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エンタメとしての真価が問われているスポーツ・ビジネス

COVID-19で露呈したスポーツ・ビジネスの脆弱性

COVID-19は、対面でのサービス提供を前提としていたビジネスに大打撃を与ている。飲食や宿泊業のほか、イベントやエンターテイメント産業も苦しい状況に立たされている。そして、その中の1つがスポーツ・ビジネスだ。

テレビなどの放映権収入を得ることができるスポーツは、無観客試合という選択肢をとることもあるが、観客収入という大きな柱を失した状態である。

また、開催中止による経済的損失に耐え切れず、背に腹を変えられずに強行開催という決断を迫られた競技もある。

残念ながら、これらの対策は苦し紛れの対処療法でしかなく、この状況が長引くと破綻するスポーツ・ビジネスが生まれてくるだろう。しかし、見方を変えると、既存のやり方が封じられた現状は新たなビジネスモデルを生み出す転換期ともいえるのではないだろうか。


現実を超えてきた他のエンタメ産業とどう戦うか?

映画やスポーツ、観劇といった伝統的なエンターテイメント・ビジネスは、コロナ禍の前から事業として厳しい状況に立たされていた。娯楽の多様化と家庭内エンターテイメントの普及が、劇場型エンターテイメントを苦境に立たせている。特に、近年、急速に成長しているのが eスポーツとビデオゲーム産業だ。

eスポーツとテレビゲームは、エンターテイメントとして新たな体験を顧客に提供している。そして、ある分野では現実を超えてきていると言えるだろう。例えば、ドライブ・シミュレーターはエンターテイメントとして、既存のモータースポーツ・ビジネスを完全に凌駕してしまった。F1 や WRC といったモータースポーツ・ビジネスは斜陽産業となりつつあるが、ビデオゲームとしてのモータースポーツは大きな市場を有している。面白いのは、厳しい経営状況が続いているF1だが、ビデオゲームとしては大人気ゲームシリーズであり、毎年新作が出ては月間売上ランキングを賑わせている。

最先端のゲームでは、現実と見まがうほどのリアルな画面でレースやドライブを楽しむことが可能だ。しかも、現実のレースではひたすら同じような景色を走り続ける自動車を見るだけだがゲームでは異なる。レースゲームの固定概念を壊したと言われるUbisoftの『The Crew』は、ゲーム内にアメリカ大陸を再現して、自由にドライブが楽しめるようにしてしまった。それから、地球が電子上で再現されるのではないかという勢いで、現実の地図をドライブできるレースゲームが生み出されている。

また、現実の再現だけではなく、エンターテイメントとしての面白さも追及している。Forza Horizonシリーズでは、電子上で再現されたオーストラリアやイギリスをドライブできるだけではなく、SL機関車やホバークラフト、ジェット戦闘機を相手にレースをするなどハリウッドの大作アクション映画の世界に入り込める。


今まで体感したことのない感動をどうやって与えるか?

かつて、教会でのミサや讃美歌は人々にとって何よりも有難いエンターテイメントだった。しかし、音楽が気軽に楽しめるようになるにつれ、古いスタイルのエンターテイメントは規模を縮小し、そのうち伝統文化という保存容器にしまわれるようになった。

テレビの放映権とスタジアムへの観客収入を軸としていたスポーツ・ビジネスは、賛美歌やクラシック音楽と同じように、新たなエンターテイメントへの移行に伴って、伝統文化という保存容器に入れられる時期に来たのかもしれない。それでは、どのようなビジネス・モデルが次世代のエンターテイメントとなるのだろうか。それはビデオゲームのような姿ではなく、まったく新しい形で生み出されるように思う。そして、その芽は既に出てきている。

Red Bull は、360度カメラやVRを活用した新たな観戦スタイルに挑戦している。時速300キロ超の世界を精密機械のようなドライビングでライバルと競い合う様子を、自分の好きな視点から大迫力の臨場感と共に味わうことが可能だ。

また、キヤノンは自由視点(FR)でスポーツ観戦を楽しむことができるシステムを開発している。スポーツ観戦におけるカメラの制約は急速な勢いで解き放たれようとしている。

スタジアムでの観戦では、拡張現実がまったく新しい臨場感を観客に与えることになるだろう。そして、これらのインフラ整備を5Gの新技術と共に、ソフトバンクが 5G LAB として提供しようとしている。

野球離れやF1離れのように、スポーツのビジネス・モデルの進化は必要性を以前から指摘されてきた。それは、ユーザーにとっては、より良質で豊かなエンターテイメント体験の獲得なって迎え入れられるだろう。この変革の流れを上手くつかむことで、これまでマイナースポーツとして事業化できていなかったスポーツがメジャーとなる可能性もある。

エンターテイメントとして、新たな体験をどのように生み出すことができるのかがスポーツ・ビジネスの新産業を生み出すことになるだろう。

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大分大学経済学部の講師をしています。採用や育成などのタレントマネジメント、地方創生・地方発ベンチャーなどの話題を中心に取り上げていきます。 ※日経電子版キーオピニオンリーダー ※閲覧者数が増えてきましたので、多様な意見を尊重したく、記事へのコメント返信は控えさせていただきます。

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