企業内で本当にDXを推進できる組織体制とは?
「産業界のデジタルトランスフォーメーションをAIと人の協調により実現する」株式会社ABEJAの岡田です。
もうすっかり年末ですね。
多くの企業で、DXの重要性が増しており、スピードをあげて取り組まれている印象です。
昨年に続き、今年も、DXを推進するための社内体制に関する相談案件が増加しました。
多くの企業において、DXの推進過程では、当初想定した以上の時間や専門性、スキルを持った人材の確保が必要になります。導入段階でDX化に集中しなかったことで、結局は中途半端に頓挫してしまうこともあり得るので、特に初動においてはある程度の覚悟が必要になるでしょう。
ただ、私は、安易に縦割り組織に「DX推進部」などを設置することから始めてしまっても、なかなかうまく機能しないですよ、とお伝えするようにしています。実際に、それでうまくいかないケースを多々みてきました。
想像していただきたいのが、数年前、縦割り組織に取り入れられた「ダイバーシティ推進部」です。
縦割り組織に設置された専門部署を拠点に、企業全体の多様性や働き方改革にテコ入れをしようとした結果、各部門それぞれが抱える課題や実態に柔軟に対応することが難しくなり、かえって役割や目標、ロードマップが不明瞭となりました。
不要なセクショナリズムが生じたという声もよく聞きます。
同様、外部から優秀なプロフェッショナルを招致して構築した「DX推進部」を縦割り組織に設置しても、肝心の事業部門が動かない、というケースは珍しい話ではありません。
企業においては、「アイディア」をビジネスにするために具体化させる「プランニング」のプロセスを経て、「実装」のステップに進みます。
該当事業に精通し、社内カルチャーや風土とうまくマージさせながら、リアルな課題を乗り越え、顧客ニーズに応えるアイディアを形にしていくには、他部署であるDX推進担当だけに頼ってもうまくいきません。
特に大企業においては、DX推進部と事業部門が、部署間でうまく連携するのは、なかなか容易ではないようです。
DX推進の成果が短期的には見えてこない施策が多いというのも、専門部署の対応だけではうまく機能しない一因だと考えます。
プロフェッショナルが揃ったDX推進部をつくるよりも、例えばITに精通した知見がなくとも最新のデジタル技術やツールを用いて実業務を推進できる人材を事業部においた組織の方が、ビジネスプロセスの変革に対するアイディアは出やすくなるように見受けられます。
私は、そうした自部門のメンバーの方が、業務や組織に対する深い理解があり、明確なロードマップや目標が作りやすいため、結果に結びつきやすくなるのだろうと考えています。
DXを進めていく上では、新たに必要となる人材や越えなければならない課題は生じます。こうした点も、組織全体で柔軟に捉え、向き合っていくことが大切です。
先述の通り、DX事業においては短期的な成果が期待できない施策も多いので、中長期的な視点で費用対効果を考え、DX化による生産性の向上、売上拡大の見込み、コスト削減効果など、事前に投資対効果をシミュレーションするのが精神衛生上においても良いと思います。
いずれにせよ、DX推進においては、経営陣のコミットメントが必要です。
特に、一般社員に対して、DXは一見、不明瞭にうつるかもしれません。だからこそ、経営陣がDX推進で自社がどこに向かうのか、目標が何かなど明確なビジョンを共有し、全社的に取り組んでいくことが不可欠だと考えます。