
デンマークの対話を通じたミッションづくり
先週から1週間ほどデンマークに滞在しています。
この文章は、デンマークの王立図書館で現地の人に紛れながら書いています。
ブラックダイヤモンドと呼ばれる、とても有名な図書館です。
今回で2度目のデンマーク訪問です。
前回は11月~12月だったので寒かったし、空は暗かったです…
今回は天気に恵まれて非常に快適に過ごしています。

今回は、いくつか教育やデザイン関係のプロジェクトを動かしていただいる方をつないでもらい、話をしてきました。
なぜデンマーク?
自分がデンマークに関心があるのは、変化のつくり方が上手だと思っているからです。
代表的なのが自転車社会への移行です。
自転車に交通インフラを一気に切り替えて、世界一自転車に優しい街を作り上げています。


デンマークが自転車社会に移行した結果は、
1. 自転車利用者は、年間平均で2万トンのCO2排出量を削減
2. 車の代わりに自転車で移動した場合、1キロメートルあたり1ユーロ(1.16米ドル)の健康利益が得られる
など、地球環境にも、人にも優しい街づくりに成功しています。
その結果…
コペンハーゲンはサスティナビリティ先進都市として世界で評価
されています。
サスティナビリティ関係だけではなく、経済・産業の分野でも世界競争力ランキング1位となっています。
となぜこんなに経済性と社会性のバランスが良いのか?がずっと気になっていました。
その裏側について訪問して学んだこと、考えてきたことを書いていきます。
最初のテーマは、対話とミッションづくりです。
よくデンマークは対話の国と言われます。
聞いたことがある方は多いのではないでしょうか?
しかし、デンマークの人たちが
・何のために対話をしているの?
・どのように対話をしているのか?
・自分たちが知っている対話とは何が違うのか?
などは、自分は全くわかっていませんでした。
では実際どうだったのか?
参加型でミッションをつくるデンマーク
滞在中に聞いて面白かった話です。
現地の日本人の方によると、デンマークはプロジェクトの進め方が全然違うと。
デンマークではプロジェクト開始前には、関係者全員が集まって対話をすることからはじまる。教育関係のプロジェクトだと、清掃員の方も入って対話をするのも普通の光景。
お互いの考えていること、時にはプロジェクトに関係無さそうなことも含めて全員が対話をする…
日本人からすると、なぜこんな話まで持ち出すの?
という内容も含めて話す。
この対話の中で、プロジェクトの方向性やそれぞれの考えていることをテーブルに載せているから、全員が納得感をもって前に進める。
プロジェクト開始前に、ミッションを決める対話に時間を使う
デンマークでは、プロジェクトが始まる前に「ミッションを決めるための対話」に多くの時間を使うとのことです。
ミッションが決まっていない、または納得度が低い中でプロジェクトが動きはじめると、プロジェクト開始後に不必要な問題解決をする仕事が増え非効率になるとのこと。
ポイントは、全員でミッションをつくるから、全員が納得をし、同じ方向をみてプロジェクトを進められるという点です。
デンマークスタイルが正解という話ではないですが、複雑な問題を扱うプロジェクトにおいては、デンマークの対話を重視したスタイルは大切だと考えさせられました。
ChatGPTにも手伝ってもらい、各国ごとのプロジェクトとの向き合い方を整理してみました。

複雑な問題にみんなで向き合うデンマーク
デンマークは、ミッションをつくるプロセス、そもそもの定義が自分がもっているものと違いました。
ミッションづくりとは、わかりやすいゴール設定をすることではなく、私たちが未来に到達しようと努力する意味を共有すること。市民、政策立案者、研究者、起業家、経営者など、現在において未来に対して主体的に行動するためには、未来に対する多角的かつ共感的な視点が必要です。
リーダーが明確に目標を決めることが重要だと思われがちですが、それはデンマークでは違うと。
・ミッションをより良いものにするために、全員が自分の意見を載せる
・ミッションに取り組む意味を全員でつくる
リーダーがわかりやすい目標を掲げているわけではなく、本気で自分たちが向き合いたい未来やその意図を共有しているのが、デンマークが大規模なプロジェクトを成功に導ける大きな要因だと考えています。
ミッションをつくるとは何なのか?
対話をしているだけでは、全員が意見を言って終わりになってしまいますよね。
デンマークには良いミッションの定義があるのか?を追加で調べると、下記のような定義がされていました。
ちゃんと、中長期視点で良いミッションをつくるとは何か?が考えられている点が驚きでした。
1. Setting Direction
方向性を決める(どこに向かうか)
2.Mobilizing Ecosystem
全体像を描く(何を誰と一緒に動かすのか)
3.Building capacity
方法を決める(どうやってそこにたどり着くのか)
このミッションを、リーダーが決めて落とし込むではなく、関わる全員が一緒に創り出すプロセス設計がされている点が素晴らしいと感じています。
デンマークデザインセンターには、対話を促すためのツールも用意されています。
このようなフレームワークやツールも対話の道具と捉えられると良いと改めて感じています。
未来のシナリオを描いて対話をするといったことは、ビジネスのプロジェクトでもよく使われているようです。
対話を通じてミッションをつくるために
ここまで、デンマークから学んだ、参加型でミッションをつくる考え方についてを書いてきました。
学んだポイントをまとめます。
1. プロジェクト開始前に対話の場をつくる
2. 参加者全員が自分の意見をテーブルに乗せる
3. リーダーの役割は参加者の意見を引き出し、良いミッションをつくること
この3つは複雑な問題に取り組むプロジェクトでこそ必要だと感じています。
次回は、教育(その中でもクリティカルシンキング)をテーマに書く予定です。
色々な関係者が自分の意見を伝えて、対話ができるのは教育の力が大きいと感じました。デンマークの人は、自分たちの強みは「クリティカルシンキング=批判的に物事を捉えて対話をする力」だと多くの人が言っているのが印象的でした。
次回は、上記のテーマについて書いていきたいと思います。
デンマークからの学びnoteの第一話は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
コペンハーゲンは屋外での執筆も捗ります。
