ESG投資はブームではない。但しダイベストメントは最後の手段。
ESG投資については、かなり関心が高まっており、先週水曜日にCOP24報告の講演会で「金融・投資の動き」をお話した時にも、高い関心を持っていただきました(写真はその時のモノ)。いろいろとお伝えしたいことがあるので、箇条書きにて。
・ESG投資はブームではありません。ブーム的にもてはやす動きも確かにありますが、投資家と企業の対話のツールとして使いこなしていこうという潮流は確たるものであり、しばらく静観していればなくなる、というものでは無いでしょう。
・但し、まだツールとして不十分な点も多々あります。不十分な点があるからダメ、ということではなく、不十分な点を改善する方向で議論に参画し、ルールメーキングに加わっていくことが必要だと思います。
・手法としては①各業種のESG優良企業へお投資、②ESG指数に基づくポートフォリオのウェイト調整、③投資先企業に対する株主としてのエンゲージメント、④特定ビジネスの投資除外(ダイベストメント)などいくつかありますが、基本的にはパッシブ運用ではインデックス採用、アクティブ運用では個別のリスク回避でしょう。ダイベストメント(石炭などからの投資引上げ)は極端な手段なのでこういう記事に良く書かれるのですが、最終兵器と理解しています。まず財務分析があってその次にリスク回避のためのガバナンスがしっかりしているか、その上で、EやSがどの程度きちんとしているかという順番での評価だと思っています。
・日本のESG投資に関する報道は温暖化の文脈で書かれることが多いのですが、ゴールはSDGsです。気候変動に限った話ではありません。
・ESG投資の目的は機関投資家として受託者責任を適切に果たすために、企業の長期的な成長に影響を与える非財務情報の開示を求めている、と理解されています。別に投資家が「世直しのために」あるいは「政府に成り代わって成敗してくれる」という訳ではありません。
・ではその目的通り、ESG投資は長期的にリターンが良いという結果が出ているのかというとそこは微妙。「長期的な成長」なのでまだ分析が難しいというところはありますが、「拡大する「ESG投資」の課題は何か──気候変動に関する投資家エンゲージメントを巡って」で書いた通り、多くで正の相関関係があるとする論文もあれば、全く関係が無いとする論文もあります。
・ESG投資は基本的にあるべき方向性だと思っていますが、こういうところに、キリスト教的独善性やら、政治的思惑やらが絡むとあまりいい方向に行かないものなのだろうと思います。最近の石炭叩きは中世の魔女狩り的なモノを感じますし、現在EUが進めている各技術の投資適格についてのタクソノミー(分類)などは欧州企業の競争力強化手段とも思えます。(ちなみに欧州委員会は来年2月22日まで、意見募集してますので、日本企業からも是非積極的なコメントを!)
・石炭叩きや天然ガスも含めた化石燃料叩きをしても、結局現代社会の生活が高度にエネルギーに依存していて、経済成長とエネルギー消費がほぼリンクしている状況、加えて、安定して質の高いエネルギーを生む手段として化石燃料以上のものが無い状況を変えられなければ、結局意味は無いと思うのです。
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