恋バナにダイバーシティが足りない。
こんな自由に恋バナをできる場所があったんですね。
今日は本当にありがとうございました。
これは昨年、主催したイベントで参加者のAさんから言われた言葉だ。
そのイベントとは「ポリーラウンジ」
ポリーラウンジとは、現在世界各国で開催されているイベント。「ポリアモリー」と呼ばれる恋愛スタイルに関心がある人たちによる座談会のことだ。
ポリアモリーとは、合意を得た上で複数の人と同時に恋人的な関係を持つ恋愛スタイル。これまでポリアモリーについて書いたシリーズはこちら。
僕はAさんに言われるまで、ポリーラウンジで話される内容を「恋バナ」と捉えたことがなかった。しかしお互いの恋人の話や、恋愛観、性愛について語り合うポリーラウンジは、恋バナ以外の何者でもない。
ではなぜ僕は、それまでポリーラウンジを恋バナと捉えていなかったのか。
そんなことを考えると、いわゆる「恋バナ」に感じていた暗黙のルールや哲学の本質が見えてきた。
今日はそんな話。
■恋バナは共感されることしか話せない
「わかるー!」
と盛り上がったら、それは正解の恋バナだろう。
・恋人の愚痴
・別れるべきか、結婚すべきか
・恋人候補の査定
・失恋話
・フェチ
恋バナのテーマは多岐に渡るが、何でも話していいというわけではない。恋バナのゴールは共感を獲得して盛り上がることだ。
「否定されて場が冷める」
そんなことはあってはならない。
ガチな議論をする場ではないのだ。
当然、賛否両論ある話なんて持ち出せない。
「今の恋人以外に、もう1人付き合う人を増やそうと思う」
例えばそんなポリアモリーが混ざっていたら、その恋バナは大荒れだろう。
ポリアモリーに限らず、人は恋バナで話す内容を取捨選択している。
否定されそうだから言えない。
こうして行き場を失った恋バナがポリーラウンジに流れ着く。
■暗黙のルールを取っ払う「哲学のルール」
僕たちには言論の自由があるが、実際の日常は「何でも話せない空気」で充満している。
先ほどのように、恋バナでは話題を選ぶし、ビジネスでも上司やクライアントの顔色を伺って会話を選ぶ。
話したいことと、実際に話せることには大きな乖離がある。
そこで、どんな話でも安心して話せるようにポリーラウンジではこんなルールを設定している。
ポリーラウンジ 7つのルール
1.何をいってもいい( 空気を読んで言わないという気遣いは不要)
2.人を否定したり茶化したりしない( 発言が恥ずかしくなったり、 わざと注目を浴びるために発言することを防ぐ)
3.発言せず、ただ聞いているだけでもいい
( 話さない自由があってはじめて、何でも話す自由がある)
4.お互いに問いかけることが大切
( 積極的に質問する場であることを確認し、 お互い安心して問いかけられるように)
5.知識ではなく、自分の経験に即して話す
(経験に優劣なし。 だれでも対等に話ができる)
6.話がまとまらなくても、意見が変わってもいい
( 何かを決める場ではないので、問題なし)
7.わからなくなってもいい
(わからなくなったのは、 理解が深まった証拠)
これはポリーラウンジ のオリジナルではなく、東京大学で哲学を教えている梶谷教授の「哲学対話」と呼ばれるワークショップから引用したもの。教授もまた、この日常に自由に話せる場がないことを危惧している。
ポリーラウンジ で特に重要なのは2つ目のルール
2.人を否定したり茶化したりしない
このルールによって、一般的な価値観では否定されがちで恋バナ弱者に陥っていたポリアモリーでも、安心して恋バナを楽しむことができる。
冒頭の発言は、このルールによって生み出された。
■その悩みが、世の中への問いになる
僕と同じくポリーラウンジの幹事である「けっけさん」は、哲学対話のファシリテーターをされている方から教わった際、こんなことを聞いたらしい。
「悩み」を「問い」に昇華させる
僕は直接聞いたわけではないが、この話はとても気に入っていて、ビジネスの現場でも引用することがある。
例えば、先ほど「恋バナ弱者」という表現をしたが、そもそも恋人がいない人もたくさんいるだろう。
しかし世の中は、人にやたら恋人をつくらせたがる。その結果「恋人がいないこと」で悩んでしまう人も多い。
悩みをそのまま抱えていると悪い連鎖が起きる。
そこで「悩み」を「問い」に変換してみる。
「彼氏・彼女がいない」という悩みを「なぜ自分は恋人がいないことをネガティブに捉えるのだろう?」と自分への問いに変えると、思考は本質に近づく。
「自分にとって恋人がいるとは、どういうことなのか?」と課題を本質的に捉え直せば「今、本当に自分に恋人が必要なのだろうか?」という見極めにもなるだろう。
また、自分への問いが片付いたら、視点を社会に移してみるといい。
例えば「恋人作った方がいいよ」と無邪気に言う人に対して「なぜ世の中は恋人がいないことをネガティブに捉えるんですかね?」と返してみる。
普段なら「なんだコイツ、めんどくさいやつだな」と否定されることを恐れて言えないかもしれない。しかし先ほどのルールがある場なら、それも可能になる。
■会話はできても、対話ができない
梶谷教授は哲学を「問い、考え、語り、聞くこと」と表現している。
哲学に限らず当たり前に思えるが、僕たちは意外とできていない。
プライベートでもビジネスでも、会話をしているが、対話はしていないことが多い。共感を得ることや、結論を出すことに捉われ、そのプロセスで多様性を排除し、本質が抜け落ちる。
そんな状況を打破するのが、悩みを問いに変換する思考だ。
まずは自分の悩みを問いとして考え、語りはじめること。そして聞く側は安易に否定せずに聞くこと。そんな当たり前から世の中は少しずつ変わっていく。
その結果、恋バナにも多様性が生まれるかもしれない。
少なくとも僕はこのnoteをそういう思いで書いている。