まずはミッションとビジネスモデルに適合した採用基準を設定できているか?を内省すると良いでしょう。
スタートアップの採用基準は、尖らせる必要がある
私が良く引き合いに出す、1994年のインターネット勃興期から2002年までの8年間をかけてシリコンバレーのハイテクスタートアップ企業200社の組織を追跡調査したレポートがあります。
スタートアップにおける採用基準とは、単に高い低いで表すものではなく、何を理由に組織に帰属して欲しいのか?どのように管理・運営されるのか?そのためにどのような採用基準を徹底するべきなのかを常に考える必要があります。
なので、決して特定のスタートアップでご縁がなかったとしても、それは能力の高低だけに依存した結果ではないということを求職者側も理解する必要があり、スタートアップ側も決して候補者の方を自分たちのものさしだけで絶対的に評価するべきではないのです。
あくまで自分たちの組織にあっているかどうか?という説明と判断を心がける必要があります。
スタートアップはなぜ採用基準を下げてしまうのか?
これは1つしかないと思っていて、急成長するにあたって人材が足りなくなること。これが全てだと思っています。
「なんだ・・・そんなの当たり前じゃないか・・・採用基準を下げるなって古事記にも書いてあるよ・・・」
※古事記には書いてません
という声が聞こえてきそうです。外野から見ると採用基準を下げるという当たり前のようにやるべきでない意思決定をスタートアップは何故か繰り返してしまいます。
なぜなのか?数字の議論を少ししてみましょう。
例えば、ログラスは現在正社員70名程度のスタートアップですが、年内には100名を突破し、来年末には200名規模まで到達する計画をしています。
ここからの数字は仮置きですが、
書類選考通過率:40%
初回面談通過率:60%
二次面接通過率:50%
最終面接通過率:70%
内定承諾率:50%
としてみましょう。そうすると、書類→入社の各ファネルに必要なお会いする人数が以下のようになります。
150名を1年間で採用するこのシミュレーションだけでも333名にお会いする必要があり、これとは別にエグゼクティブ候補者の方との時間を作ったり、会食を行ったりすることが日常になっていきます。
1年間って365日しかないんですよ・・・皆さん知ってましたか?笑
というぐらい、急成長スタートアップ経営者がお会いしなくてはならない人数は膨大なのです。
さて、そのような状況になった経営者やマネージャー、人事は何を考えるでしょうか?
CVRを上げたい・・・!!!!!!!!!!!!!!
母集団を広げたい!!!!!!!!!!!!!!!!
こうして失敗する思考モデルが出来上がります。
しかし、スタートアップは採用基準を下げてはいけないのです。
スタートアップは常に理不尽・世界との競争・急成長によるストレスにさらされます。そんな中で、ミッションやカルチャーに適合しない人物がおり、仕事のスタンダードが揃わないということが発生すれば、組織は簡単に崩壊します。
ちなみに、私が尊敬する経営者の1人であるGoodpatch土屋さんのnoteは1,674いいね(2023年6月9日時点)もされている殿堂入り記事です。組織崩壊は事業を停滞させ、経営者の精神を折るもっとも厳しいハードシングスの1つです。
だからこそ、スタートアップは圧倒的な圧力の中でも、採用基準を下げてはなりません。
自戒も込めて。
さあ、良い景気を作ろう。
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