「レ・ミゼラブル」と人工知能

先週ロンドンで人工知能に関する講演を行った。

その前日に、夜に時間があったので、ロンドン発のミュージカル「レ・ミゼラブル」をみた。この話は、餓死しそうな子供を助けるために、パンを一切れ盗んだ罪で、19年牢屋に入れられた主人公のジャンバルジャンの話である。彼を執拗に追い続けるのが、法を守ることに人生をかけている警察のジャベールである。

正直いって驚いた。これは、今起きている、「人工知能」と「既存ルール」との対立の構図そのものだったからである。

AIは、人間と対立的に捉えられることが多い。これは間違っている。なぜならAIと人との対立などは存在しないからである。すべては人と人との対立である。「AIを作り、活用する人」と、「そうでない従来の人」との対立である。これをより具体的に見ると、前者はAIとデータを使って目的のために状況に応じて柔軟な判断を良いことと思う人である。後者は、ルールを決め、それを守ることをいいことを思う人である。「人工知能」が対立するのは「既存ルール」とそれを守る人なのである。

ジャンバルジャンにとっては、餓死する子供を救うことは、人としてあるべき目的であり、法は、目的を実現する手段でしかない。目的は手段に優先する。ジャベールは法を守ることが絶対である。法を守ることが目的である。一方の、ジャンバルジャンには、ルールという手段を目的化するのは、耐えられないのである。

AIは現代のジャンバルジャンのための武器である。読者の皆さんはジャンバルジャンか、それともジャベールか。杓子定規なルールを守ることを優先する習慣が日本を弱くしている。より柔軟で状況に適応する仕組みに変えるべきだ。即ち、ジャンバルジャンが必要だ。これに、AIは強力な武器になるのである。AIは、ルールを柔軟に変化するものに進化させる。

私の講演では、早速のこの話を入れた。ロンドンの聴衆は、レミゼラブルをよく知っていて、会場がどっと湧いた。

https://seatplan.com/london/les-miserables/?gclid=EAIaIQobChMIx8bX89_b3gIV1gMqCh203gSYEAAYAiAAEgL3Z_D_BwE

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