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NIKKEI LIVE「未来から逆算する」を振り返る(市原編)

8/25に、NIKKEI LIVE「未来から逆算する」が開催。ジャーナリストの400名ものお申し込みを頂き、またご参加者のアンケートも熱量が高く好評だったそうでありがたいです。ご多用の中ご参加頂いたみなさま、ありがとうございました!イベント時間も短く、時間内に言い切れなかったこともたくさんあったので、COMEMOの記事の形で追加コメントを出させていただきます。

ユートピアとディストピアは表裏一体?

もともとこちらのイベント、SINIC理論イベントの記事がきっかけになって開催いただいたそう。SINIC理論では、人類社会は進化志向意欲に従ってこれからも進歩していくことが示されています(それを示したのが、らせん状の進化モデル)。

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その一方で、冒頭の佐々木俊尚さんの「機械の物語」のプレゼンテーションでは、AIがもたらす「因果関係の破壊」についてのお話がありました。
AIは最適なソリューションを人間の専門家よりもはるかに精度高く発見するが、その因果関係は説明してくれず、ただ相関関係だけを提示する。人間は因果関係の存在しない物語を受け止めなければならなくなり、AIのブラックボックス化・黒魔術化が進行する。AIが「こうやりなさい」とやった通りにやればうまくいくが、なぜそうなるのか、という理由はわからないまま。因果関係の存在しないストーリーを我々人類は受け入れないといけない、その事実に耐えられるか……。

同じく技術をバックグラウンドにした未来予測という共通点はありつつ、佐々木さんの言説はより今日の社会状況や諸問題をシビアな目で捉えており、対してSINIC理論は性善説でポジティブな印象を受けました。

ただ、これらは真逆の態度のようにも感じますが、実はSINIC理論のかつてのイベントでも、産総研の江渡浩一郎さんにより「『SINIC理論における2周目の自然社会』というのは、実は人間ではなくAIによる原始社会のことなのではないか?」という少々ダークな仮説が提示されたことも。

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未来に対して、より楽観的にユートピアを思い描く場合も、ディストピア的な描き方をする場合も、本質的には同じ未来の事象をどう解釈するのかという違いであり、実態としては表裏一体なのかも?と思ったりもしました。

従来の人間観は変わるのか?

イベントでは「テクノロジーの進化による人間性への影響」についても言及がありました。
これに対しては、時代により倫理も人間感も上書きされるのが世の常であり、当然これからも変わっていくだろうというのが自分のスタンスです。
年代性別による身体能力の制限から解放され、本当の意味での平等が実現するかもしれないし、
老いや死の概念にもメスが入る、そうなると宗教・信仰・それに派生する様々な価値観も変わらざるを得ない。
生殖に関わるテクノロジーの進化は、恋愛や婚姻のあり方・価値観を変えていくことが予想されます。

そういった価値観や人間観の変化は最初はグロテスクに感じるかもしれませんが、変わってみたら旧世代の人間観が、「なんて古臭くて可能性が限られていて不自由なのか」と感じるようになるかもしれないです。
いまは分断が激化して地獄のような状況に感じますが、この禊を終えた先には既存の勢力でもう不要なものが淘汰され、ゼロベースで今からの社会にふさわしい価値観のものが構築されているかも。

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こちらが、自分が作品をつくる時にいつも考慮している要素群なのですが、

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私はこれまで基本的に「数百年続いてきたものには、続くものなりの理由がある」というスタンスで、伝統から学び、よりそい、その本質から慎重に学びながらアップデートしてきたのですが、時代の変化の流れがより加速してきている今の時代、もっと大幅なアップデートも必要になってくるのかもしれません。

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これまでの伝統が担ってきたものを冷静に分解し、これからの社会のあり方を見据えながら、大規模に改修するような容赦ないアップデートが今後は必要となってくるかもしれない。武者震いしつつ爪研ぎしているのが現在です。

「未来のWi-Fi」のキャッチの仕方(?)

気づけばSINIC理論の進化を無意識に自分も実現しており、SINIC理論では「自律社会においては活動拠点が分散化し、多様なコミュニティが生まれる」と記述されているのですが、実際に自分も東京だけでなく宮城の亘理町に新たな活動拠点を持つことになり、まったく違う新たなコミュニティにも片足をつっこんでいます。

今年2月に開催されたSINIC理論のワークショップで、NYの美大の先生が「アーティストは未来からのWi-Fiをキャッチする力を持つ」、とおっしゃっていたのが強く記憶に残っています。ただその一方で、これはアーティストの専売特許の能力ではなく、誰もが持ちうるものだと私は感じています。

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新たな流れや未来の風に乗っていくためのヒントになるのが、めちゃくちゃざっくり言うと「なんかそっち(新しいやり方)のが面白そう、もうこれまでのあり方に飽きた」という自分の感覚。これに従っていくと自然に進化の風にのっていけるのではないか。

また、前述の江渡浩一郎さんは「未来予測オタク」だそうですが、そのコツとしては未来の気配を感じるテクノロジーやサービスが出てきたら、とにかくまっさきに使い倒してみることをしているそうです。

https://sinic.media/contents/439/
「自分の身体感覚で『これは間違いなく来る』と感じ取れるかどうかが、未来につながるカギだと思います。そのためには、新しいテクノロジーやサービスを感じ尽くすのが大切だと思います。」

日経のメディアで書くにはあまりにも感覚的な話ではありますが、こういった自分の直観に乗っていたり、身体感覚をみがいていくのが未来予測のコツなのでは、という仮説を最後に提案させていただきます。

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市原えつこ(アーティスト)
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