降水確率100%なのに「傘はいらない」っていうわけ?
例の人口戦略会議が出した消滅可能性自治体のリリースが話題だが、2100年人口8000万人とか現実離れしてる内容である段階でもう取り扱う価値はそもそもない。が、これに対して消滅可能性自治体と名指しされた各都道府県の知事が煽られて不快感を表明している。
そんな中で島根県の丸山知事は以下の通り大層ご立腹である。
「人口減少は市町村や県単位の問題でなく、都市部に人口が集中する日本社会の構造を放置してきたことが引き起こしている現象だ」と述べ、国全体の問題として捉えるべきだと主張されているが、これはその通りだと思う。
他のところでは、同知事は「自治体が人口の取りあいをしても意味はない」とも発言しており、それもまた同意する。
成功した自治体の取り組みを真似すればいいではないか、という話とかよく聞くが、子育て世帯へのバラマキ合戦をやり続けたところで、スーパーの値引き合戦のような不毛な戦いになるだけで全体の出生数は増えないからだ。明石市や流山市のやり方が奏功したからといって全部それをやっても効果はない。
その点では、なかなかおわかりになっているのかな、と思いきや以下のアベプラご出演の動画を見たら全然違ってた。
動画→こちら
知事が途中ひろゆきらにイライラして「日本の人口減少はどうにもならないって人と議論したくない」とか言いだしちゃってんだが、言い方の高圧的なところも問題だけど、そもそも俺から言わせれば「どうにかなる」って言ってる方が事実認識できてないと思うんだよ。
だって絶対に(絶対といっていい)人口は減るから。
何度もいうが、もはや1990年代後半から2000年代頭にかけて第三次ベビーブームが全国的に来なかった時点で、未来永劫絶対に出生数は増えない。絶対に!間違いなく!
何も「ほっとけばいい」と言いたいのではない。人口減少を前提として今のうちから「人口が少なく、歪な人口ピラミッドの中でも50年間は保てる社会の仕組みを作りながら、子どもを持ちたいと希望する若者にはそれをお膳立てしてあげる体制を作ることで、なるべく出生数の減少を穏やかにしていく」ことはやるべきだ。
しかし、「人口減少を前提として」物事を考える事と「できもしない人口増加や出生増を掲げて」意味のない突撃を繰り返すのとで雲泥の差がある。
政治家や政府のやってる少子化対策はインパール作戦なんだよ。
ただでさえ1980年代と比べて出産適齢期の女性の絶対人口は減っている上に、未婚率もあがって、一人以上子を産んだ母親の数は60%減。1985年に100人いた母親が40人にまで減っているんだから(少母化)とてもとても追いつくものではない。加えて、生涯一人も子を産まない生涯無子率も2021年出生動向基本調査では27%に達している。やがて2040年頃にはこれは4割になるだろう。
そういう状況の中で、考えるべきは、無子4割の前提の中で、結婚したいけどできないと思っている不本意未婚の4割の若者に大人たちはどんなお膳立てをしてあげれるかということに真剣に向き合う必要があるだろう。
それは、児童手当いくらあげますとかいう話ではない。
また、東京一極集中を是正したからといって解決される問題でもない。もちろん、忍野村や熊本のTSMCのように若者の魅力的な雇用が創出されて婚姻と出生があがるという効果はあるだろう。しかし、たかがひとつの町や村の出生率がたとえ4.0になったところで全国的には何のブラスにもならない。
どこぞのシンクタンクの某有識者が「地方は若い女性が流出しているのが問題」とか言ってるんだが、別に東京に憧れて上京したっていいじゃない。若者は一定数、都会に出たいのだから。逆に江戸時代の箱根の関所みたいに「出女」を取り締まるのかい?
出ていくったってせいぜい最大でも3割。逆にいえば7割は地元に残るわけだが、地方においてはそうした地元愛ある若者に対する「事実に即した対応」をしてもらいたいものです。地方は東京と違って、金の多寡の問題以上に「相手がいない」という方なのだから。
何も婚活支援しろって話じゃないし、マッチングアプリ業者に丸投げなんてもっての他だが、島根はせっかく縁結びの出雲大社があるのだからいろいろアイデア生まれそうなものだけどね。18-25歳くらいまての若者だけが集って、何か共同で達成する仕掛けが作れたらいいと思うけど。目的を婚活にするんじゃなくて、若者の地元での自信と達成感を得られる祭り(比喩)が必要なんだと思うよ。
可処分所得をあげる税金や社会保険料の話とか経済的に話は国が検討すべきことだというのはその通りだが、ひとつ自治体間の連携も必要ではない?たとえば、島根と鳥取の連携とか。それこそ大坂や広島との連携とか。
どこも男余りではあるけど、最悪島根の女性が大阪や広島の男のところに嫁に行ってもいいんじゃないの?全体で婚姻数をキープし、少子化を少しでも食い止めるってそういうことでしょ?
2010年から10年間で島根の婚姻率は25%減。出生率云々もいいが、婚姻がなければ一人目の子どもは生まれてこない。
婚姻が生じないのは若者がリスクばっかり考えて行動しなくなっているからでもある。かといって自分で行動しろといっても動けない受け身が7割いるんだから、何かしら行動のお膳立てを作ることが必要。
結婚なんかしたくない人に強要しなくていいが、何度もいうが、したいのにできない不本意未婚の4割をなんとかしようよ。そういう人たちには多少のお節介もウェルカムだと思うよ。
「人口減少はどうにもならない」とか言うお前みたいなのがいるから若者が絶望するんじゃないかということを言う奴がいるが、逆だ。人口減少はどうにもならないし、そんなことは今の若者だってわかっている。そして、今生まれてくる子どもは一番人口構造の辛い時期に当たる。だからこそ、そんな次世代のために若者ができる役割を提示し、行動できる場を用意してあげるべきじゃないの?
なのに、行動を制限させるようなことばかり大人は提示している。
まず、大人たちは「人口減少はなんとかなる」などというできもしない大嘘を言うのをやめることからはじめてほしいのである。降水確率100%なのに「傘なんかいらない」といって若者を送り出すのはやめてほしい。
一方で、丸山知事は大学新入生に対する挨拶でこんなことを言っている。
これは実に正しい。大抵の仕事はマルチタスクであり、「あっちをやりながらこっちもやる」能力が求められる。その習得に料理(複数のおかずを作る)は適している。
こういう具体的かつすぐにでも実行可能な行動指針を示せる知事さんなのにね。共感できることも言うけど、こと少子化の話だけは全然話が合わないな。