小さなアニメイベントでも日本からゲストを招待できる仕組みとは?=ドイツ
11月中旬、南西ドイツの町フライブルクでアニメファン向けイベント「アニメ・フェスティバル・フライブルク」が初開催されました。今回は、日本からゲストとしてマンガ家のみしまひろじさん(「ハイスクールDxD」のコミカライズを担当)をコーディネートさせていただき現地に同行してきました。今回はそんなイベント会場からの「気づき」をお届けします。
会場となったタウンホールは小規模でステージのあるメインホールでも250席程度だったこともあり、イベントはとても賑わっているように見えました。このほかにも、アニメグッズを販売する物販エリア、TVゲーム体験コーナー、フードコートに加え、各種ワークショップとアニメ映画の上映会を兼ねた大会議室が使用されていました。アニメファンなら1日中楽しめる、そんなイベントです。
イベント終了後に主催者に来場者数を聞いたところ、金曜日と土曜日の2日間でのべ1000人だったそうです。
ドイツのアニメファン向けイベントでは大型イベントの参加者がだいたい3万人です。参加者1000人というのはそれらと比べると、はるかに小さなイベントだということが分かると思います。それでも、今回のイベントには日本からマンガ家のみしまひろじさんだけではなく、アニソンの実績もあるシンガーソングライターの遼花(はるか)さんが日本から招待されライブコンサートを実施しました。このほか、フランスからはダンサーチームが、スイスからはコメディアンが招待されステージを賑わせていました。
前段が長くなりました。
実はこのイベント内容はちょっとありえないのです。
ドイツ各地には1000人規模のイベントは15件ほど存在(2018年1月から11月まで)しますが、隣国からのゲスト招待はあったとしても日本からゲストを呼ぶような規模ではないのです。
主催者に理由を聞いてみました。
まとめるとだいたいこんな感じです。
1)ステージ機材などを自前で用意しているので外部企業へのレンタル費を節約できている。
2)日本からゲストを招待するノウハウがある。
3)入場チケットが同規模のイベントよりも高めに設定されている。
まずは1)と2)について。
今回が初開催となったこの小規模イベントですが、主催者の「アニメ文化協会」(本部ベルリン)はドイツ語圏でアニメ文化の普及を推進する団体で、ベルリン・エリアで年に1度来場者数1万人規模のイベントを実施しています。このベルリンのイベントで使用するために調達した機材を使いまわすことでレンタル費用を節約しています。また、ベルリンのイベントは日本からも複数のゲストを招待しており、そういった大きなイベントでのノウハウがこの小さなイベントにも生かされています。一方で、他の1000人規模のイベントだと日本サイドと交渉する人材がいない場合が多いです。
3)について。
チケットの価格は前売りや当日、あとは曜日などにより前後しますが、だいたい1日券が20ユーロほどです。これが同規模の他のイベントだとだいたい10ユーロ前後となります。この入場券収入が増加することで、その一部を日本人ゲスト向けの招待費用に回すことができます。同時に「日本からゲストが来る」というイベントの付加価値により入場券が高くても来場者が確保できる、という好循環を生んでいるというわけです。
割高な入場料でも参加者を集める仕掛けは他にもあります。
それはアニメ映画の上映会です。主催者のアニメ文化協会は、ドイツ語版のアニメを販売する会社から正規に上映ライセンスを取得しており、ドイツのファンたちの間で関心の高い作品の上映を実現しています。「アニメ・フェスティバル・フライブルク」では、「FATE/STAY NIGHT [HEAVEN'S FEEL]」、「劇場版 はいからさんが通る 前編」、「心が叫びたがってるんだ。」などが上映されました。実際に上映会を覗いてみましたが100席ほどの部屋が満員になっていました。
まとめます。
「アニメ・フェスティバル・フライブルク」は入場料を高めに設定することで、プログラムの充実をはかり、1000人規模のイベントでも日本からゲストを招待する仕組みが機能していました。
主催者は同様のイベントを今後も各地で展開したいそうです。一方で、同規模の他のイベントも「アニメ・フェスティバル・フライブルク」の成功に学ぶようなことがあれば、日本からゲストを呼びたいというイベントは今後増えるかもしれません。
ドイツでは、大きなイベントだけでなく、小さなイベントの動向も見逃せなくなりつつあります。
というわけで、今回は大型イベントではなく、日本で取り上げられることが少ないローカルかつ小規模なイベントについての話題でした。何かの参考になれば幸いです。
© sakaikataho
(イベント「アニメ・フェスティバル・フライブルク」。メインホールは2階に立ち見がでるほどの盛況ぶり。写真:Nico Alexander; https://www.instagram.com/kwiesatz/)
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参考:「アニメ・フェスティバル・フライブルク」のHP
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