見出し画像

「アクスタ文化」、海外普及の可能性と課題=ドイツ編

「アクスタ」などのグッズを中心とした日本の「推し活」は海外にも広まるのでしょうか?今回はドイツの現状から可能性と課題を考えてみたいと思います。

ドイツ、フランクフルトのグッズ専門チェーン店で見かけた「アクスタ」。正規ライセンス品です。

日本のアクスタと世界のアニメ

まずは状況を整理しましょう。「アクスタ」とは「アクリルスタンド」の略ですが、持ち歩き、「推し」をアピールしたりファン同士が交流するきっかけとなる、言ってみれば「アクスタ文化」が日本では定着しつつあるようです。

日本のニュースでは、今月もテレ東の好調に海外のアニメ関連事業での売り上げが大きく貢献したと報じられるなど、類似の報道をよく見かけます。

筆者は(あえて)まだ読んでませんが、先日も雑誌で特集が組まれ、注目されているようです。

ドイツでアニメグッズを買うとしたら?

ドイツで流通する「アクスタ」をチェックしてみました。冒頭の写真にある『鬼滅の刃』の「アクスタ」は、正規ライセンス品を展開するフランスの企業abysseによるものです。ブランド「ABYstyle」としてドイツでも広く流通しています。ウェブサイトでは、「Acryl(R)」シリーズとして『ドラゴンボール』や『鋼の錬金術師』など有名タイトルの商品が69種類販売されています。(2023年5月末時点)

「ABYstyle」のホームページの様子

また、ソニー傘下のアニメ制作会社アニプレックスと現地のドイツ企業との合弁会社Peppermintも「AKIBA PASS」ブランドで「アクスタ」を公式展開しています。

「AKIBA PASS」のホームページの様子

さて、ドイツではこういったアニメグッズをどこで購入するのでしょうか?

普通に考えると「お店でしょ?」と答えがちですが、ドイツでは事情が異なります。ドイツでは、オンラインかイベントに出店するグッズ業者のブースで買うことが多いのです。
背景には、ドイツの人口分布が挙げられます。「首都=最大人口」と考えがちですが、ドイツは国内に大都市圏が分散しています。しかも、最大の都市圏は、デュッセルドルフとルール地方を合せた地域で、ベルリンではありません。こうした人口の分散化により、グッズ専門店が成立する商圏を確保しにくいという事情があると筆者は考えています。

というのがコロナ以前の筆者の定番の答えだったのですが、、、状況は変わりつつあります。例えば、昨年取材した「Manga Mafia」というグッズ販売会社は、それまでオンライン販売とイベント出店という経営スタイルでしたが、コロナ禍によりイベントが禁止されたことを受けて、実店舗の展開を開始しました。取材時ですでに10店舗にまで拡大していました。最近は個人経営の店舗の開店のニュースも見かけます。

つまり、実店舗を展開できるほど、ドイツのファンは増えてきているという見方もできそうです。

ドイツに交流できるカフェはあるのか?

再び日本の話題に戻ります。5月18日付のライブドアニュース編集部の記事によると、カフェの存在がグッズのあり方を変えたようです。買うだけでなく、見せることにつながり、そうした体験がファン同士の交流を生んでいるそうです。

これをドイツに当てはめてみると、ファンがリアルに集まるカフェといった場の提供は、グッズ専門店と同様に人口の分散により、採算性に課題がありそうです。

一方で、アニメファンが多く集まるイベントに目を向けると、常設プログラムの中にいわゆる「メイドカフェ」があるのをよく見かけます。以下の筆者のツイートは2017年と少し古いですが、デュッセルドルフで開催されるイベント「ドコミ」のメイドカフェは特に規模が大きく毎年大盛況です。


モノの輸出から文化の輸出に

それではまとめに入りましょう。ドイツでは、「アクスタ」の正規品が購入できます。一方で、それを「見せ合う」ことでファン同士の交流を生むようなカフェといった場はイベントに限定されそうです。

「アクスタ文化」は海外にも広まるかもしれません。

そのためには、まず、手軽に持ち歩ける「アクスタ」を中心とした交流の可能性を海外のファンに知ってもらうことが大事でしょう。日本からの情報発信を増やす必要があります。
次に、交流の場を設けることです。アニメファンが多く集まるイベントのメイドカフェなど飲食コーナーを活用すると良いかもしれません。しかし、それだけだとファンが集まる理由がありません。特定のアニメをコンセプトにしたカフェにするなど、工夫が必要でしょう。

そうすることで、グッズというモノの輸出にとどまらない、文化の輸出はもしかしたら可能になるのかもしれません。

皆さんはどう思われますか?


タイトル画像:ドイツ、フランクフルトのモール内にあるグッズ専門店の様子。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?