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やっぱり気になるカルフォルニア、進歩的新知事による「データ配当金」義務付け提案

今朝の日経電子版のFT翻訳記事『データ規制 米加州が先陣』は新しい視点がいくつも含まれている良記事でした。気になるポイントを4つ、備忘録的にメモしておきたいと思います。

GAFAによるデータ寡占、プライバシー問題に関して議論がワシントンDCや欧州で行われている中、グーグル、フェイスブックが拠点を置くカルフォルニア州において、新しく就任したばかりの知事から持ち出されたのは「データ配当金(data dividend)」というアイディアでした。

データを石油に見立てて、その所有者(個人情報の場合は個々のインターネット利用者)が莫大な利益の一部を受け取るのは当然だろうという考え方で、FBやグーグルに代表されるプラットフォーマーに対し、個人情報を利用する際は「データ配当金」なるものを支払うことを義務づけるという考えです。

4週間前に就任したばかりの新知事の名前はギャビン・ニューサム氏。サンフランシスコ市長、カルフォルニア副知事と着実にキャリアを積む中で、一貫してテクノロジーを活用した行政の効率化、透明化、オープンガバメントなどに注力してきた進歩派としても知られている人物。邦訳もされている著書、『未来政府(Citizenville)』にはその考えが詳しく描かれています。

③データ配当金の概念の一部の土台を提供していると言われているシリコンバレーで活躍する技術者のジャロン・ラニアー氏と経済学者グレン・ワイル氏の名前にも注目です。

ワイル氏は共著「ラジカル・マーケッツ ―― 公正な社会を築くために資本主義と民主主義を刷新する」(未邦訳)で、ネットユーザーに利益を還元する仕組みがどう有効に機能し得るかを詳細に論じていて、現在とても注目されている論客です。ワイル氏が3月22日~24日にデトロイトで主催するカンファレンス、「RadicalxChange」では、現代の社会が抱える貧富の格差、分断、プラットフォーム企業の寡占、ポピュリズムの台頭などについて、イーサリアム創業者のヴィタリク・ブテリン氏やトリスティン・ハリス(Tristan Harris)氏、ZCash創業者ゾッコ・ウィルコックス(Zooko Wilcox)氏など、気鋭の論客が集い、議論を交わすことになっています。

ちょうど今週月曜日に配信されたクリプト系ポッドキャスト『Unchained』にもワイル氏がゲストとして登場していて、ブロックチェーンがもたらす民主主義の可能性に関して語っています。

今回の「データ配当金」の考えを水面下で広めてきたのが、コモン・センス・メディアの最高経営責任者(CEO)、ジム・スタイヤー氏である点も注目です。

スタイヤー氏は米スタンフォード大学の教授であり、市民の権利保護を専門とする弁護士でもあり、弟のトム・スタイヤー氏はヘッジファンドの運営で富を築き、トランプ大統領の弾劾を求める運動に約5000万ドル(約55億円)を寄付したことでも知られる。この法案が成立すれば、やはりコモン・センス・メディアの後ろ盾を得て昨年、カリフォルニア州で成立した同州の個人情報保護法をさらに強化するものになるだろう。

スマホ依存症の問題に警鐘を鳴らし、資金を投じて調査、啓蒙活動を行い、カルフォルニア州において個人情報保護法案も成立させた実績があるという点もとても具体的で説得力があります。

FTの記事の中でワイル氏はデータを資産ではなく「労働の一種」として捉え、権利を守るための労働組合のような「データ組合」の創設を提唱しています。

カリフォルニア州はデータを資産ではなく、「労働の一種」として捉え直そうという議論が活発なところでもある。ワイル氏は先の共著で「労働としてのデータ」という概念に加え、データを提供する個人、すなわち「データ労働者」の権利を守るため、労働組合ならぬ「データ組合」の創設を提唱している。
ワイル氏は「ネット利用者の権利の委託者となり得る新たなタイプの組織が必要だ」と指摘している。現状ではプラットフォーマーの権力に立ち向かう手立てがないが、ネット利用者を組織化できれば、集団交渉による影響力の行使が可能になる。ネット利用者を統括する役目は、既存の労組や消費者団体だけでなく、協同組合、大学、職業別組合、出版社、専門職団体、金融機関でも果たし得る。

「データ配当金」の法案が果たして成立するのか、仮に成立するとしてもまだまだ多くの時間がかかることが予想されます。とはいえ、こうした議論は国境を超えて日本の国内でも議論されることになるのではないかと思います。引続き注目していきたいと思います。

補足:上記RadicalxChangeに登壇予定のトリスティン・ハリス氏は以前にグーグル勤務していた際、ITプラットフォーム企業が利用者のアテンションを引き付け、広告ビジネスのために長時間利用を促す姿に疑問を抱き、その後「Center for Humane Technology」(ヒューマンテクノロジーセンター)を創設した混迷するテック業界に倫理を持ち込むべく活動している注目の人物です。

トランプ大統領誕生後開催されたTEDにおそらく直前に呼ばれ登壇し、ますます深刻さを増すアテンション・エコノミーの現実に警鐘を鳴らしている以下のプレゼンテーションは既に235万回以上閲覧されています。






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市川裕康 (メディアコンサルタント)

(株)ソーシャルカンパニー代表取締役 (www.socialcompany.org) / 国内外のデジタルメディア・トレンドについて調査・コンサルティング・執筆等に取り組んでいます www.linkedin.com/in/hiroyasuichikawa/ 静岡県浜松市在住です

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コメント3件

ワイル氏はNHKのTV番組で、土地の私有を否定したヘンリー・ジョージへの思想的シンパシーを表明していたのが記憶に残っています。ミレニアル世代の社会主義への共感が一つの基調をなしている感じがしますね。データ資本家による独占に対抗する有効な武器として映っているのではないでしょうか。
コメントありがとうございます。こちらの番組ですね、見逃していたのでオンデマンドでまた見てみます。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225647/index.html
こうした行きすぎたデータ、アテンションに基づいた資本主義の形に対し、振り子的に公開の場での反論、提案、議論が行われること、それがまたカルフォルニアから、という点にシリコンバレー的なエコシステムの強さを感じます。
そちらの番組ですね。データを労働に見立てて剰余価値の源泉とみなす論理はまさにマルクス、エンゲルスのようです。「労働者」に連帯を呼びかける点も同じく、ですね。「共産党宣言」がロンドンで書かれたように、データ資本家の総本山であるシリコンバレーでこうした動きが起きるのは、そのような「搾取」がもっとも顕著に行われている場所だから、というアナロジーで見てしまいます。
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