トランスジェンダー映画に見る、多様性の豊かさ

「働き方改革」ばやりの昨今。耳にするのは「残業撲滅」や「生産性向上」といった言葉だ。たしかに過重労働は根絶すべきだが、本来目指すべき「働きやすい職場づくり」につながっているのかが疑わしい面もある。

「働きやすさ」とは、一人ひとりが仕事を通じて社会の役に立っているという実感があり、また客観的に評価されていること。誰しもが適切な機会を与えられる環境があるということであろう。そのためには「人間は一人ひとり違う」という価値観が共通認識としてあり、それが尊重されていることが重要である。

セバスティアン・レリオ監督の新作「ナチュラルウーマン」(公開中)は、根強い偏見に立ち向かい前向きに生きるヒロインを鮮烈に描きだしている。

http://naturalwoman-movie.com/

ヒロインのマリーナを演じたのは、トランスジェンダーの歌手で俳優のダニエラ・ヴェガ。

ダニエラは「マリーナは尊厳、粘り強さ、反抗心をもち、前に進むと同時に、愛する人を悼む人だ」と語る。「差別された経験、愛した経験、別れた経験は、LGBTに限らず、どんな人にもある。だから多くの人が共感してくれた」とも。 そこにはトランスジェンダーであるダニエラ自身の強い信念も反映している。 「人間は一人ひとり違う。多様性こそが人間の豊かさだ。それをよしとしない人がいるのは確かだが、みなが違うことがわかれば、心の中は自由でいられる」

日本企業は特に管理職以上において男女のダイバーシティですら出遅れている。人口比を考慮すれば意思決定層もそれに近い比率であるほうがより精度の高いものになるであろう。2015年の電通ダイバーシティーラブの調査によると、日本には日本人口の7.6%の同性愛者を含むLGBTがいると結論付けている。これは、左利きやAB型の血液型を持つ人口と同じくらいだ。

誰もが自身の持つ能力を活かして社会に貢献できること。それこそが目指すべき「働き方改革」であろう。

https://style.nikkei.com/article/DGXKZO26469430S8A200C1BE0P00?channel=DF280120166618

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