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コンテナを勉強すると、デジタル・トランスフォーメーションに近づく

経済の復活と共に、話題になるコンテナ不足

 コロナ禍で、経済活動が停滞した後に起きたのは、コンテナ不足です。コンテナとは、皆さんもご存じの大型貨物船に積み込まれる「箱」のことです。

 経済が急速に回復し始めたら、今度は海上輸送の需要が増えて、世界中のコンテナという「箱」が不足したのです。

 今もなお、その混乱は続いています。そして、多くの皆さんは、「コンテナ」の話は自分に全く無関係と思っているかもしれません。しかし、このコンテナの話は、デジタルに大きな影響を与えます。そして、このコンテナが、もし20世紀に生まれなければ、今のデジタル・トランスフォーメーションのきっかけは、なかったのかもしれません。

「コンテナ物語」は、すべてのデジタル技術者に読んでほしい本

 皆さんは、「コンテナ物語」という本を読んだことがあるだろうか。私は、この「コンテナ物語」を10年ほど前の、マーケティングの国際会議で引用されたプレゼンテーションを聞いて、早速会議会場から、オンラインで注文した。日本で帰国して、すぐに「コンテナ物語」を読んだが本当に面白い本でした。

 「コンテナ物語」の本の帯には、ビル・ゲイツ氏が「コンテナが世界を変えていく物語は実に魅力的」と推薦の言葉を書いている。なぜ、マイクロソフトの共同創業者である、ビル・ゲイツ氏が、このような言葉を残したかといえば、実は現在のコンピューター・プログラミンングにも、このコンテナという「箱」の概念が実装されているからです。

 皆さんは、海上輸送にコンテナが使われていなった時代を想像できるでしょうか。実はこのコンテナは、とても新しい「モノ」で、1956年生まれです。それまでは、海上輸送の多くが、不定形な輸送物を、船の荷室に積み込み、隙間の空いている荷室であっても目的地に輸送し、目的地では人の手で、不定形の荷物を下ろしていました。

 これでは、船の輸送効率が悪いだけでなく、実は船への荷上げ・荷下ろしの効率が悪いのです。同じ1トンの物を船から下ろす場合でも、荷物の点数が荷物の種類により大きく異なります。これは、陸での作業人員の手配に大きな影響を与えます。そして船の荷上げ・荷下ろしは、「港」にとっても大きな問題です。荷上げ・荷下ろしの時間が長ければ、次の船が港の近くで待たないといけません。海上輸送に急速に増えた、1950年代に、船の荷上げ・荷下ろしが、海上輸送会社にとっても、港湾運営側にとっても課題になり始めたのです。そこで、アメリカで生まれたのが、この「コンテナ」です。

 荷物の「荷上げ」や「荷下ろし」をコンテナ単位で行う。そして、陸地の輸送もそのコンテナごと行う。これは、本当に海上輸送、いや陸上輸送にも大きな変化をもたらしました。

コンテナは「ユニット」「最小単位」という概念を

 コンテナ輸送が普及した今、海上輸送ではコンテナ単位で輸送の契約を行うことになりました。つまり、海上輸送に、最小単位(ユニット)という概念を作りました。そして、このユニットは、世界標準になりました。

 この単位ができたことで、世界のすべての港の設備がこのコンテナに合わせて作られ、船もこの単位から設計され、陸上のトレーラーもこの単位に合わせられました。

 このコンテナという概念は、デジタルの世界でも数多く使われています。例えば、インターネットなどの通信では、データを「パケット」という小包に分けて、世界中を駆け巡ります。インターネットの通信のユニットは、「パケット」です。これは、まさに「コンテナ」の概念を「通信」の世界に持ち込んだ例です。

 プログラムの世界では、データの固まりを、今でも「コンテナ」という言葉を使って考えることもあります。このように、デジタルの世界では「コンテナ」の概念を、数多く継承しているのです。

あなたの仕事も「ユニット」で考える

 デジタル・トランスフォーメーション(DX)を考えている方も多くいるでしょう。その一つの「ヒント」として、「コンテナ」という概念を理解するのは良いことでしょう。

 自分の仕事を、「ユニット」化してみる。「ユニット」化した仕事で、自分にしかできないこと、他人でもできること、コンピューターに任せられること。このような整理は、自分の業務のデジタル・トランスフォーメーションのヒントになるのでしょう。

 ちなみに、余談ですが、皆さんがお世話になっているコンピューターのデータセンターですら、今はコンテナ化されています。「コンテナ型データセンター」です。

 このように世界標準の「ユニット」を創れば、世の中に大きな波及効果があるのです。私たちは、「ビジネス」の世界で、新たな「ユニット」が創れるか。それが、デジタル・トランスフォーメーションなのかもしれません。

#日経COMEMO #NIKKEI

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本間 充 マーケティングサイエンスラボ所長/アビームコンサルティング顧問
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