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世界同時多発で拡がるリモートワーク

英語表記では「リモートワーク」という言葉がよく使われる印象ですが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で「テレワーク」に対する注目が集まり、これからの働き方にとっての大きな潮目の変化になるのでは、と期待を持って見つめています(連日報道される感染者やなくなった方に接するにつけ残念な気持ちになり、今も状況収束に向けて取り組んでいる方には尊敬の念を感じます)。せめて今回の惨事をきっかけに社会のあり方や働き方にとってもよい形の変化が生まれることを願ってます。

今回noteとCOMEMOによるお題「#リモートオフィス」を含む投稿を見ると、本当に数多くの事例やヒントが紹介されていて、ありがたく思います。

さて、現在静岡県浜松市に居住してリモートでのコンサルティング、リサーチなどの活動をしている中で感じるのは、ありがたいことに既にビデオ会議やオンラインでのやり取りを通じた形で業務に取り組むことが出来る点です。地元企業、そして東京や海外の企業や団体とのお仕事を通じ、Zoom、Google Hangout、Whereby、Facebookビデオ通話などを通じてのビデオ会議サービス、Slack、Facebook メッセンジャーなどのチャットサービスを日常的に利用し、Google ドキュメントでの共同作業なども一般的になりつつあります。地方在住者にとって、こうした「リモートワークスタイル」の可能性は特にとても大きいと感じています。

とはいえ、リモートワークは相手がいて初めて成り立つもの。やはり数多くの社員を抱える大企業や官公庁、そして実際に工場でのラインを稼働する製造業界の中にははそもそもリモートワークが適さない業務なども当然含まれているとは思います。全ての人や組織がリモートワークを導入すべき、というわけではなく、適切な人や部署が適切なタイミングや頻度でリモートワークを導入していけばよいのではと感じます。組織内のルール策定、個人のデジタルリテラシー育成の取り組みなど、少しずつでも前向きな変化が訪れ、場所や時間に囚われない働き方が進んでいくことと思います。

人気のブログサービスWordPressの運営会社Automattic社はこうしたリモートワークの先端企業として知られ、同社CEOマット・マレンウェッグ(Matt Mullenweg)氏は「リモート」という言葉にはには「中央から離れた」、「孤立した」イメージがあるとして「分散型の働き方(Distributed  Work)」という、皆が対等である意味を込めた表現を利用しています。Automatic社は2017年6月にサンフランシスコの本社を閉鎖していて、以下の短いTED動画によると(2019年1月公開)、現在世界67カ国で800人の社員が世界中で働いている様子や導入のためのポイントが紹介されています(日本語字幕付)。

実際リモートワークが広がりつつあるのはスタートアップ企業やソフトウェアエンジニアなどのIT系、デザイナー、ライターなどフリーランスの形態で働いている人、というイメージを個人的には思ってましたが、今回のコロナウィルスの影響を受け、大企業や、特定の業種以外にも徐々に拡大していくきっかけにはなるのではないかと感じています。

ちょうど先週『リモートワークの現在:2020年版』というレポートがリモートワーク実践企業としても有名なSNS管理ツールの「Buffer」社と、起業家と投資家のプラットフォームサービスの「AngelList」社によりまとめられています。3,500人以上の、既にリモートワークを実践している人を対象に行われた調査からはそれぞれのよい点、困っている点、実際の働き方の様子が描かれています。今後のキャリアの中で少なくとも少しの期間においてリモートワークを希望しますか?という問いには98%が「イエス」と回答しています。

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海外のスタートアップではリモートワークが進んでいるようで、「リモーティブ(Rimotive)」とう名前のリモートワークに特化した求人サイトも存在しています。昨日公開されたブログによると2014年に設立した同社が毎年集計しているリモートワーク採用スタートアップ企業の数が2,500を超えたそうです(2019年は900社、2018年は600社、2016年は200社)。同社サイトの中にはリモートワーカーにとってのオススメのデバイス&ツール集なども紹介されています。個人的にはビデオチャット時に周囲の騒音を消すことが出来るサービス「krisp」が魅力的でした。

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以下のフィナンシャルタイムズの記事でもこうしたトレンドが中国とアメリカでも同時に進んでいることが紹介されています。ツイッターのCEOであるジャック・ドーシー氏は、サンフランシスコで高騰が止まらない家賃などの生活コストを踏まえ、一極集中がもはや役に立たなくなっていて、グローバルな雇用を求めている、と2月6日の決算発表の際に語っていたことが紹介されています。

中国におけるリモートワーク関連のソフトウェアに対する急速な需要の増加もとても興味深いものがあります。国内ではビデオ会議サービスの「Zoom」やチャットサービスの「Slack」が話題ですが、中国においては以下のような業務効率サービスアプリのダウンロード数が軒並み急上昇している様子が紹介されています。
チャートはアプリ分析サービスサイト「App Annie」社によるもので、ダウンロードされたアプリのランキングの推移を示しています。2月に入り、アリババ社が提供するDingTalkが引き続き首位となっています。

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以下はランキング上位で急速にダウンロード数が増えているサービスです。

DingTalk(アリババが提供するチャット、ビデオ会議、タスク、勤怠管理サービス)*1,000万社&2億人が利用

Wechat Work / Wechat Meeting (テンセント社が提供する業務効率化サービスとZoom のようなビデオ会議サービス)*  250万社&6,000万人が利用
Lark(TikTokで有名なByteDance社が提供している業務効率化サービス)

以下の動画は2014年1月に公開され、ビデオミーティング「あるある」を面白おかしく描いて話題になった動画です。6年間の歳月を経て、進化している部分、そしてまだまだ変わらない部分などもありそうです。1年後、2年後、リモートワークや「分散型の働き方」にどのような変化がもたらされているか、とても興味があります。

追記  2/17 14:45 
*リモートワーカー向けのツールまとめサイト『Remote Tools』を追記します。チャット、時間管理、ファイル共有、生産性向上など、数多くのカテゴリ別に紹介されています。

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Photo by Bench Accounting on Unsplash


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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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