アルゼンチンのクレジットリスクは高まる一方か?

8月16日、フィッチがアルゼンチンの外貨建て長期格付けをBからCCCに3段階引き下げた。S&Pは外貨建て長期格付けをBからB-に1段階引き下げ、見通しを弱含みとした。この背景には8月11日に行われた大統領予備選挙結果がある。

大統領予備選挙は野党の中道左派フェルナンデス氏が現職マクリ大統領に圧勝であった。フェルナンデス候補が獲得したのは47.7%、現職マクリ大統領の32.1%に対して、15%超を確保した。大統領選挙は第一回投票が10月27日だが、45%以上(もしくは40%以上で第二位を10%以上離している)の得票者がいなければ、上位二者で、11月24日に決選投票という運び。しかし、今回の結果は、フェルナンデス候補の勝利の確定を予感させるに十分な結果と言える。

フェルナンデス候補は、ポピュリストである。IMFとの合意見直し、経済政策・価格政策・構造改革についてよりポピュリズムを意識して進められることになろう。拡張財政政策や国家による金融・為替市場への介入強化といった政策スタンスは強まる公算が大きい。もとより脆弱だったアルゼンチン経済がポピュリスト政策の復活によってますます成長減速・インフレ高進・財政悪化・対外債務拡大に直面する可能性が出てきた。本来、新政権には、経済および金融市場の安定化を図り、IMFとの再交渉を穏便に解決して対外債務の拡大に歯止めをかけるという、解決すべき重大な課題があるはずなのに、悩ましい。

となると、アルゼンチンペソも含め、リスクプレミアムは上昇を覚悟するしかなかろう。インフレ上昇と為替レート下落のスパイラルにより、外貨建てシェアの大きい対外債務の支払いを困難にするという結果をもたらす懸念は高まっていると見ざるを得ない。


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