見出し画像

マクドナルドで学んだハイブリッド型の現場主義

日経COMEMOで #現場主義で得られたこと という投稿テーマを目にして、久々に現場主義について思いを巡らせてみました。

まず、僕は「現場主義」へのコンプレックスが強烈にあります。
キャリアの中で「現場を叩き上げてきた経験がない」ということが、どうしても自分には何かが欠けているのではないかという感覚を持ってきました。

今日は、そうした自分の経験を踏まえて、これからの現場主義とはどうあるべきかを考えてゆきたいと思います。


現場主義へのコンプレックスのわけ

新卒で日本マクドナルドに入社したとき、僕はマーケティング部門に配属されました。新卒の本社採用というのを初めて行った年で、その一期生という形で、いわばモルモット的な存在として本社に入りました。

マクドナルドは、根っからの現場主義です。新卒で入社すると、まず店舗に配属され、アシスタントマネージャーを経て、店長を目指します。
店長になって、何店舗かで結果を出すと、店長の上司にあたるエリア統括のポジションになります。(10店舗くらいを統括する一般的にはスーパーバイザーと言われる役割)

本社に異動してくる方は大体、何店舗か経験した店長やスーパーバイザーなので、僕が入社した2005年当時だと、本社のほとんどは現場叩き上げの店長経験者で、年齢的には若くて30代後半、ほとんどが40代〜50代の方々でした。

そこに、現場を知らない22歳がぴょこっと入ったわけです。当然ながら「現場を知らないのに何ができるのか」という雰囲気になる。
周囲の方々がどの程度そう思っていたのかは分かりませんが、僕の意見に対して「現場感覚的にそれはないね」という一言で片付けられてしまうことも実際にありました。

もちろん、当時の僕もだいぶトンチンカンな意見を出してたと思うので、片付けられて当然といえば当然だと、自分でも認識しています。
一方で、「現場では」という言葉には、現場を経験しないと絶対に反論できないという強さがありました。

僕は、高校生の時にマクドナルドでアルバイトはしていたし、内定者期間に半年間店舗研修もして、お店の現場は大好きです。でも、店長までやってないと現場をやり切ったとは言えないという社風でした。

そうしたことから、僕は「現場を知らない」ことによる、何かが欠けている感覚をずっと抱いていました


現場経験を経ずにキャリアを歩む判断

当時のマクドナルドは、2004年に原田泳幸さんがアップルコンピューターの日本社長を退任され日本マクドナルドの代表取締役社長に着任された直後。本部長・執行役員のクラスの半分ほどはグローバルからのエクスパットという体制でした。つまり、組織体制のグローバル化へとシフトしていくタイミングでした。

従来の本社機能は、ファイナンスであれマーケティングであれ、店舗出身者が担っていました。そこに、中途のスペシャリストを採用し始めたのがこの頃で、それから数年かけて本社は、①新卒の店舗出身者、②中途のスペシャリスト、③新卒の本社入社者、というミックスになっていきました。

僕は③に該当していたわけですが、「現場に行かせて欲しい」とお願いすれば、店舗に行って店長やその先の営業責任者になっていく挑戦をさせてもらうことは可能だったと思います。
現に当時の営業本部長や人事部長からそういう話をもらうことは何度かありましたし、実際に自ら現場に異動した新卒本社の同期もいました。

ただ僕は、マクドナルドを改革するために入社したんだという強い気持ちがありました(すごい思い上がりですが)。
「現場を知らないからこそ逆にできる、新しい発想があるはずだ、新しい風を吹かせるために入社したんだ」という気持ちがどうしてもあったんです。

きっと現場に行く方が仕事はしやすくなります。
「現場の感覚では〜」という最強の言葉が使えるからです。

けどだからこそ、逆に現場に行かずにこのまま本社でできるところまで挑戦してみたいと思いました。
中途のスペシャリストからも、現場経験者からも吸収できれば、本社のマーケティングスタッフとして、新しいキャリアの形が作れるのではないか、そう思って、本社に残り続けてキャリアを歩みました。


現場の経験なく結果をだす

このようにして、あえて現場経験をしないというチャレンジングな道を自ら選びました。選んだからには、結果を出さないといけません。

そこで考えたことは、とにかく何でも吸収することでした。

僕の経験の特徴は、中途や店舗出身のスタッフよりも、本社スタッフとしての経験が長いことでした。新卒で入社した当初は、ローテーション研修として、1週間ずつ本社の各本部を回って、3ヶ月間研修もさせてもらいました。

だからって何ができるわけでもないのですが、少なくとも本社に知り合いは多いし、教えてくれる先輩たちがたくさんいます。

エクスパットからはグローバルマクドナルドの視点を学び、中途で入ったプロのマーケターからはマーケティングを学び、現場叩き上げの方からはマクドナルドビジネスそのものを学ぶ・・・

そうやって、本社でのゼネラリストというキャリアを歩んで行きました。結果として、マネージャーになり、史上最年少で部長にもしてもらいました。ゼネラリストである面が活きたのかわかりませんが、社長室長の経験もさせてもらいました。

そうした中で成果を出す上で常に意識したことは、「自分にないものを持っている人と組む」ことでした。

自分がリーダーとして何かを推進するときには、必ず店舗経験者を中核メンバーに入れて一緒にプロジェクトを推進しました。そうすれば、自分がコンプレックスとする現場経験を補えると考えたからです。

逆もまた然りです。自分の直の上司にないものを補う役割を買って出るようにしました。
現ファミリーマートCMOの足立光さんが、マクドナルドでCMOを務められていた時は、僕はその片腕のマーケティング部長という立場でした。
足立さんは新しいこと、現場からすればクレイジーなことをどんどん推進していく方だったので、僕は社内の他のスタッフを巻き込んだり、本社の他の部門を調整したりする役割を担いました。

そうした中では、中途のスペシャリストの新しい発想と、現場経験者の視点、双方を巻き込んでハイブリッドに組み合わせることで成果につなげていく感覚がありました。

僕はずっと、「現場経験がない」というコンプレックスを抱えていましたが、こうした補い合う経験を経てから、欠けているものがある自分を認められるようになりました。

欠けているものは補い合えばいいと思えるようになったのです。

自分には足りないものがあるが、足りないものは誰にでもあります。
完璧に全てができる人はいない。だとしたら、異なる経験や強みを持つ人材のミックスでチームを組んで、組織として成果を上げていけば良いのだと思うようになっていきました。


DX時代のハイブリッド型現場主義

こうした経験を踏まえ、DX時代と言われるこれからにおいて、現場主義はどうなってゆくのかを考えていきたいと思います。

日本企業が強みとしてきてた現場主義は、これからもやはり強みとなりうると考えています。日本マクドナルドがV字回復できたのは、間違いなく現場の力だったと思うからです。現場の力って本当にすごい。

一方、現場主義で組織を作るということは、現場を優先した意思決定し、現場主導で改革を推進してゆくということです。
組織の作り方は自ずと、現場を経験した人材を中心にジョブローテーションしながら、現場がわかる人材を各所に配置することになります。そうすれば、現場感覚が組織全体に浸透するからです。つまり、現場主義の組織作りは、メンバーシップ型雇用とセットなんですね。

日本企業では、このメンバーシップ型雇用に基づいて、ジョブローテーションを通じてゼネラリストを育成します。そうやって、その企業内に精通した人材を育成しながら、凝集性の高い組織を作り上げていることが日本企業の強みと言えます。

しかし、これからのDX時代においては、現場を経験した新卒社員を中心とした組織では勝てません。なぜなら、テクノロジーに精通したスペシャリストを活用することが求められるからです。

ジョブ型雇用の流れがそれを証明しています。誰もがマネジメント職を目指すという一律のキャリアから、専門性に特化したスペシャリスト職というキャリアも認められるようになってきました。
そして、そういった人材を外部から中途で採用することで、組織内に新たなケイパビリティを持ち込もうとしています。

では、中途で専門職の人材をたくさん雇って、その道のスペシャリストだけを集めれば強い組織が作れるかというと、必ずしもそうではありません。
スペシャリストは、その道に関する知識や経験は豊富ですが、それ以外は弱かったりします。そして何より、その企業内での適切な動き方を知らないので、専門性はあっても社内をなかなか動かせず、影響力が広がりきらない。

なので、そうした中途の専門家たちが活躍するには、現場経験があり社内事情に詳しい人材が周りに必要です。
社内に精通し現場を把握した人材が、スペシャリストの知識や経験を引き出すことによって、そのポテンシャルを適切に発揮することができるのです。

このように、現場経験者がリーダーシップを発揮しながらも、異なる強みを持つスペシャリストを活かし、化学反応を起こしていく。こうしたハイブリッドな現場主義がこれからの組織に求められてゆくと思います。

僕の所属するデジタル庁も、新卒で官公庁に入ったゼネラリストたる役人が中心の組織です。そうしたメンバーシップ型雇用を前提とした組織に、DXを推進するエキスパートとして民間人材がジョブ型雇用の形態で加わっています。比率はおおよそ役人:民間=2:1くらいです。

道のりはまだまだこれからですが、ハイブリッド型組織の一つの事例として、なんとかして強い組織を作り成果につなげてゆきたいと思っています。

日本の強みである現場主義を貫きながら、スペシャリストを活かしていく。そうやってDXを推進していく組織変革の事例をこれから増やしていきたいですね!!!


(冒頭写真はマクドナルドホームページより)

日本企業がDXを推進するための組織づくりについて👇

デジタル庁での組織づくりについて👇


#日経COMEMO #現場主義で得られたこと

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!