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気候変動問題をより理解するためのメディア・情報源

気候変動問題の深刻さが広く認識されるようになり、相次ぐ自然災害などを目の当たりにする中で、今まで以上に個人的に強く興味を抱くようになったテーマとして、脱炭素、カーボンニュートラル、SDGs等が上げられます(以下のチャートは「Googleトレンド」における過去5年分の脱炭素、カーボンニュートラル、地球温暖化、ESGというキーワードのトレンド傾向です)。

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例えば日経新聞でも、脱炭素、カーボンニュートラルに向けた国、地方自治体、企業、金融機関、大企業、スタートアップ等の取り組み、投資、買収、新サービスや方針に関する数多くの報道が每日掲載されています。

一方で、今ひとつ全体像として理解できてないと感じているのが、そもそもの問題点としての気候変動問題、その複雑な背景、そして難解な科学に関する専門用語、スケールが大きすぎて何度目にしても馴染みにくい何十億トン、メガワット・ギガワットなどの単位等です。切り口としても地球温暖化がもたらす影響から、解決策としてのエネルギーの今後、電気自動車などの交通手段、法制度、消費行動の変化、対策として個人がでできること等、全ての事象に関わってくるだけに、どこから手をつけていいのかすら分からなくなりそうです。更には、海外における状況、新しい技術革新も目まぐるしく変化する中で、ついていくのが大変と感じる人も多いのではないでしょうか。

そんな中、今回は私が最近読んでみて理解を深めるのに役立った書籍3点、そして気になる海外メディアの取り組みをご紹介できたらと思い、備忘録的に書いてみることにしました。

気候変動問題を理解するのに参考になった書籍3冊

【1】『脱炭素革命への挑戦 世界の潮流と日本の課題 (SDGs時代の環境問題最前線)』(堅達京子 + NHK 取材班著)

こちらの書籍は気候変動問題をテーマに数多くのドキュメンタリー番組をNHKで制作してきたプロデューサーによる解説、提言がまとめられています。著者の講演動画、そして実際に放映された番組のアーカイブ動画を観ながら読むことで立体的に、分かりやすく理解することができます。

【2】『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』(ビル・ゲイツ著)

ビル・ゲイツ氏といえばゲイツ財団を通じて慈善活動には以前から取り組んできているイメージがあったのですが、意外に思ったのはゲイツ氏ですら2006年頃に本格的に気候変動問題の重要性に気づくまでに時間を必要とし、その後学びを深め、2015年に「ブレークスルー ・エナジー」を設立して持続可能なエネルギー分野のイノベーション促進、投資活動に取り組んでいる点です。本書を通じ、そうした学びで得られた知見を知ることができます。ゲイツ氏らしく、テクノロジーのイノベーションによる問題解決の道筋、提言が数多く紹介されてます。

【3】EV (高嶋哲夫著)

著者の高嶋哲夫氏は2014年出版され、その後コロナ禍で改めて話題になった小説『首都感染』の著者で、今回は日本の自動車業界が世界的な電気自動車(EV)への移行にどのように対応していくかを描いた近未来予測的な小説です。エンジン車、そしてハイブリッド車からEVへの移行をするには部品メーカー、販売店、ガソリンスタンド等多くの人に大きな影響を及ぼすことであり、その中でどのようなことが大事かを考えるきっかけになりそうな一冊です。

海外で増えつつある気候変動に特化したメディアの立ち上げ、コラボレーション事例

【1】Covering Climate Now(気候変動を今)
2015年9月に「ザ・ネイション」と「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」の2人のジャーナリストが中心となって始めたこのプロジェクトは、各媒体が名前を連ねることで、世界中の多様な気候変動問題関連の報道を可視化させよう、という取り組みです。ガーディアン、ブルームバーグ、バズフィードニュース、BBC、NHK、朝日新聞等、現在は57カ国、460以上のメディアパートナーが参加しています。ウェブには参加メディアのリストや情報源としての気候変動問題に特化したメディアのリスト、気候変動分野で活躍する若年層のリーダーのリスト等が閲覧出来る他、パートナーメディアからの気候変動関連の記事のフィードも見ることができます。

【2】その他にも注目しているメディアによる気候変動関連のテーマに特化した取り組みは以下のようなものがあります。

- The Guardian [Climate Crisis]
リベラルなスタンスで数多くの気候変動関連の記事が掲載されてます。

- Financial Times [Climate]

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トップメニューの1つに「CLIMATE」の見出しを配置しているところからも積極姿勢が伺えます。最近米国テキサス州ヒューストンに日経新聞と共同で支局を開設しエネルギー分野の報道に力を入れていくこと等、ビジネスの視点からも重要なテーマになりつつあることが分かります。

- Bloomberg Green
2020年1月にスタートした大手金融経済メディアのブルームバーグによる気候変動問題や環境などの「緑の資本主義」に特化したメディアで、金融データ、グラフやチャートを豊富に盛り込んだ記事が数多く掲載されてます。

-Cipher
ビル・ゲイツ氏が立ち上げたBreakthrough Energyによるオウンドメディアとして、9月29日にニュースレターとしてスタートすることが予定されている新しいメディア。立ち上げには AxiosとWall Street Journalで10年以上に渡ってワシントンDCでエネルギーと気候を専門に活躍していたジャーナリスト、エイミー・ハーダーが編集長として就任。「Cipher」はゼロという意味で、年間510億トンもの温室効果ガスが排出されている社会を、2050年までにゼロにするための解決策を見つけることに由来する名前だそうです。

-The Electric (The Information)
テクノロジー分野で実績のあるThe Informationが今年の7月にスタートさせた電気自動車と電池についての専門ニュースレター、購読料が月額200ドル、年間購読で2,000ドルという、専門家向けのニュースレターですが、それだけの需要があることも伺えます。

以上、自分自身まだまだ学習の途上ですが、長期的に重要性が増す分野であり、メディアが果たす役割も重要と感じます。今後も継続的に気候変動分野の動向に注目していきたいと思います。

Photo by Artur Lysyuk on Unsplash

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