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ミッションとビジネスのブレを感じた時、ぼくはこう考えた

OSIROは、アーティストやクリエイター、ブランド向けサービスのほか、最近は企業の社内コミュニティ向けソリューションになるなど、サービスの幅が広がっている。今回は、オシロ社のサービス展開とミッションの整合性について、ぼくの考えを綴っていきたい。

「企業向けコミュニティ」はミッションに紐づいているのか?

オシロ社は「日本を芸術文化大国にする」をミッションとして、アーティストやクリエイターの創作活動の継続を支援するためにコミュニティ専用オウンドプラットフォーム「OSIRO」を開発・提供してきた。現在ではアーティストやクリエイターの方々だけでなく、ブランドや企業のコミュニティづくり、社内コミュニケーションの活性化と、サービスを求めるお客さまの幅は徐々に広がってきている。

そんな広がりとともに社外からは「OSIROってアーティストやクリエイター向けのサービスなんじゃないですか?」という質問もいただくし、社内からは「企業向けコミュニティはミッションとつながらないんじゃないか?」という声も上がった

たしかに、企業の社内コミュニティ向けサービスは、一見するとオシロ社のミッションからは外れているように映ることだろう。

実は、ぼく自身も当初は企業の社内向けのサービス提供をまったく考えていなかったのが正直なところだ。

とにかくアーティストやクリエイターさんが活動を継続できるよう、「お金とエール」の両方をいかに持続的に送られる仕組みがつくれるかを考えてきた。その結果として、アーティストやクリエイターとファンが個別につながるのではなく、ファン同士も応援者から「応援団」のように強い絆が育まれるようような「人と人が仲良くなる」仕組みが不可欠だと思ったから生まれたのがOSIROだ。

「日本を芸術文化大国にする」というミッションは、自分の天命でもある。そしてこの天命は、ぼく自身がアーティストとクリエイターの両方を経験し、創作活動の孤独と非創作活動の孤独の両方を味わっているからこそ授かったものだとも思っている。

だからこそ、企業向けのお引き合いは以前からいただいていたものの、ミッションと紐づいていないと思い込んでいたから乗り気になれない自分がいた。お引き合いはいただいているから資料をつくってみようと思っても、最初の1ページ目でフリーズしてしまうような状態だった。

しかし、現在は企業向け社内コミュニティのサービスとしても積極的に展開しているし、なにより自社で7年以上も社内コミュニケーションツールとして日常的に活用している。このような変化は一気に方向転換が起こったわけではなく、いくつかのきっかけがあって徐々に変化していった。

社員がクリエイティブになれるコミュニケーションとは

1つは、ブランド向けのサービス展開を始めた時

ブランドを持つ企業(法人)は広く捉えてクリエイターであるし、実際にクリエイターの方々が数多く働いてもいる。そして、クリエイティブ業界全体を盛り上げることを考えた時、 直接的にファンとつながる新しい収益手段を提供し、コミュニティの力で活動や事業をエンパワーできる仕組みは個人であっても企業であっても必要だと感じた。そのため、ブランド向けのサービス展開は自然に動き出すことができた。

2つめは、元任天堂のデザイナーさんで、現在は日本のデザイン界を面白くされている、前田高志さんとの出会いだ。

前田さんはOSIROのエンドユーザーを体験され、これはいい仕組みだぞと実際にOSIROを使って社内コミュニティを創設し、なんと株主にもなってくださった方だ。

そんな前田さんに言われたのが「この仕組みはクリエイティブ業界の中でも、大企業といわれている企業こそ必要だ」とのことだった。

クリエイティブ業界のトップを行く企業は、社員数が数千名にもなる。その中にはたくさんのクリエイターがいるものの、社員同士の交流はそこまで活発ではないから、組織を横断したクリエイティビティが発揮しきれていない企業もあるという。もっと社員同士が業務上のコミュニケーションだけではなくて、趣味の話やお互いの価値観などが本音で深い部分を理解し合えるようになれば、本来持っているクリエイティビティをより発揮できるようになるんじゃないか。

そんな話をしているうちに、クリエイティブ企業の従業員が、もっとクリエイティブになれる社内コミュニケーションができるOSIROのあり方が、うっすらと思い浮かんできた。

ただ、その時は雑談程度で終わってしまい、実際にお引き合いがあるわけでもなかったから、そのようなアイデアは脳裏に留まったままだった。

しかし、今思い返すとこの一連の話はOSIROのサービスとしてのポテンシャルを示唆しているものだったし、ある意味で予言ともいえるものだった。

企業の組織課題の解決がミッション実現にもつながる

そして、3つめのきっかけは、ある会社の取締役の方とお話しした時に、その会社の取引先企業の悩みを聞いたことだった。

その企業はA社とB社が合併し、社名やロゴ、パーパス、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)もつくり替えて、心機一転のスタートを切れたはずだった。リブランディングとしてはセオリー通りの仕事をしたと思っていたが、経営者には新たな悩みが生まれた。話を聞くと、A社の企業文化とB社の企業文化が違うため、両社がうまく混ざり合わず、社員同士の仲が悪いというのだ。

そもそも企業合併の有無にかかわらず、社内コミュニケーションやエンゲージメントの低下に悩まれている企業の数は年々増加しているという。世代間のギャップやコンプライアンス・ガバナンスの観点から、これまでの積極的な組織づくりや人事施策が取り組みづらいことも課題になっているという。

そんな話を聞いて、OSIROの仕組みを社内コミュニケーションに活用する具体的なアイデアが自然と浮かんできた。

OSIROは共通の価値観、興味関心軸で集まった知らない人同士が「仲良くなる」コミュニティの仕組みを提供している。例えばこれを上記の企業に当てはめれば、A社出身の社員もB社出身の社員も元の所属は違うものの、一人ひとりに価値観や趣味嗜好がある。そのような個人の本質的な興味関心軸、趣味を通じ相互理解がとれるコミュニケーションから始められれば企業文化関係なく「仲良くなる」ことができ、結果業務コミュニケーションを円滑にし、最終的にパーパスやMVVが浸透する土台がつくれるのではないか。

会社は人生の中でも多くの時間を過ごす場所であり、われわれはロボットと仕事をしているわけでもない。ともに働く人がお互いを理解しあえる安心安全の場でない限り、想いは伝播していかない。そして、OSIROは開発開始からブレることなく「人と人が仲良くなる」ことに注力してきた。まさに現在多くの企業が抱える課題の解決に、完全にマッチしているソリューションであることに気づいた。

そんな話をしたところ、リブランディングのパッケージとしてOSIROを組み込んで提案していただけることになった。それ以来ミッションと紐づかないから提供しないという考えはなくなったし、おかげさまで多くの企業に貢献できる可能性が広がった。

そして、実際に動き出してみて、これまでミッションと紐づかないと思っていた企業向けのサービスが、実はミッションと遠まわりにもつながっていることも実感した。

「つながり」によって心の豊かさを

ありがたいことにOSIROの社内向け導入に強い関心を持ってくださる企業の多くが、クリエイティブな業界の方々だった。そんな意味では上述の前田さんのお言葉のように、クリエイティブ業界の発展に貢献できることは、ミッションとも紐づいている。

驚いたのが、クリエイティブ業界以外の業種の方からのご相談を聞いても、実はその企業自体が持つ文化が非常にクリエイティブであり、社歴が長い企業であっても事業としてチャレンジ精神が旺盛で「この世にない『なにか』を創り出したい」という文化が根づいていることだった。そのような企業の文化を再び盛り上げたいというご担当者さんの想いを聞いて、打ち合わせ中に思わず涙しそうになってしまった。

現代は、人間が持つ最も根源的な幸福である「つながり」価値が徐々に高まっている時代ともいえる。そして、つながりがないためにお互いを思いやる気持ちも希薄になり、日々を生きるのに精いっぱいになっている状況もあるだろう。現代のビジネスパーソンの多くが「職場の人間関係」に悩みを持っているというのが、それを如実に物語っている。

「日本を芸術文化大国にする」。オシロ社のミッションのためにも、まずは日本のビジネスパーソンに、コミュニティの持つ力で職場の人間関係の悩みを解消し、心の豊かさを提供していきたい。

そういう意味で、直接的に「芸術文化」ではないにせよ、働く人同士の関係の質が高まり企業文化が醸成されることで、よりクリエイティブなビジネスパーソンや組織が生まれていくことは、オシロのミッション「日本を芸術文化大国にする」の実現に寄与するものだと、今は確信している。

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