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外国人移民者が牽引する地方再生と住宅市場

 2019年4月には入国管理法が改正になり、日本への就労を目的とした外国人の受け入れが本格的にスタートする。既に、日本では127万人の外国人労働者が“出稼ぎ”を目的として就労しているが、2025年までには、新たに50万人の労働者を受け入れることが計画されている。さらに、改正後のビザ制度では、日本への長期滞在や、家族を呼び寄せた定住も可能になるため、将来的には、日本の労働力(約6,000万人)の1割程度は、外国人の移民によって賄われるのではないか、という見方もされている。

高齢化や人手不足が進行する日本にとって、外国人労働者の流入はデメリットよりもメリットのほうが多く、地域の小売業や飲食店にとっても、新たなインバウンド景気が生まれる期待もある。さらに大きいのは、外国人定住者の住宅需要で、賃貸住宅に加えて、最近では外国人のマイホーム購入者も増えている。この背景には、金融機関が、外国人労働者に対する住宅ローンの融資条件を緩和して、新たな顧客層として取り込もうとし始めていることがある。

これまでは、永住権を持たない外国人に対しては、住宅ローンの審査が通らないケースが大半だったが、日本の会社での勤務年数が長く、子どもの通学などの理由で、日本への定住を決めている外国人に対しては、年収が300~400万円でも融資を行う銀行が増えてきている。その中でも、2014年に、台湾大手の中国信託商業銀行が買収した「東京スター銀行」では、外国人向けの住宅ローンを積極的に展開している。

こうした動きに伴い、外国人労働者が多い地域では、彼らの所得水準に合ったローコスト住宅や中古住宅の購入需要を創出できる可能性がある。住宅購入者の国籍では、中国人とブラジル人が多く、トヨタ系列の製造業が栄えている愛知県では、工場の派遣社員として働くブラジル人が、マイホームを購入するケースが増えている。地方で戸建住宅を購入する外国人は、地域の自治会にも参加して、近隣住民とも良好な関係を築き始めている。これは、賃貸アパートに住む、従来の外国人労働者の属性とは異なる特徴だ。

ブラジルから日本への移民は1970年代から始まり、既に40年以上の歴史がある。元々は1950年代に、日本からブラジルへ渡った日本人の2世、3世が日系人として来日しているケースが多く、在留資格の問題もクリアーになっている。彼らの中から、マイホーム購入者が出始めているという動きは、日本の地域社会に、外国人定住者が溶け込み始めている兆候として注目しておきたい。

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