先進国の金融緩和は新興国市場のラリーを促す
先進国の金融緩和が新興国の資産価格の大きな押し上げ要因となりそうだ。新興国の資産価格は、①海外要因(先進国向け輸出需要および先進国の金利)と②各国個別要因(財政および経常収支動向と政治リスク)の2つの要素を主な動意としている。このうち、①の外的要因として、先進国中銀が金融緩和を再開する様相にあることが、新興国の対ドル為替レート下落リスクを大きく減少させる上、新興国への直接投資と証券投資のフロー流入を促すことが期待される。
Fedはすでに利下げの地均しを開始し、ECBも年内に利下げのみならず資産購入プログラムを再開する見込みだ。ドル金利低下により、新興国の対ドル為替レートが安定することに加え、大抵の場合多くのドル建て対外債務を抱える新興諸国では利払い負担と債務ロールオーバー条件が格段に改善することになるし、経常赤字を補填する上でもドルの需給緩和は好材料とされよう。
対ドル為替レートの安定が定着すれば、このところ成長もインフレも減速傾向にある多くの新興諸国には待ちに待った利下げ機会が到来する。利下げを見越して、現地通貨建ての債券と株式の双方で価格上昇が見込める。こうした為替と資産価格双方の上昇が生じる環境は数年ぶりだ。この意味では金利の絶対水準が高い国ほど長期債利回りの低下余地が大きいため、ブラジル、メキシコ、インドネシア、トルコなどに投資妙味が出てくる。ただし各国におけるロングポジション構築タイミングについては、トルコの外交政策などの波乱要因に留意したい。
先進国の金融緩和というプラス材料を相殺してしまうような新興国市場のリスク要因としては、やはり米中貿易戦争が極度にエスカレートする状況が挙げられる。中国の成長の急減速は、サプライチェーンに組み込まれている国のみならずコモディティ輸出国の経済にも打撃を与えるためだ。中国が安定成長を確保できるかが焦点となろう。