新型コロナワクチンに関する副反応について思うこと
新型コロナワクチンが国内で開始されてから半年近くが経過しました。始まったばかりの頃は接種後のアナフィラキシー等、副反応が起こるたびに報道されていましたが、最近では新たな副反応や死亡事例に焦点が当てられている印象です。
私は自院での個別接種の他、近隣の企業などでの職域接種や区の集団接種など異なった接種環境でのワクチン接種を行ってきました。その中でよく相談を受ける内容が以下です。
①薬剤のアナフィラキシーがあるので接種はやめた方が良いと言われた。
②1回目の接種後にアナフィラキシーと言われた2回目はどうするか。
③1回目の接種後に気分が悪くなったので2回目は接種しない方が良いのか。
④1回目の接種後に強い痛みとしびれがあり、現在も持続している。
①を除きいずれも2回目の接種は見送る傾向にあるのかもしれません。そこで私はご相談を受けた方々から詳細な情報を聴取したうえで、しっかりとした経過観察をすることを前提に当院で2回目の接種を行うようにしていますが、すべての方において接種直後はもちろん、その後も副反応の確認をしましたが、全く問題なく経過しています。何故こんなにも違うのでしょうか?
その時の体調が影響していたのかもしれませんが、メディアでは言いずらい私見として「接種者がどのように接種したか」も要因があるのではないかと考えています。これはほとんど取り上げられませんが、新型コロナワクチンが国内で始まった初日に大々的に映像が流れた際に、その病院の医師が接種した手技が「筋肉注射としては違うのではないか?」という識者の意見が相次ぎ、日本プライマリ・ケア連合学会は「新型コロナワクチン より安全な新しい筋注の方法」という動画を作成し2021年3月15日に公開しました。
諸外国ではほぼすべてのワクチンが筋肉注射である一方、日本では多くのワクチンが皮下注射であり、筋肉注射で行うワクチンは、ヒトパピローマウイルス(子宮頸がん)ワクチン、成人用肺炎球菌ワクチン、狂犬病ワクチン、髄膜炎菌ワクチンなどごく一部です。筋肉注射はより深くまで針を刺さなければならず、部位によっては太い血管や神経が存在することから腕の太さや体格によっては刺す深さの調整も必要となります。万が一太い神経を傷つけてしまったら、太い血管の中に薬液が入ってしまったら等、メディアで使用されている接種会場での接種映像を見ていると、接種に慣れているとは思えないほど「本当に大丈夫なのか?」と時に疑問に思うような手技も見られます。
ワクチン接種には打ち手が足りないので、人材を確保するために接種した経験のない職種の人たちも研修をした上で行えるようにしてきた訳ですが、接種後の重篤な副反応の検証に「打ち手が誰だったのか?」「その方のキャリアはどうなのか?」等は議論されているのでしょうか?これは相談を受けた方々に「接種した打ち手」の情報(どのような職種の人にどのように接種されたのか)を伺った時に思い浮かんだ疑問です。しかしながらこの内容は検証することができません。それは問診票には問診した医師の署名のみで医師が接種していない限り「接種者の署名がない」からです。
打ち手だけの問題ではありません。接種会場でのトラブルも相次いで報告されています。「適切な温度管理ができていないことが判明した」「ワクチン原液を希釈せずに接種してしまった」「希釈した液をさらに希釈してしまった」「生理食塩水を注射してしまった」「ワクチンが入っていない注射器で空気を注入してしまった」等々、日常的にワクチン接種業務を行っている我々からしてみれば「あり得ない」ミスばかりです。これらのトラブルからの死亡事例はみられていないようですが、水面下では想像以上の問題が起きているのかもしれません。
新型コロナウイルスに対するm-RNAワクチンは初めて実用化されたワクチンですが、当初から副反応などがクローズアップされすぎてこれまでのワクチン以上に悪者扱いされている印象を受けます。ワクチンが始まったばかりの頃にも同じようなことを書きました。
余談ですが、専門医として20年来ワクチン関連領域を研究し、小児・成人・海外渡航者に10,000回以上のワクチン接種を実践し、論文を報告している私の個人的見解として、注射が「痛い」「痛くない」「副反応の頻度」というのは薬液の成分や接種部位によるところもあるとは思いますが、やはり「接種する人の手技」によるところ(つまり上手・下手)が大きいと思います。ちなみに私はこれまでアナフィラキシーや某教授は良く経験すると仰っていた接種直後の迷走神経反射などを経験したことはありません。新型コロナワクチンでも同様です。
デルタ株の影響からか感染者数の増加に歯止めがかからない状況が続いていますが、できるだけ早くすべての世代にワクチン接種が可能となるように、また可能となった場合にはできるだけ接種をしていただくように改めてお願いしたいところです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?