梅雨が明けて本格的な夏休みシーズンという感じになってきた。今年の夏休みに海外旅行の予定を立てている人も多いのであろう。海外旅行ランキングなるものを、いろいろなところで目にするが、“インド”はそれ程高順位ではない。興味はあるが、水が汚そう、とか、治安が心配、といった懸念がインドへの渡航者をそれ程伸ばしていないのかもしれない。

さておき、投資の際にはインドが逃げ場となりそうだ。現在は主要国中銀の緩和強化観測によって、新興国全般の為替レートと資産価格は支えられている。だが、米中間の貿易戦争がさらに悪化する場合には、どの新興国が打撃を受けるのかを考えておく必要がある。

第一に、関税の追加引上げの報復合戦となる場合、世界的に貿易量が縮小する上、米国向け輸出にまだ依存している中国が、成長を減速させる可能性は大きい。通商上の観点から、輸出依存度の高い国と、特に総輸出に占める中国向け輸出のシェアが大きい国・地域の成長は打撃を受けざるを得ない。先進国向け輸出のハブである中国のサプライチェーンに組込まれているアジア諸国がこれに該当する。中でも、GDPに占める輸出のシェアが大きいベトナムやマレーシア(いずれも対GDP比で80%以上)などは世界的な貿易量縮小から悪影響を受けよう。仮に内需が堅調で貿易依存度が低くても、中国向けのシェアが大きい国も輸出の伸び鈍化による成長減速は避けられない。韓国がそれにあたる。

第二にコモディティ価格の変動を受けた場合、である。中国の消費が低迷することでコモディティ価格も低迷する可能性が出てくる。中国向けコモディティ輸出への依存度が高いブラジル(鉄鉱石と大豆)やチリ(銅)も交易条件悪化に苦しむ可能性があるし、サウジアラビアなどの中東湾岸諸国(石油)も例外ではない。もっとも、南米や中東のコモディティ輸出国の多くは対外債務の対GDP比が低く、ブラジルを筆頭に外貨準備が潤沢であるため、対外的な支払能力に直結するわけではないことがアジアよりは安心感があると言える。よって、米中貿易摩擦が激化する際には、マレーシアなどのリスクプレミアムの増大リスクを見ておきたい。

一方、打たれ強い国はどこか。

他の新興国と比べて、内需が強いため輸出依存度が低く、米国と中国との直接取引が少なく、対外債務が少ないような国が、米中貿易関連のヘッドラインによる悪影響を受け難く、打たれ強い国と言える。その代表格がインドなのである。世界的な金融緩和により、相対的に新興国の通貨は全般に安泰に見えているが、米中貿易による不透明感を念頭に入れるのであれば、インドを逃げ場にしておくことを考えたい。


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