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日本買いの裏に残る持続的成長性に向けた課題とは

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

東京株式市場では連日の株高となり、バブル崩壊後の高値を更新。実に33年ぶりの高値に湧いています。ウォーレン・バフェット氏率いるファンド「バークシャー・ハザウェイ」による日本買いへの強気発言が契機となったかどうかはわかりませんが、海外勢による積極的な買い増しが目立ちます。

13日の東京株式市場で日経平均株価は大幅に3日続伸し、前日比584円65銭(1.80%)高の3万3018円65銭で引けた。バブル崩壊後の高値を更新し、33年ぶりの高値となった。この日の相場で市場の注目を集めたのがトヨタ自動車株だ。一時上昇率が5.5%を超え、PBR(株価純資産倍率)が1倍を上回った。日本を代表する株式銘柄のPBR1倍乗せは、日本株の潮目が「割安だから買う」から「成長性があるので買う」に変化したことを示唆する。

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PBR1倍割れについては、先日東京証券取引所がPBRの低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するよう要請したことも期待を押し上げる原因となっています。TOPIX(東証株価指数)でPBR1倍割れしている企業は40%以上ですが、米国S&P500種株価指数の採用銘柄では5%にすぎません。つまり企業の収益性または成長性が「市場に評価されていない」ということを示唆しており、先のバフェット氏の強気発言を裏付けています。

もちろん、これらの中には持続的な成長戦略があるものの市場にうまく伝わってないもの(再評価の機運)もあるでしょうし、そうでないものも含まれるでしょう。今後より一層中身が評価されることになると考えています。

投資家が資本コストを意識するのはよく理解できます。一方で働く人から見た場合にはあまり意識することはなく、どちらかというと会計上の利益の方が気になることでしょう。というのも、利益とボーナスが連動していることも多く、昇給の原資となるもの継続的な利益であるからです。従業員と投資家の両方に目を配るには、EVA(経済的付加価値)のような経営の質を踏まえたモノサシを意識する必要があります。

将来の収益を生み出すには、企業にフィットした優秀な人材の確保が最重要課題です。すでに表面化している人材不足は今後より深刻化すると共に、終身雇用からの移行という難題が待ち構えています。現在進行系で起こっているこの「シニア vs 若手」の不平等感は、ますます増加していくと予想しています。

シニアvs若手の不平等感は、相談者の勤務先に限らず、他の会社でも広く見られる日本企業の構造的な課題です。パーソル総合研究所は2021年に「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」を実施しました。「私の会社ではシニア社員が給料をもらいすぎている」とする回答比率は20代30.0%、30代27.6%に上ります。当たり前ですが、年代が高まるほどその比率は下がります。「シニア社員が成果以上に評価されている」と思う社員の年代別比率も、同傾向です。同研究所は一連の調査結果をさらに統計的に分析して、シニア社員が不活性化している職場では若手の離職率が高まることも明らかにしています。

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日本の多くの大企業は、年功序列・終身雇用を引きずっています。無理もありません、いま活躍している多くの管理職の方々は若手のときに割安な給与で会社に貢献し、いまその貸しを返してもらっている状態だからです。退職金も「退職慰労金」と言うように、これまでの功労に報いるものという意味合いが残っています。

先の記事で紹介されている「ラジアーの年功賃金概念図」を引用します。これは米スタンフォード大学教授だったラジアー氏が著書「人事と組織の経済学」で年功賃金の効用を分析したものです。

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若いうちに貸した分を、晩年に返済してもらう。年功賃金とは一種の長期貸借契約なのである、という言説には一定の納得感があるように思えます。しかし、これが成立するための前提は、(1)企業側にモラルハザードがないこと、(2)企業が潰れないこと、であるため実際にはあり得ないのではないかと考えています。結局のところ、丁稚奉公時代から社会に根強く残る家父長制的な文化(御恩と奉公)であると思いますし、転職にまつわる「裏切り」的なネガティブな印象もそれを裏付けているように思えます。

このようなものを変化させていくには、大きな努力と時間が必要でしょう。しかし、労働人口減少は確定した未来です。政府が思い描く「成長と分配の好循環」を実現するには、経済成長による利益創出。そして、それが賃金として適切に労働者に分配されることによる消費喚起という王道以外にありません。国内でも足元ではインフレが続いています。実質賃金を持続的に上昇し得る成長を実現できるのか。やはり鍵は人材にありそうです。


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タイトル画像提供:taa / PIXTA(ピクスタ)

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