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全米で話題の映画の凄いところ

アメリカで今年最も話題の映画と言っても過言ではない、Everything Everywhere All At Onceをやっと観に行きました。

「世界で最も凄い映画」と評価する人の気持ちがよくわかる。 「誰もアジア系の映画なんて見たくない」と揶揄されてきた中で、A24史上最高の収益を記録。ほぼ口コミとリピートで集客できているのも納得な衝撃作。

この映画、何が凄いかというと、セットを必要とするシーンはほとんどコインランドリーとオフィスで完結させ、それ以外はVFXや衣装・メイク・照明、そしてショッキングな場面転換で補っていること。 大手ヒーロー映画のような莫大な予算がなくても、クリエイティブな発想と本質的なテーマが魅力になっている。
小さなVFXチームと比較的低予算でもマーベル級の迫力を生み出す秘訣は?という疑問に関するインタビュー記事等も数多く書かれている。

「トリッピーなマルチバースSF系映画」という一言では到底表せない、全宇宙が詰まったような作品。 オマージュだらけのアクションシーン、ホラー的な緊迫感、泣ける恋愛回想、ほっこり家族団結... さらに監督の移民二世としての葛藤やADHDの症状体験も作品の元になっているのです。

Daniel Kwan監督のインタビューより
「それで、いろいろと調べ始めました。朝の4時くらいまで起きて、それに関するあらゆる本を読んで、ただ泣いて、"ああ、私はADHDなのかもしれない "と気づいたんです。この映画がきっかけで診断され増田。診断を受けてから1年間セラピーに通い、その後精神科医に診てもらった。そして今、薬を服用しています。自分の人生がなぜこれほどまでに困難であったかを理解することは、とても美しく、カタルシスをもたらす体験です。

この映画は、今見ると、明らかにADHDの人が作ったものです。上映後、何人もの人が私のところに来て、"まるであなたが私の脳の中にいるみたい "と言ってくれるのが不思議なくらいです。その中には、あなたのようにADHDの疑いがある人もいれば、最近診断された人もいます。パンデミックの間、多くの人がこの新しいバージョンの人生で苦労してきました。ですから、この映画は、私がこのことに気づいたというカタルシスの表現であると同時に、人々が自分自身の人生においてこのことについて話すための方法にもなり得るという点が気に入っています。」

さらに、この映画はクィアな人や親と世代の差等を感じて葛藤を抱えている人のために作られてると言っても過言ではなく、その側面からも話題になった。
「この作品は、移民である母親と、アメリカのネット世代として育った娘との間の世代間ギャップについての物語として始まりました。そして、アジア系アメリカ人のコミュニティは、クィアの子供が親にカミングアウトすることで生じる緊張感に対して、非常に特殊な対処法を持っていることを知りました。」

「親に理解されない子供」が自分、そして親との関係と向き合い、最終的には「子供に謝罪する親」系の映画は最近トレンドと言ってもいいほどメインストリーム化している。特に移民(有色人種)やLGBTQなど、「アウトサイダー」の物語に共感する若者の台頭によって新たな市場が生まれているのです。

アジア系の俳優が世界レベルの映画界で活躍する道のりを最近作ったCrazy Rich AsiansやParasite、Minariなどに続く「社会現象映画」。日本での公開を楽しみにしていて欲しいです。


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竹田ダニエル
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