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便利なものに逃げても結局何も生まれない

舘ひろし「マッチングアプリを語る」
彼はマッチングアプリそのものをよく知らなかったらしいが、なかなか名言がちりばめられている。


「出会いに関して便利になっているだけで恋に関しての便利ではない」

結局、マッチングアプリなんてものは、人間のショーケース化であって、言葉を選ばずにいえば、江戸時代の吉原遊郭の「張り見世」のようなもの。

「張り見世」とは、遊女屋の道路に面した格子つきの部屋(見世)に,遊女が並んで客を待つこと。客は格子の間から眺めて、格子をはさんで会話を交わし好みの遊女を選んだ。

ちなみに、外国の売春街に現在も残る「飾り窓」は張見世の一種である。

マッチングアプリなど、この見世がスマホのアプリになっただけのものである。

客が選んでいる様を描いた葛飾応為(葛飾北斎の娘)の浮世絵があるが、当時の浮世絵では革新的な「光と影」を活用して絵である。そして、この「光と影」がこの状態の悲哀も表現していると言える。

「これからの婚活はマッチングアプリが主流」という記事もたくさん見かけるが、大体がそうした記事はアプリ業者が書いている(書かせている)提灯記事だし、マッチングアプリが主流になることはないし、婚活の救世主にもならない。

むしろ、一通り体験した人たちが、今やマッチングアプリからどんどん撤退している。無意味でバカらしいから。

サイバーエージェント傘下で自らも恋活・婚活アプリ事業を手がける「タップル」が、2020年1月に発表していた婚活マッチング市場規模予測では、2022年には841億円、2025年には1060億円にまで伸びるとされていたが、2023年6月の市場規模予測では、2022年は790億円(予測より6%減)、2025年は819億円(予測より23%減)と大幅に下方修正されている。

特に、恋愛弱者男性の場合、マッチングアプリを使用して、課金までしたものの「実際にデートした人数ゼロが3割」という現実を突きつけられ、恋愛相手とマッチングするどころか、使えば使うほど自尊心を削られるだけだと思い知ったのだろう。

恋愛弱者女性も、単に恋愛強者男性のヤリモク目当ての餌食にされるだけであり、やめた方が賢明である。

そのうち、マッチングアプリには、ホストと頂き女子だけが残り、互いに駆け引きすればいいのではないだろうか。

ちなみに、マッチングアプリ業者のこうした現実をメディアは決してありのままには報道しない。なぜなら、マチアプ業者が広告主だからだ。金をくれる相手のことは悪く言えないということ。

問題なのは、一部の自治体が税金使ってマチアプ業者に金を流すようなことを平気でやっていること。こんなものいくら活用したところで地方の婚姻は増えないし、単に業者が潤うだけで、若者(特に、結婚したいけどできない不本意未婚)には何の恩恵もない。

地方の婚姻減は、「若者が都会に流出して出会いがないから」というのはその通りなのだが、だからってマチアプ使えば解決するなどという単純な話ではない。

自治体がマチアプ業者丸投げに逃げるのは、それが便利だからであって、真剣に問題を解決しようとする姿勢ではない。

以下の記事にも書いたが、地方の首長などがよく「若者特に女性の流出を食い止める」とか言ってるが、地方がまずやるべきことは「地元が好きで残った若者たちに何ができるか」の方である。それをいの一番でやらないから若者が出て行ってしまうのである。


少子化問題にテキトーな首長が多い中で、岡山県の伊原木知事はその課題認識もただしく、学校の同窓会に補助金を出すとか他県との合同婚活イベントを実施しようとするなどその手法も評価できる。

こういう会議に御用学者とか招いてないで、是非私を呼んでいただければもっと現実的で有意義な具体策の打ち合わせができると思いますよ。

婚活支援は、まず「地元の若者の祭りづくり」だと思うから。祭りといっても比喩で、伝統的な祭りを作るという話ではないが。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。