理想はなくても現実はあるという話
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
※ 本記事は日経COMEMO投稿募集企画「#理想の家族」への寄稿です。
「家族」と聞いて何を連想するでしょうか? 実家だったり夫婦だったり、人それぞれ思い浮かべるものがあるでしょう。辞書を引くと、次のように書いてありました。
「夫婦の配偶関係や親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」
ー 広辞苑
血縁、つまり共通のルーツを持つ親族関係というのが、大部分の方の認識なのではないでしょうか。伝統的には家制度を中心とした家父長制をもって家族関係としており、その後大家族から核家族化が進み「世帯」という概念が生まれました。一方で都市部を中心に単独世帯も増加し、東京では4割以上が単独世帯となっています。
では、私個人の認識はどうでしょうか。上記と同じに感じるものの、実際にはグレーゾーンがあるというか、正直よくわからない部分もあるのが事実です。
どういうことかというと、私は4人家族の二男として生まれ、核家族として育ちました。お盆やお正月などは両親の実家にそれぞれ訪問するのですが、母親の実家は違う苗字の家。これは母の旧姓ということで子供心にも理解していました。ところが、父親の実家に言っても苗字が違うわけです。そして毎回父の兄の家に行くのはなぜなのか、と思っていました。後に知ったことですが、私の父はシングルマザーに育てられ、私が生まれた頃には他界していたようなのです。つまり、彼が育った実家はすでになかったということでした。
その後、方向性の違いから村上家は解散することになりました(両親が離婚し、私が家を出たため)。いろいろな経緯があり子供側も父親派と母親派に分かれるような感じになってしまい、私は後者でした。
特に手に職もなくパートで食いつなぐ母親を支援していましたが、指定難病にかかりそれもままならなくなり、私の近くに住んでもらって色々サポートをしながらなんとか生活していました。そんな状況であっても父親派からは目立った支援もなく、せめて顔くらい見せなさいよと思いながら過ごす日々(彼は彼で大変だったのでしょう)。一方で私のパートナーは深い理解をもって、実の家族以上に義母のサポートをしてくれました。
ただ、以前のコラムで触れたこともありますが、私は結婚と同時に婿養子として家を出ており、現代においてもなお家父長制の名残の犠牲になっています(自分の判断なのでもちろん納得はしていますが)。我が国に残る強制的夫婦同姓のおかげで様々な不便を感じる日々ではありますが、なんとかやっております。
また、これまでの人生の中で血縁ではなくても家族同然に感じる親友を得る幸運にも恵まれました。いまこうして俯瞰してみると、改めて「家族とはなんだろう」と思います。
自分の中で「理想の家族」はなんだろうか? そう考えたときに、そもそも「理想」がないことに気づきます。婚姻関係は25年くらい続けても一夜にして壊れるものだということは両親から学びました。紙一枚でこれまで縁もゆかりもなかった家族にジョインする(養子縁組)ことも経験しました。また、父親はその後フィリピン人の方と再婚をして2人の子供を授かったため、私のパートナーと同い年の義母と、息子と同い年の義弟もいます。
いろいろなパターンが出てきましたが、私はここまでの登場人物はすべて「家族」だと思っています。
理想というのは世の中のスタンダードであるとか一般常識であるとか、比較対象があることで生み出されるのかもしれません。もしくは、人から褒められたい・承認されたいといった感情(あのお宅は理想的だよね、とかそういうやつ)から生み出されるのかもしれません。
私にとっては、色々な歴史とイベントがあり、ただそのときに良いだろうと自分で信じた道を模索した結果、いまここに現実が残っています。そして、とても幸せであると感じています。
いまの働き方や暮らし方が定着したのは、昭和の高度成長期だった。大都市に人を集め、同質性を高めたほうが効率的、という時代でもあっただろう。サラリーマンの夫と専業主婦の妻、2人の子。これを「標準」とする考え方は、社会保障制度など社会のさまざまな場面に残る。
実態は大きく変わった。共働き世帯の数は、いまや専業主婦世帯の2倍だ。母子・父子世帯が140万世帯を超えることも、晩婚化、未婚化や離死別により単身世帯が急増することも、当時は想定していなかったろう。画一的、硬直的なシステムを見直すことは、だれにとっても生きやすく、力を発揮しやすい社会につながる。
今後多様化する社会において、自身が「幸せだ」と感じるもの。それが、理想の家族なのではないでしょうか。お読みいただいたみなさまが自分の幸せを感じて健やかに生活を続けられることを祈念してやみません。
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タイトル画像提供:ayudayo / PIXTA(ピクスタ)