Huaweiの新機種と中国でiPhoneの利用が制限されることについて報道やネット民の意見をまとめる
今回は、いろんな点で注目を集めているHuaweiの新機種に関する話題です。なぜ突如発表されたのか、アメリカの制裁をクリアして半導体チップなどは全部中国産だけで完成させたのか、iPhoneの中国での利用が制限されるのか、といった大きな話題が次々と出てくる一方で、日本ではあまり報道されてない状況が続いているようなので、紹介したいと思います。
Huaweiの新機種Mate60 Proが発表されたのは8月29日です。発売当時は日本ではほぼ報道されていませんでしたが、中国ではかなり話題で、たくさんのレビュー動画や解説コンテンツが今でもアップされ続けています。その理由は、性能やデザインもそうですが、半導体などがアメリカに技術封鎖されてからHuaweiで初めての5G新機種であること。そして発売日も注目を集める要因となりました。
ネットでは、Huaweiはもともと9月中旬にApple社とほぼ同じタイミングでこの新機種を発表する予定だったと言われています。ただ、8月29日にアメリカの商務長官であるレモンドさんが中国を訪問中でした。この日にカンファレンスや発売イベント無しでいきなり新商品を販売開始したのは、どう考えてもアメリカさんに睨みを利かせるためだったのではないかと推測されています。
↑アメリカのタイムズスクエアの広告スクリーンに勝手に出稿する人もいて、この新機種に関する愛国心がかなり煽られました。
そして日本を含め世界中の人たちが注目しているのは、この新しい端末は半導体チップやOSも含め”Made in China”なこと。世界中のウォッチャーやメディアが一斉に調査して、とんでもないものを作ってきたなと評価されています。それと同時に、この成果を大きく主張することが難しい理由も興味深い点です。
Mate60 Proに搭載されたプロセッサーチップが本当に中国で作られたものなのか、どこかから流入してきたものではないのか。早速分解して確認する動画を上げる人が続出していて、完全中国産と言われる「麒麟9000sプロセッサー」が搭載されていることが広まっています。
ファーウェイのスマホはご存知のとおり、2019年にトランプ時代のアメリカの制裁の関係で先端半導体を利用することができないハンデがありました。当時は国産チップで同様の性能を出すには10年以上時間がかかるのではないかといった予想がありました。
それをこの短期間に自前で作ってきたことは予想外でした。ただ、そのことをもっと積極的にアピールすれば良いものを、なぜか控えめにしかアピールしていない。当然色々勘ぐられていて、中国ネット民が様々な議論と意見交換をしています。
最も言われているのは、必要以上にアピールすることで他の中国企業に迷惑をかけることを考慮したというもの。制裁を受けてきたHuaweiが自分たちで制裁を回避できることが、Huawei以外の中国の他メーカーにまで制裁が波及する引き金にならないとも限りません。
また、Huaweiに対する米国の制裁がさらに強まるという報道も度々あり、他の部品なども採用できなくなるリスクを抑えたいということ。
さらに、未だに意見がわかれていますが、半導体チップKirin9000Sの製造技術の中に、不正な手段で入手したものを使用している可能性です。TSMCの技術盗用やARM社のライセンス盗用の可能性があるのではないかという点も議論されていて、それが堂々と自分たちで作ったと発表できない理由なのではないかと。裏を返せば、それほど予想外のスピードで実装してきたということ。
これらは、中国の知識経済と言われる分野で、専門家の方々がたくさん意見しながら議論が行われています。そうしたなかで、テスト動画でわかった点も面白い内容があります。それはHuaweiP60の端末の通信速度に5Gと表示されないこと。
本来なら5Gネットワークとなると、携帯の画面に5Gと表示され、5Gの電波がなければ4G表示になるはず。ですが回線スピードのテスト動画では5Gだと思われた場合、特に何も表示されず、4G環境になると、4Gと表示されています。それでも測定するとデータ転送のスピードは、何も表示されないときは明らかに5G相当になっているのです。
これに関しては2つの主張があります。一つは技術的に完全な5Gの基準を満たしていないのではないかという説。Huaweiは販売宣伝でも5G携帯だと明言しておらず、現時点ではスピードは完全に5Gだが技術的にはもしかして4.8や4.9の極めて5Gに近い状況でまだ5G基準に準じていないのではという考察。そしてもう一つの推測は、アメリカが5Gを制裁したいからあえて5Gを主張しないというもの。
そしてもう一つ面白いことは、「完全国産だ!よくこの制裁のなかでこんなハイクオリティの新機種を作った!」とみんなが盛り上がってる中、海外の分解分析結果ではメモリーだけ韓国のハイニックスのものが使われてることが明かされていること。それに対してSKグループが慌てて対応を発表し、一切取引は行っていないと主張していました。
重要なパーツは国産で実現されたのに、なんでメモリーは海外製品を使っている?と疑問を持っているネット民も多いです。中国では长江存储(YMTC)などの中堅メモリーメーカーがあって、制裁されてからもいろいろ努力して踏ん張っています。今はSSDメモリーの価格が3割以下になってるそうです。
↑2020年9月22日、1TBのサムソンのSSDメモリーは1899元。
↑今年の6月あたりのECサイト。中国産の4TBのSSDの値段はすでに1000元を切っている。
国産のメモリーを採用して問題ないのに、Huaweiの新機種があえて海外メーカーのメモリを選んだのはビジネス的な考慮が様々あるのではないかとネット民が議論をしました。
どちらも中国、Huaweiに都合が良すぎのではないかとの見解ですね。
一方、日本でも話題になったのは、一部の記事で「中国政府が公務員や国有企業の従業員にiPhoneの使用を禁止し、iPhone新機種の発売に影響を与えるだろうと」という報道。
友達に聞いた限り、Huaweiが支給されたからiPhoneを使ってないですって。でも未だにiPhoneを使ってる公務員の友達になんでまだiPhoneなの?と聞いたら、Huaweiが支給されるはずだが、未だにもらってないと残念な顔をされました笑。すごく偉い人だとiPhoneがよろしくないとの情報もありましたが、どこまで偉くなれば規制の対象になるのか正直わからないです。
また、中国では使用禁止令でiPhoneを止めるといった意見よりも、「15シリーズがあまりにも期待はずれ、イノベーションのなさでiPhoneをやめる」との書き込みをよく見かけます。これは日本のSNSなんかでも同様のものを目にしますね。
新鮮味がなく、国産携帯がとっくに実現してる機能(例えば複数のページを一気に入れれる長いスクショ、ハイスピード充電、通話録音、複数のWechatの同時セットアップ、中国ではとにかく多い振替休日でのアラームの自動取り消し、自分で設定できるNFC、など)が無いとがっかりする人も多いです。
ただ、現時点では15シリーズはECサイトでの予約が記録的だとも言われていて、このあたりはもう少し様子見が必要そうですね。
ボク個人はというと、先週の日曜日にHuaweiのお店にいってMate 60を試してきました。驚くほど軽いし、確実にコスパの良さが感じられます。ただ今の入手は至難。ECサイトでのスピード勝負に勝てなければ、実店舗での予約は少なくとも3ヶ月待ちになると情報を聞いています。人気すぎて本当に生産が追いついていないのか、ハングリーマーケティングなのか疑惑があります。
とある大型店舗のゲキ混みぶり。かつてアップルストアも以前はこんな風景でしたね。
これはアップルも同様に言われていて、iPhoneの15シリーズに予約が殺到してるのには、今回の出荷台数が少ないとの情報があります。
一体このスマホ競争の行方はどうなるか注目したいです。国産のスマホメーカーが努力して競争することはボクらユーザーに選択肢が広がって素晴らしいことで、ぜひともHuaweiにも頑張ってもらいたいです。この分野は半導体や米中関係など興味がある方が多いと思いますので、また何か進展があったら書きたいと思います。ぜひハートをお願いします、フォローしてお待ち下さい!
(参考資料)