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いつになったら「良い学校を出て大企業に就職」から卒業できるのか?

新卒から海外就職

Z世代、特に女性の中で新卒から海外での就職をする若者が増えているという。欧米での就職は際立ったスキルがないと職を得ることが難しいが、東南アジアや南アジアでは就労ビザもおりやすい。
今は為替の問題もあるが、東南アジア諸国も経済成長が目覚ましく、日本との給与の格差もなくなってきた。企業やポジションによっては、日本よりも高給で働くことだって可能だ。
能力があれば日本企業よりも昇進スピードが早く、東南アジアのグローバル企業や欧米企業のマネジャーに就くことができれば、日本で働く多くの同年代よりも高給取りにもなれる。非常に夢のある話でもある。

新卒から海外の話題は定期的に出てくる

では、新卒から海外で働くことが目新しいことかというと、実はそうでもない。昔から定期的に出てくる話題でもある。実際に大手人材会社は、日本人向けに新卒や未経験から海外で働くことができる求人を扱っている。
試しに、リクルートの海外求人を扱っているRGFのサイトで「新卒」をキーワード検索してみると26件の求人がヒットする。タイが13件、インドネシアが11件、インドが2件だ。提示されている給与も、おおよそ22万円~30万円と従業員数1000人以上の大企業の大卒初任給の平均額である21.3万円と比べても高額だ。
では、なぜ定期的に騒ぎになるかというと、まだまだ日本社会でキャリアの成功パターンとして「偏差値の高い大学に入って、大企業に就職するのが正しいキャリア」という固定観念が根強いためだろう。実際に学生と日々接していても、大多数の学生と両親は「大企業や公務員になって安定したキャリアを歩むことが良いこと」という前提で考えていることが多い。

キャリアを安定させる方法は自分の市場価値を高めること

1990年代のバブル崩壊以降、大企業であっても倒産は起こりうるもので、リストラも珍しいものではなくなっている。公務員も同様に安定したとは言い難い。2020年から50年までに全国1729自治体の4割にあたる744自治体が消滅する可能性があると「人口戦略会議」で警告が出されている。にもかかわらず、驚くほど多くの学生が大企業に就職したり、公務員に採用されたりすることでキャリアの安定につながると考えている。

新卒で特定の組織に入ることで将来が安泰だと考えるのは、海外の多くの国ではみられない傾向だ。基本的に、自分の持つ専門性や経験・技能が評価されて、その価値に見合った仕事に従事する。そのため、新卒から良い条件の仕事を得ようとするならば、学生時代から自分の市場価値を上げる努力をしなくてはならない。これが、学生時代から長期のインターンシップに参加して、職務経験を得るインセンティブになる。

つまり、市場価値の高い専門性や経験・技能を身に着けているのならば、組織に依存しなくてもキャリアとしては安定する。当然、自分の市場価値は所属する組織が保証するものではないため、自己研鑽することが基本だ。そのため、現在の仕事を通して自分の市場価値が上がらないと判断するとキャリアを転換する。

いきなり海外に行っても良いし、いきなり起業しても良い

今週の木曜日、大分で主催している学生起業ゼミナールにて、シリコンバレーでスタートアップ企業を経営している日本人起業家によるオンラインセミナーを開催した。彼とは、私が大学院生だったときからの友人で、出会った当初の彼はまだ10代の学生だった。高校時代から起業を目指していた彼は大企業から内定を貰っていたものの辞退し、大学卒業後、そのまま渡米してシリコンバレーで起業した。新卒から海外就職どころか、新卒から海外起業だ。

キャリアの安定を市場価値として捉えると、大学卒業後の進路は多様だ。アジアで就職するのも良いし、NPOやNGOという選択肢もある。学生からそのまま起業しても構わないし、海外大学院への進学という選択肢もある。私のゼミからも2年連続でドイツの大学院に進学し、今年も1名、欧州の大学院に挑戦している教え子がいる。もちろん、今まで通り、大企業への就職や公務員だって選択肢の1つだ。

大切なことは、自分の市場価値を高めることだ。そして、市場価値を高める方法は多種多様だ。どこに所属するのかは問題ではない。自分の市場価値を高めるために、どこで経験を積むかを考えるのだ。この考え方は、海外では多数派だ。「偏差値の高い大学に入って、大企業に就職するのが正しいキャリア」という固定観念から、いい加減、卒業しよう。


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