上手なキャリアチェンジのススメ。「変化」こそが、チャレンジと成長と働きがいを生み出す。
皆さん、こんにちは。今回は「キャリア転換」について書かせていただきます。
新年になりましたが、心機一転、新しいことがしたいとか、未経験の領域やスキル習得にチャレンジしたいという人が増える時期でもあります。
チャレンジすること自体素晴らしいことなので、どんどん未知なる分野、仕事、ワークスタイルに飛び込んでいくべきだと思いますが、仕事内容やミッション、会社そのもの、部署、キャリアパスの変更など何かを変えることだけが正解なわけではありません。環境を変えることが、新しいチャレンジをすることと必ずしもイコールではないのです。
一方で、今の仕事に能力や適性が合っていなく、かつやりがいもないのに、あえて環境を変えずに今の仕事に留まり続ける方がいいというわけでも決してありません。安易に転職や社内異動などの「キャリア転換をする」ことも、安易に「キャリア転換をしないでおく」ことも、どちらも一定のリスクがあるということを、適切に理解しておく必要があると思います。
とはいえ、今後の変化の激しい世の中を生き抜いていくためには、企業も個人も、変化に適応し続けていくしかありません。その変化に適応していく力というのは、実際に変化を経験し続けていくことでしか身につかないことも事実です。
ある意味、戦略的かつ意図的に、それまで経験のないことにチャレンジして、自分の持っていなかった能力やスキル、経験値を新しく習得していくことは、急激な変化を受け入れて乗り越えていくことが求められる分、将来に向けた大きな自己投資になっていくことは間違いありません。
それでは、転職や社内異動において、上手なキャリア転換とはどのようなものなのでしょうか。
そして、失敗に陥りやすいものとでは、何が違うのでしょうか。
今回引用した記事をもとに、失敗しやすいキャリア転換のワナについて、具体的に考えていきます。
■失敗しやすいキャリア転換事例①
一般的に起こりやすい事象としては、「仕事内容と能力や適性のギャップ」があり、キャリア転換に失敗してしまうケースです。完全にはそのギャップを正しく認知できないことの方が多いのですが、事前に仕事内容はもちろん、どの程度の責任や業務負荷があるのか、自分の適性と合っているのか、どのように能力を生かせそうかをリサーチしておく必要があることは言うまでもありません。
「仕事内容を変える」ということは、
業務量や業務負荷も変わる
職場や働き方、働く環境も変わる
仕事に必要なスキルや知識も変わる
給与体系や待遇、評価のされ方も変わる
新しいチームや顧客など周囲の人間関係も変わる
仕事に対するモチベーションも変わる
中長期を見据えたキャリアパスも変わる
など、多くの要素が同時に変わることを意味します。予想以上に肉体的にも精神的にも負荷がかかることを理解した上で、キャリア転換の決断をすることが重要です。
「仕事内容と能力や適性のギャップがある」ということは、本来キャリア転換する前に抑えておくべき要素を、正しく認知・理解できていないということですが、
自分の現時点のスキルや市場からの評価を正しく理解できていない
新しい業務にどのようなスキルや知識が必要かを正しく理解できていない
転職や社内異動先の文化や働き方の特性などを、正しく理解できていない
自分自身の新しい環境への適応力を、正しく理解できていない
そもそもキャリア転換の目的や動機を、自分自身で正しく理解できていない
短期的な仕事内容や条件にだけ目を向けていて、長期的なキャリアのゴールを正しく理解できていない
というように、結局は「準備不足」「認識不足」と言わざるを得ないことが多いはずです。少なくとも、自分の強みや弱み、価値基準、考え方、興味関心、スキルや能力を把握することが重要で、
どのような仕事がワクワクするか(楽しいと思えるか)
どのような働き方や環境が自分に合っているか
これまでの成功体験や発揮されたスキルは何か
長期的に実現したいことは何か、それはなぜか
というような、最低限抑えるべきポイントを整理し、自分自身で分析・調査を徹底し、リスクを計算・考慮した上で、キャリア転換の成功確率を引き上げていく必要があります。
■失敗しやすいキャリア転換事例②
引用した記事には、社内公募で「せっかく手を挙げても希望通りにいかないこともある」点について触れられています。
異動したいという気持ちが強すぎたり、自分は絶対に異動できるはずだと過信しすぎている場合に、思うような結果が得られないとすぐに離職に至ってしまうケースは少なくありません。
大事な点は、一度何らかの形で意思表明して、それがその時点で叶かなわなかったとしてもその道が完全に断たれたわけではなく、自分自身の未来の可能性をすべて否定されたわけでもない、という点です。「組織戦略上、タイミングが悪かった」のかもしれませんし、「あともう少し現部署での経験を積んだ後なら異動が可能だった」のかもしれません。キャリアを短期的に捉えていると、「今すぐ異動ができないなら転職する」という判断に至ってしまいがちです。
これは転職によるキャリア転換も同様で、転職後、希望通りの業務経験がすぐに積めないからといって、必要以上に悲観することはなく、実現するためにどのような経験やスキルが必要なのか、組織内で十分コミュニケーションをとっていくことが肝要です。企業を「自分の希望を全て叶えてくれる」ものだと思い込み過ぎている人が多いように感じることもありますが、そうではなく、「自分で自分の希望を叶えるためにどうすればいいか」を模索し、計画を立てて努力していく姿勢が大前提あるべきではないかと思います。
また、「何の業務を通して、どのような経験をどのくらい積むか」「中長期的にどのようなことを実現したくて、そのためにはどのようなスキルや能力が必要なのか」などゴールを設定し、達成するためのアプローチ方法を決め、逆算していつまでに何ができているといいのかを決めることは大事ですが、その「いつまでに」という期限が自分だけの都合で決められるものと、そうでないものとがあるということをよく理解しておく必要があります。
キャリアパスを考える時に、自分でコントロールできることと、コントロールできないこととに分けて考えた上で、アンコントローラブルなことはある意味「運やタイミング次第」でどうしようもないものだと割り切ることも大事ではないかと思います。逆に、運やタイミングによって、想定外の思いがけないチャンスが巡ってくることもあるものです。
■失敗しやすいキャリア転換事例③
さらに記事には「一緒に働きたい人がいるだけで、希望の部署を決めてしまう」点についても触れられています。
「誰と働くか」を意識するあまり、仕事の内容や働く環境などそれ以外の要素を十分理解しないまま異動してしまうケースも、失敗に陥りやすいケースの一つです。「誰と働くか」は転職先、あるいは異動先を選ぶ際に決め手になり得ることは否定しませんが、
その人物が異動や退職などでいなくなる可能性がある
良好な人間関係を築けると思っていても、途中で何らかの原因で関係が悪化する可能性がある
特定の人物には魅力を感じていても、実際の仕事環境や仕事内容が自分に合わない可能性がある
「誰と働くか」を重視しすぎて、それ以外の条件を見落としてしまう可能性がある
というようなリスクがあることを忘れてはいけません。特定の人物や人間関係だけに依存せず、仕事内容や会社の文化、長期的な成長機会など、総合的に冷静に判断することが求められます。
働く過程で、その職種や分野においてより専門的な知識やスキルを身に着けることで、労働市場での価値を高めていくことが“キャリアアップ”とするならば、“キャリアチェンジ”はそれまでのキャリアと異なり、未経験の業界や業種、または職種に転向し、新たなキャリア形成を図ることを指します。中には全く経験のない分野に飛び込むこともあれば、多少なりともこれまでの仕事と類似性が高い分野に転換する人もいると思います。どちらにせよ、キャリアチェンジには、
それまでの経験値がリセットされる可能性がある
求められるスキルや知識が不足することで即戦力性が低下し、すぐに組織に貢献できない可能性がある
経験や実績が生かせず、収入の減少や評価の低下につながる可能性がある
新しい業界の文化や働き方に馴染めない可能性がある
転職市場の動向や組織の動向など、自身の状況とタイミングが噛み合わない可能性がある
環境の変化や不確実性によりストレスが増加する可能性がある
など一定のリスクが伴います。キャリアチェンジをする際は、
それまでの仕事で得たスキルだけでなく、スキルの幅を広げたいから
異なる分野での経験を積むことで、市場価値を今まで以上に高めたいから
今の仕事に向いていなく、会社や仕事内容そのものを変えたいから
自分が本当にやりたいことや興味がある分野で働くことで、日々の充実感を向上させたいから
それまでの職場で感じていたマンネリやストレスから解放され、新しい環境でやる気を向上させたいから
というように人によって目的が異なりますが、目的を再整理し、異なる会社、業界、業種、職種、仕事内容に関する調査をした上で、リスクをとってでも高い熱量を持って「将来の自分に投資したい」「市場価値を高めたい」とチャレンジできるかどうかを自問自答することが大事です。キャリアチェンジはリスクが伴う一方で、大きな成長実感や満足感を得られるチャンスでもあるのです。
■良いキャリアチェンジは働きがいを高める
こちらの記事には、就職して10年前後の経験を積んでいて、幹部候補生、チームリーダー、若手のエースなどとされ貴重な戦力となっている30代が、「多くの企業で不足し、社外への流出の危機にある」とした上で、
とあります。現職種、現仕事内容において、「本当にこのままでいいのだろうか」「将来のためにはもっと専門性を身に着けた方がいいのではないか」などと不安が募り、キャリアチェンジを考えるタイミングは誰にでも訪れます。そのような気持ちの変化を敏感に察知し、個々人の意向やニーズを的確に捉え、「一人ひとりに合った新しいチャレンジの環境をいかに用意できるか」が、企業が優秀な人材を確保し続けられるかそうでないかの大きな差となっていくことは明らかです。
企業は、社員の能力や特性、スキルや経験を生かして、戦略的に役割の移行を行い、市場や競合環境の変化に適応しながらあらゆるニーズに応えていかなければなりません。社員も、チームや組織から期待される役割の変化を通じて自身のキャリアを流動的に捉え、適切にキャリアをデザインしくことが求められています。
企業戦略上、重要な方向転換のタイミングと、個人のキャリア転換への意向が強まるタイミングが合致するような「ポジション変更」「ミッション変更」などが実現できると理想です。
仮にその過程でうまくいかないキャリアチェンジがあったとしても、それは長期的なキャリア形成の中での通過点であり、キャリア転換をしたという経験そのものがその後のキャリアにも生きると考えれば、決して失敗ではありません。
社会環境が大きく変わる中で、安易に「何もしないでおくこと(変化を遠ざけること)」のリスクは高まり続けていきます。キャリアに変化を持たせるための手段は様々(転職だけではなく、社内異動をはじめとした配置転換、役割変更、目標やミッション追加なども含まれます)ですが、大なり小なり新たな役割を担っていくことがキャリアの転機となり、未来の選択肢を大幅に増やすことにつながっていくことは明らかではないでしょうか。
新しい知識や経験を身に着ければ、それだけ仕事のチャンスは広がり、新しい仕事を通じた経験の蓄積が、さらにスキルアップやキャリアアップのための基盤となります。
転職にしても社内異動にしても、個人のスキルやキャリアの可能性を高める施策や社員のニーズは今後も増え続けるとともに、これからは、年齢や経験を問わず、誰でもいつでもキャリアチェンジをすること自体が、より一般化していくでしょう。
さらにDXやAIの普及、テクノロジーの発展とともに、どんどん新しい仕事は生まれ続けていきます。これまでの常識や固定概念にとらわれずに、自由、かつ大胆にキャリアチェンジに挑戦することが、一人ひとりの働きがいを高める契機となるはずです。