いつまで数えるのでしょうか?
感染症法5類になってもこういう記事が出てくるのですね。コメントせずにはいられなくなりました。増加しているのはわかりますが、今後も1年に2-3回の増加傾向を繰り返す度にいちいち数えていたら5年後には「第24波?」とでもいうのでしょうか?私的には特別視することがなくなったはずですので「流行の兆し」とでも言うべきではないかと考えるところです。
これまでもエアコンを使用する機会が増加して換気が難しくなる夏に向かう時期には増加傾向であった訳であり、現状はそれほど大きく変化はしていません。しかしながら実際に発熱している患者さんの診療をしていると、法的に留め置かれることがなくなったことで、体調が悪くても仕事を継続していたり、飲食機会を設けたりしている人は増えたような印象がありますし、そのような人に限って検査をしていない、咳をしていてもマスクをしていないこともありますので、水面下では実際よりも多いことは確かだと思います。だからといってそれが本当に大騒ぎする必要のある現象なのでしょうか?
COVIDはオミクロン株に置き換わってから(医療者と一般の方の考える重症度の温度差はあるものの)確実に重症度は下がりました。ワクチンの効果
とも言うべきなのかもしれませんが、未接種の人でも多くは軽症です。報道などではどうしても重症事例が取り挙げられるので、あたかも重症者が増加しているような印象を与えてしまいがちですが、現場ではそのような変化はみられていません。但しこの時期流行する夏かぜの方は多い印象です。
COVIDで入院する患者さんの多くは(すべてではありません)重症というより、高齢者施設に入所している人や在宅診療を受けている人で、急性期を過ぎても食事が摂れない、施設での管理が困難、他の疾患で入院が必要な方々などであり、入院する人を増やさないようにするためにはこのような人たちにうつすことのないように心がけていただくことが求められます。「だからこそワクチン接種を推奨」という識者もおられますが、このような方々はすでに複数回のワクチン接種は済んでおり、最近の報告では3回程度接種が済んでいれば重症化回避も期待できることがわかってきています。「感染を拡げないようにワクチン接種を」と言いますが、発症予防効果はほとんどないこともわかってきています。むしろ接種による突然死する方が散見されるようになり、以前よりメリットが高くなくなったワクチンを接種し続けることには賛同し難いところもあります。
5類移行前までは法制度のもと、できるだけ感染者を見つけ出し、隔離をすることにすべてが注がれたことで指定された医療機関に過度の負担がかかり逼迫という状況が繰り返されました。しかしこのような「ゼロコロナ」を目的とした対策は諸外国での状況をみる限り、COVIDに関しては効率の悪い対策と見受けられ、通常の流行性感染症としての対応が社会機能を維持するためには効果的であることも理解されるようになった印象です。
日本においても現在は定点医療機関以外では届け出る必要がなくなりましたので、感染者を積極的に見つけ出す必要性は低くなり、あえて検査などはしなくても体調不良であればマスクを着用する、複数での飲食機会をもたないなど心がけていただければ十分かと思います。付け加えれば、健康な方が屋外でマスクをしていてもその効果はほとんどなく、これからの暑くなる季節は健康被害を引き起こすリスクが増加すると思われます。検査に関しても「徹底的に感染している人をあぶり出すための感度が高すぎるPCR検査の必要性」は大きな病院や高齢者施設など拡がっては社会的問題となる施設以外ではほぼなくなったと言えるでしょう。が、未だに抗原検査では不十分と訴えている人たちもいるようです。
「XBBによる感染拡大が夏の第9波をつくる可能性は十分にあると警鐘を鳴らす」のは繰り返しての注意喚起であるという理解もできますが、国民の多くがわかっていることを、ようやくCOVID前の日常に戻ってきた状況に拮抗するかのように不安を煽るような同じ文言で繰り返すのは如何なものでしょうか。識者として発言の重さをよく考えていただき「何が変わったのか」「今回は何が問題となっているのか」「具体的にどこで何を注意したら良いのか」をしっかりと説明すべきであり、一方で「このような現状があるので過剰な心配は必要ない」ことも申し添えることがあっても良いと思うのです。様々な議論を重ねた上で5類に移行したわけですから、後戻りをするのではなく前向きで建設的な意見も発して欲しいと思います。少なくとも私は現場からのありのままの情報発信および識者としての効率的な対応を提言してきたいと考えています。著書#新型コロナとの付き合い方も参考にしていただければ幸いです。
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